異母兄妹である貴子と融の仲直りの話。そのきっかけとなるのは彼らの高校で開催されるイベントである「歩行祭」である。80kmを歩き切るという大規模なイベントであり、面倒くさいと思う生徒もいる中で、貴子は歩き切ることができたら今まで話すことが無かった融に自分のことを話そう…と決心する。
融もまた、貴子に複雑な思いを抱いていた。貴子にせよ母親同士の諍いに巻き込まれたことでお互いの印象は最悪だった。母親同士の争い、つまり不倫沙汰である。そりゃあそういう印象を抱いても不思議ではないし、父親の葬式で初めて会ったときのお互いの印象は最悪だった。
融は高校を卒業したら海外に行ってしまう、だからこそ貴子はその前に融のことを清算しようと決めていたのだ。貴子の願いは見事叶った。実際話してみた融は貴子が以前に思っていたほど悪い人間ではなく、普通の少年だったのだ。融にせよ、貴子がごく普通の少女であることに驚き、そして貴子の差し伸べた手を取ったのだ。
彼女にとって幸運だったのは、母親が融に対する見解を話すことがなかったことだろう。何かしら言及していれば、もしかすると貴子は融と話し合おうなんて思わなかったかもしれない。
貴子にとって「歩行祭」で行った賭けは一つの決心だった。願掛けでもあったんだろう。「歩ききれたら」というのは、融と話し合う勇気をもらう…ということだったと思われる。
