FGOのキャラクターの原典について語りたい ⑧

お久しぶりです。急に秋らしい気温になって困惑しているかぎしっぽです。
この時期になると、どこもかしこも金木犀の香りが漂って「秋だなぁ~」って感じます。
かぎしっぽは金木犀の香りが好きなので、この香りがしなくなると寂しい気持ちになります。

前回からの続きからとなりますが、その前に・・・
結構前から出ていましたが、今後も彼の登場頻度が高くなると思うので改めて『クリシュナ』について解説させていただきます。

クリシュナ(FGO)について

名前のみ出てきていますが、本来のクリシュナとは別に同名の人物が存在します。
この辺りはアルジュナという人物の根幹に関わってくるので、ネタバレ防止の為、この記事の最後の方に解説させていただきます。

クリシュナ(原典)について

ヴィシュヌ神1の第8化身の存在とされており、インド神話の神々の中で最も民衆に親しまれている神格の1柱で、ヒンドゥー教の中でも非常に人気があり、広い地域で信仰されています。
『マハーバーラタ』ではヤドゥ族の族長・ヴァスデーヴァとデーヴァキーとの間にできた息子で、バララーマの弟として登場します。作中ではアルジュナの導き手として描かれています。
クリシュナの名は「黒い」「暗い」「濃い青の」という意味があり、その名の通り肌の色が黒、若しくは暗い色と表現されています。彫像や絵画などでは肌の色が青で表現されることが多いです。

クリシュナは「地上の悪者を懲らしめて秩序を確立する」という目的を持って生まれましたが、その生い立ちは生まれる前から壮絶なものでした。
インド北部の都市・マトゥラーを支配していたヤーダヴァ族の王・カンサは多くの悪行を働いていた残虐な王でした。カンサの悪行を見かねた神々は彼を討ち倒すために、カンサの妹でもあったデーヴァキーの胎内にヴィシュヌ神を宿らせてクリシュナとして誕生するように定めました。
しかしある日、カンサは「お前の妹デーヴァキーの8番目の子供がお前を殺すであろう」という御告げを聞きます。この御告げを聞いて恐れをなしたカンサは妹夫婦を牢獄に閉じ込めて、産まれてきた子供たちを次々と殺していきました。

クリシュナが生まれたのは、嵐が吹き荒れる真夜中の日でした。
突如、牢獄の中には神々しい眩い光が満ちます。光はヴィシュヌ神へと姿を変えて、ヴァステーヴァとデーヴァキーの前に現れました。
「私は汝らの子として生まれ、この世界に平和と正義をもたらすであろう。我が名はクリシュナ。闇を払い、光をもたらす者なり」
その瞬間、デーヴァキーの身体から神々しい光が放たれ、彼女の腕の中に小さく美しい赤ん坊が抱えられていました。その子供こそデーヴァキーの8番目の息子であり、カンサを討ち滅ぼすという宿命を持ったヴィシュヌ神の化身・クリシュナです。
ヴィシュヌ神はヴァステーヴァに「牢を出て、ヤムナー河の対岸にあるゴーラク村へ向かえ。その村に住んでいる牛飼いのナンダとヤショダーとの間の子と自分を交換せよ」「彼らなら我が子として育ててくれるであろう。さぁ、急げ。カンサに気づかれる前に」と命じます。

ヴィシュヌ神が去ると同時に光が消えると、2人の周りで不思議なことが起こりました。

2人を縛っていた鎖が自然と外れ、固く閉ざされていた牢獄の扉が独りでに開いたのです。2人はソッと出て外の様子を探ると、牢獄を守る番人が全員深い眠りに落ちていました。
ヴァステーヴァはヴィシュヌ神の命令通りに脱獄し、生まれたばかりのクリシュナが濡れないようにと籠に入れて、外が激しい嵐が吹き荒れる中、ゴーラク村を目指します。
ヤムナー河に辿り着いたものの、嵐のせいで河は激流となり、荒れ狂っている河を渡ることなど不可能に思えました。しかし、番人たちがいつ眠りから覚めて追手を差し向けてくるかわからない危険な状況にヴァステーヴァは「このままではまたカンサに我が子の命が奪われてしまう」と、意を決して川岸に立つと、再び不思議なことが起こります。

なんと川が二つに割れ、川底が道となって開いたのです。

目の前で起きた奇跡に驚きつつもヴァステーヴァはその道を急いで渡り、無事にゴーラク村に辿り着きました。
そして、その村に住む牛飼いの長・ナンダと妻のヤショダーの家に忍び込みます。ナンダ夫妻の間にはちょうどクリシュナと同じ夜に産まれたばかりの娘がおり、出産とそのお祝いで疲れ切っていた夫妻は深い眠りについていました。
ヴァステーヴァは密かにその赤ん坊とクリシュナをすり替えて、娘を抱いて牢獄へと戻っていったのです。
こうしてクリシュナは様々な奇跡によってカンサの魔の手から逃れることができ、自分が王族であることも、神の化身であることも、本当の両親が誰かも隠されたまま『牛飼いの息子』として育てられることになります。

ナンダ夫妻は眠りから目を覚めてクリシュナを見つけると、あまりの美しさから「この子は神様からの恵みだ!」と信じ、我が子として愛情深く育てました。
クリシュナもナンダ夫妻の愛情を受けてすくすくと成長しますが、クリシュナの生存を察知したカンサは次々と幼い彼の元に刺客を送り込みます。ですが、ヴィシュヌ神の化身であるクリシュナは神聖な力を使って刺客をことごとく倒していきます。
やがて美しく逞しく成長したクリシュナは、自らの宿命に従ってマトゥラーに戻り、予言通りに叔父のカンサを倒して一族を救います。

さて、パーンダヴァが生きていることを知ったカウラヴァ陣営。
内心穏やかなはずもなく、特に暗殺計画を立案したドゥリーヨダナは相当焦っているようですが・・・
(毎度のことですが、かぎしっぽなりの解釈が入っているので間違ってたらすみませんm(_ _)m💦)

 ・カウラヴァの混乱 
パーンダヴァとドラウパディーの結婚はすぐさま広まり、ドゥリーヨダナ達が住むハスティナープラにまで伝えられました。
これは、ドゥリーヨダナにとって当然悪い知らせであり、シャクニと共に怒りを露にしました。
「プローチャナめ、しくじるとはなんて奴だ!ヴァーラナーヴァタへ送った時はもうあいつらの顔を見なくてすむと思ったのに・・・クソッ!」
「しかもなんだ!あいつら前よりも強くなっているじゃないか!!」
「あの自惚れ野郎のアルジュナが、偉大な戦士であるカルナよりも強いだなんて・・・誰が認めるもんか!!!」
怒りが止まらないドゥリーヨダナに、ドゥッシャーサナ2は兄を落ち着かせますが、悪態をつかずにはいられません。

あんなに時間をかけて立てた蠟の宮殿の罠が失敗した挙句、スヴァヤンヴァラに出てドラウパディー手に入れただけでなく、冴えないブラフマンだと思っていた奴がよりにもよってアルジュナだったなんて・・・!
もう、あの憎っくきパーンダヴァの顔をもう見ずに済むと、もうあの黒々とした醜い感情に振り回されずにすむと思っていたのに・・・!

ですがパーンダヴァが生きているという事は、自分達があの火災の黒幕だと彼らが気付かない筈がありません。
今までの自分達の関係から、そう考えるのは必然だと思ったドゥリーヨダナは、このままではパーンダヴァに報復されるのも時間の問題だと不安に駆られ、カルナを連れて急いで父・ドリタラーシュトラの元へ向かいました。

一方で、ヴィドゥラはパーンダヴァとドラウパディーの結婚報告に大いに喜びました。
彼はドゥリーヨダナが余計な事をする前に、一足先にドリタラーシュトラの元へ向かい、結婚報告をしに行きました。
「王よ、お喜びください!一番上のご子息がドゥルパダ王の娘と結婚いたしました。クル一族の繫栄は喜ばしい事です」
ヴィドゥラは兄の反応を見るため、あえてパーンダヴァの名を出さず、クル一族と表現してドラウパディーとの結婚報告を伝えました。
「それはなんと素晴らしいことだ!ドゥリーヨダナは一体どこにいるのだ?何故すぐに彼女を王宮に連れてこないのだ?」
ヴィドゥラの罠に見事ハマったドリタラーシュトラはこの報告に、ドゥリーヨダナはドラウパディーを自分のものにしたと勘違いし、大いに喜びました。
それを聞いてヴィドゥラは直ぐに訂正をして「いえ、私が言ったクル一族というのは亡きパーンドゥの息子たちでございます」と伝えます。
「火事で死んだと思われていたパーンダヴァが生きており、先日行われたスヴァヤンヴァラにアルジュナが参加して見事にドラウパディーを射止めたのでございます」
「今やドラウパディーは兄弟全員の夫となり、パーンダヴァ兄弟は母クンティーと一緒にパンチャーラ王国で楽しく暮らしているようです」
それを聞いた瞬間、ドリタラーシュトラの心の中には忘れていたはずの黒いもやが再びかかり始めます。
「それは・・・いい知らせですね。私にとって彼らは息子も同然ですから、愛しのパーンドゥ家が生きていた事はとても喜ばしいことです」
「それも絶世の美女と噂のドラウパディーと結婚して、あのドゥルパダ王という強力な縁を勝ち取ったのですからこれほど嬉しい事はありません。彼らの繫栄をを心の底から願っています」
ドラウパディーを手に入れたのが自分の息子ではないと知ったドリタラーシュトラは落胆しましたが、ヴィドゥラに悟られないようにその感情を押し込め、心を落ち着けてからパーンダヴァの結婚報告に喜ぶ振りをしました。
ですが、ヴィドゥラは兄の心の機微を察し、こう言葉をかけます。
「流石は兄上、なんと心が広くあられる。貴方の言葉には優しい愛情が込められています」
「その愛情が水面の泡のような一瞬のものでなく、大木のように深く根付き続けることを願っています」
ヴィドゥラはパーンダヴァへの愛情について忠告すると共に、会談の準備のために退出します。

ヴィドゥラが去った後、すぐにドゥリーヨダナが怒りの形相で部屋に入って来ました。
「父上!私があれほど憎んでいるパーンダヴァが生きていて嬉しいとは、繫栄を願っているとは、一体どういう事ですか!?」
ヴィドゥラが去る前にドゥリーヨダナとカルナはその少し前に部屋の前に着いており、彼らの話の一部始終を聞いていたのです。
自分の味方だと思っていた父の聞き捨てならない発言を聞いて、「そんなに自分の息子を王にするのが嫌なのか!」と激しく抗議します。
この抗議にドリタラーシュトラは「そんなことあるものか!ヴィドゥラは賢く勘の鋭い男だから建前上、ああ言っただけだ。パーンダヴァの繫栄など心の底から望んでいない」と、すぐさま訂正し息子をなだめます。
「ドゥリーヨダナよ、パーンダヴァ達のことで此処に来たのであろう?勘の良い彼らのことだ、あの火事は我々が仕組んだものだと疑っているはずだ・・・」
「今後、我らがどうするべきか。何か考えがあるのなら聞かせておくれ」

ドゥリーヨダナはパーンダヴァ達がハスティナープラに戻ってきて何食わぬ顔で王宮に住む事を思うと臓腑が煮えくり返る思いでいっぱいになります。
それを考えるあまりか、怒りで思慮深い考えを持つことが出来なくなったドゥリーヨダナは何とかパーンダヴァ達を排除したい一心で、ドゥルパダ王に賄賂を渡して仲間に引き込めないかとか、ビーマの暗殺やドラウパディーを使って兄弟達の間で仲違いを仕組めないかといった案を出します。
(怒りに支配されてもここでビーマの暗殺案を出しているあたり、ドゥリーヨダナの「ビーマは絶対に殺す!」という強い意志を感じざるを得ない)

ですが、そこに待ったをかける人物がいました。
「ドゥリーヨダナよ。ここは一旦冷静になりましょう、怒りに呑まれて判断を間違えてはいけない」
カルナは冷静さを失っている友を見て、優しく微笑みかけてドゥリーヨダナを落ち着かせます。
そして、姑息な手段を用いようとするドゥリーヨダナにこう言います。
「貴方は今まで色んな策略を講じましたが、伯父シャクニが考えた案は一度でも成功しましたか?否、どれも失敗しています。小手先を労した誤魔化しなどは結局は何の役にも立たないのです。シャクニが考える臆病者や力なき者が使う姑息な手段を用いて、これ以上貴方の品位を落としてはなりません」
「我々が持つべき手段は一つ、パーンダヴァと戦うことです。確かに彼ら日々強くなっていきます。ならば、ほかの勢力が加勢して、彼らがこれ以上強大な力を得る前に、攻め滅ぼすのです」
「貴方は誇り高きクシャトリヤです。そして貴方にはこの私がついています、私は貴方の為ならば命を懸ける覚悟ができています。クシャトリヤらしく、目の前の困難に打ち勝ち、正々堂々とパーンダヴァと戦いましょう。貴方のような高貴な王子に悪評は似合いません、私が貴方を真のクシャトリヤとしての道を導きましょう。親愛なる友よ、戦いましょう」
ドゥリーヨダナとドリタラーシュトラはカルナの勇ましい言葉にハッとさせられました。
確かに今まで姑息な手段を使っては失敗し続けて来ました。また同じ手段を用いて失敗するよりも、カルナの言ったように彼らと戦って若い芽が大きくなる前に早めに潰すという案の方が魅力に感じたのです。
それにこのままパーンダヴァが生きていれば、彼らを貶めて国を治めようとしたドゥリーヨダナへの追求は逃れる事は出来ないでしょう。

ドリタラーシュトラはカルナの案に賛同し、今日行われる会議で提案することにしました。そして、ドゥリーヨダナとカルナを連れて会議が行われるホールへ向かいました。

 ・混迷する会議 
会議にはビーシュマやドローナ、ヴィドゥラなど錚々たるメンバーが参加していました。
ドリタラーシュトラは早速パーンダヴァ殲滅戦を提案しますが、開口一番にビーシュマが反対します。
「これ以上身内同士でいがみ合ってどうする!ドリタラーシュトラよ、お前とパーンドゥはどちらも私にとって大事な甥なのだ。お前たちの息子も同様に愛しい存在なのだ。そんなお前たちの息子が戦い合うなど、考えたくもない!」
「あの事件以降、人々はあの火事は我々の仕業だと口々に噂し合っている。だが、あの事件を起こした大罪人のプローチャナは死に、天はパーンダヴァ達を生かした。今からでも彼らに愛情をもって接すれば、お前が背負った汚名を晴らすことができるかもしれんのだ」
「パーンダヴァ達を呼び戻して、王国の半分を彼らに分け与えよう。この国は元々彼らのものだ、優しさと寛容な態度を見せればきっとお前の名声は回復するはずだ」
この提案にドローナも賛成し、パーンダヴァとの間に円満の和解をはかり、平和を確立するように進言します。

しかし、この2人の提案にカルナは反対します。
カルナにとってはドゥリーヨダナは唯一無二の友であり、恩人でもあります。
ドゥリーヨダナの天敵であるパーンダヴァに国を半分分け与えるような考えに我慢できなかったのです。
「驚きました。ビーシュマ殿もドローナ殿もそのような臆病者の考えを進言するとは」
そのような提案をした2人にカルナは吐き捨てるように毒づきます。
「カルナ!お前は王に間違った道を歩ませるつもりか!?」
「もしここでビーシュマや私の進言したようにならなければ、クル一族は滅びることになるやも知れんのだぞ!!」
そんなカルナの言葉を聞いたドローナは激昂してカルナを叱責するものの、カルナは一向に聞く耳を持ちません。
(ただ、ここの辺のカルナの心情を見るに「本当はパーンダヴァと戦いたかっただけなのでは・・・?」と思わなくない描写が見受けられるんですよね)

どんどん迷走していく会議にとうとうヴィドゥラが立ち上がり、ドリタラーシュトラを諭します。
「兄上・・・いや、王よ。貴方はドゥリーヨダナとカルナと一緒で怒りに支配されています。ですが、貴方は2人と違って感情に任せず冷静な判断が出来るはずです。その上で私の意見を聞いて下さい」
「これは、貴方の不名誉を払拭する千載一遇のチャンスでもあるのです。ビーシュマ達が言うように王国の半分を分け与えることこそが最良の選択なのです」
「それにもし戦争を仕掛けたとして、誰が彼らに敵うと思いますか?先のスヴァヤンヴァラで多くのクシャトリヤが彼らを相手にしたにも関わらず、誰もパーンダヴァに歯が立ちませんでした」
「そしてパンチャーラという強力な後ろ盾を得た今、彼らはもう貴方が思うような無力な子供ではなくなったのです。彼らを敵に回すほど、恐ろしい事はありません。真に王国の平和を願うのであれば、平和的な方法を持つべきです」
結局3人の提案に誰も賛同されず、ドリタラーシュトラは肩を落とします。
それにほんの僅かにですか、彼の心の中には弟のパーンドゥの息子たちに対して優しさが残っていたこともあり、完全に無情になることは出来なかった事も大きかったのでしょう。

ドリタラーシュトラはパーンダヴァに王国の半分を分け与え、彼らと和解する事に決めたのでした。

 ・パーンダヴァ、ヴィドゥラと再会 
ドリタラーシュトラはパンチャーラ王国の遣いとしてヴィドゥラを任命します。
ヴィドゥラは早速パンチャーラ王国へ向かい、パーンダヴァと再会しました。
生きていることを知っていたとはいえ、パーンダヴァ達の顔を見た瞬間、彼に様々な感情に圧倒されて涙を流してしまいます。彼らが無事にあの恐ろしい火事から本当に生還できたのだと、ヴィドゥラは改めて実感したのです。
そんなヴィドゥラを見たパーンダヴァ達は彼を笑顔で迎え入れ、これまで起きた出来事を話し、失われた時間を取り戻すようにその時間を過ごしました。
一通り話し終えて落ち着いた頃に、ヴィドゥラはドリタラーシュトラから預かった親書をパーンダヴァに伝えました。

親書を聞き終えたパーンダヴァ達の顔は「うーん・・・」と難色を示します。
それもそのはずです。彼らは一度、ドリタラーシュトラに騙されて殺されそうになった身。そのことを考えるとドリタラーシュトラのことを一概に信用する事はできず、何か裏があるのではないかと勘ぐります。
特にクンティーは、あの日の火事のことを思うとまた命が狙われるのではないのかと、国に戻ることに不安を感じずにはいられません。

そして、それはドゥルパダも同じでした。
「ヴィドゥラよ、貴方の事は彼らから聞いております。貴方は彼らにとっても私にとっても恩人であり信頼にあたる方だ」
「クル一族と同盟を結べたことは大変喜ばしい事ですし、非常に名誉な事だと思っています。ですが私としては、義理の息子である彼らを貶めたドリタラーシュトラを信用する事が出来ません」
先日、パンチャーラ王国にパーンダヴァを討ち取ろうとドゥリーヨダナが率いるカウラヴァの軍が攻め入ったばかりでした。
その時は息子とパーンダヴァ、そしてドゥリーヨダナの不穏な動きを察知したクリシュナとバララーマが援軍として駆けつけた為、パンチャーラ軍の圧勝で戦争は終結しました。
パーンダヴァの生存を宣言した瞬間に命が狙われたので、ドゥルパダは「このまま彼らが国に戻っても本当に大丈夫なのだろうか?」と心配でたまりません。

ですが、ヴィドゥラは「国に戻ってもパーンダヴァ達が破滅する事はありません。ご子息が国を統治し、偉大な名声を手にします」と言います。
ヴィドゥラは知啓の源でダルマそのものであり、兄弟達が幼い頃からドゥリーヨダナの悪意から守ってくれました。
そして、先の戦争で援軍として駆けつけ、パンチャーラに残っていたクリシュナも「ハスティナープラに戻るべきだ」と進言します。
ドゥリーヨダナの悪意から自分達を救ってくれた2人が言うのであれば、恐らく何も悪いことは起きないだろうと思いました。
ですが、それでも中々踏ん切りがつきません。
迷っているパーンダヴァに、ドゥルパダは「長男であるユディシュティラに最終的な決断を委ねてはどうか?」と提案します。
(またもや意見を丸投げにされるユディシュティラ。次期王様だから仕方ないけどツライね!)

流石のユディシュティラも決めかねてしまいますが、最終的に「最年長のいう事に従う」という自身のダルマを信じ、国に戻ることを決断します。
この決断にドゥルパダもクンティーも不安が無かった訳ではありません。ですが、ユディシュティラが決めた事ならと首を縦に振ります。
他の兄弟達はもとより兄の言う事に反論するつもりはなかった為、パーンダヴァ達はヴィドゥラとクリシュナも同行して、母国のハスティナープラに帰国しました。

 ・ハスティナープラへ帰還 
永年の亡命と苦労の後にやっと母国に戻ってくることができたパーンダヴァ達は、ハスティナープラの市民から暖かく歓迎されました。
町中が美しく飾られており、道という道には香水がかけられ、至る所に沢山の花が飾られていました。
パーンダヴァが亡くなったという報せが流れたときは、国全体がまるで死者の国のように静かだったものが、今は光が満ち溢れるように活気に溢れています。

パーンダヴァは城に入り、出迎えていたビーシュマとドリタラーシュトラにひれ伏して挨拶しました。
即位式はヴャーサが執り行うことになり、彼が決めた縁起のいい日に即位式は行われました。
「貴方の手によって世界は長く統治され、そよ風に運ばれる花の香りのように貴方の名声が至るところに広がりますように!」
そんな言葉でユディシュティラは祝福され、すべての人々の心に喜びが広がりました。
そして、ユディシュティラに王国の半分をパーンダヴァに譲り渡し、とうとう彼は正式に王となりました。

全ての式の行程を終えて、ユディシュティラは何処を統括する王になるのだろうと人々がワクワクしながら見守る中、ドリタラーシュトラはユディシュティラに祝福を送ると共に、次のような事を言います。
「ユディシュティラよ、かつてお前の父であり私の弟であったパーンドゥはこの王国を繫栄させた。お前にも父親の名を恥じぬ立派な後継者になって貰いたい」
「そこで、我らがクル一族の土地の半分である『カーンダヴァプラスタ』3をお前に与える!そこをパーンダヴァの都とし、その地を再興させて、世に名声を上げる偉大な王となるのだ!」
その土地の名を聞いた瞬間、町中の人にどよめきが走ります。
カーンダヴァプラスタはかつてハスティナープラと同様に栄えていた場所でしたが、リシ達の呪いによって滅ぼされてしまった都です。
その土地は呪いによって作物も草花も育たなくなり、次々と民人が離れていきました。次第に動物も生きていけない程に過酷な場所へとなり果ててしまった為、誰も住むことがなく人々から捨てられた都は、今ではかつて栄華を極めたとは思えないほど荒廃した土地となってしまいました。

これは明らかに不公平な『国の半分』であり、町の人々も不公平だと不満を募らせます。
ですが、そんな不毛な土地を与えられたにも関わらず、ユディシュティラは受け入れました。
もちろん「不公平だ!」と言って彼らと戦うという選択肢もありました。ですが誰よりも平和と調和を大切にしていたユディシュティラは、むやみやたらに戦争を起こすという考えを嫌っており、できれば戦わずに穏便に事を運びたかった気持ちがありました。
それに、従兄弟達との絶え間ない対立にはいい加減うんざりしていた気持ちもありましたし、これまでの経験から不仲な従兄弟達と一緒に王宮に住むなんて到底考えられませんでした。
「これ以上従兄弟と伯父との間で余計な不和が起きるぐらいならば・・・」と、カーンダヴァプラスタを譲り受けたのです。

早速パーンダヴァ達はクリシュナを引率にハスティナープラを出立し、それから暫くして、カーンダヴァプラスタに到着しました。
人も動物も、草花すらもない、辺り一面に広がっている荒廃した土地を見て、ユディシュティラは思わず声を失ってしまいます。
それは他の者達も同じで、自分達が思っていた以上に荒れ果てた目の前の光景に「一体どうすれば・・・」と途方に暮れてしまいます。

ですが、クリシュナのみ違いました。
クリシュナは「なんて素晴らしい土地だ!」といい、パーンダヴァ達に「貴方達に不正を働いた者達に、この国をハスティナープラ以上の美しい国に変えて、あの盲目王をガッカリさせてやろう!」と鼓舞させました。
その言葉を聞いたユディシュティラは、王の務めとしてすぐに土地の整備を始める事にしました。

ここからパーンダヴァとクリシュナによる、カーンダヴァプラスタ再興計画の幕開けとなりました。

次回はパーンダヴァ+αによる、大改造!!劇的ビフォーアフターが開始します。
「匠」達の手によってカーンダヴァプラスタがどのように変わるのか・・・
乞うご期待!

※脚注

  1. ヒンドゥー教の神。ブラフマー神、シヴァ神と並んで重要な神格の1柱であり、ヴィシュヌ派では最高神として位置づけられています。 ↩︎
  2. カウラヴァ百兄弟の次男。ドゥリーヨダナの忠実な右腕であり、彼のパーンダヴァに行った数々の策略に深く関わっている。 ↩︎
  3. 歴史地理学や考古学の観点では、地理的にはヤムナー川の西岸に位置していたとされ、現在はインドの首都・ニューデリーがある場所に相当すると言われています。 ↩︎

※参考
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%8A
https://ja.namu.wiki/w/%ED%81%AC%EB%A6%AC%EC%8A%88%EB%82%98
https://sitarama.jp/?mode=f396&post_id=23438&srsltid=AU7gw4V7iCJeGdp6o-kuozeSczOpj6urp6C5p1VYQScON6JAuOJR8sDe
https://ameblo.jp/indiastory-chieka/theme-10104959642.html
https://note.com/shantilifehiro/m/mf49ce1d60851
https://blog.yoga-kailas.com/%e3%80%8c%e3%83%91%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%83%89%e3%82%a5%e4%b8%80%e5%ae%b6%e3%81%ae%e5%b8%b0%e9%82%84%e3%80%8d/

↓ネタバレ防止のため反転させていいます。ドラッグして見てください。

アルジュナが心の奥底に抱え込んでいる「闇」そのもので、彼が『黒(クリシュナ)』と呼んでいるもう一つの人格です。
かつての友人クリシュナの名を冠する人格は、所謂アルジュナの中にある『悪の象徴』を司る部分であり、アルジュナの主観で「悪」と判定された行為を代わりに成すための『邪悪』な人格です。
主人格とは全く異なる思考系統・優先順位・道徳倫理を持っており、作中では描写が少ないですが、生真面目で潔癖過ぎる主人格と違って、こちらは嘲笑の笑みを溢し、多少なりとも非道な選択や卑怯な手段を辞さないなど、戦士としての道を踏み外す事を恐れません。

ですが、味方としての側面も持ち合わせており、マスターに対して礼節は重んじたりと生真面目な所は変わらないようです。

誰かを憎み、嘲り、奸計を謀る『黒(クリシュナ)』ですが、この人格の正体は『アルジュナのエゴイズム』そのものです。
アルジュナのいう『邪悪』と称されるものは「誰もが持ち得るような感情群」の事を指します。例えば「あいつに勝ちたい」「誰よりも優れた者でいたい」「何かを憎みたい」「怒りたい」といった、凡そ「邪悪」とは言えないごく平凡な感情です。

生前のいつ頃からこの人格ができたのか定かではありませんが、カルナ曰く、幼少期には既に巣食っていたとされます。

アルジュナは神々の寵愛を受けて『授かりの英雄』と称されるほどに恵まれていました。もちろん、アルジュナ本人による才能や努力、信念による並々ならぬものがあって『英雄』と呼ばれるところもあります。
「愛される」というのも一種の才能ですが、生まれついて誰からも愛されていたアルジュナは、その時々必要なものがあれば与えら、何かが不足するということがありませんでした。
(実際にアルジュナの史実を見ていくと、師匠から気に入られてアストラを授かったり、ねだれば神様から神器を貰ったりしています)
ですが、何かに不足する事がないという事は「一生不足が生じない」という状況でもあり、自分が何もせずとも「勝手に」状況が整ってしまうということです。
史実でも、アルジュナよりも腕のいい弓術を持つものが現れれば二度と弓矢を引けなくさせたりしたり、実の父親や家族がアルジュナがカルナに勝てるようにと本人のあずかり知れないところで裏で色々手回してカルナにデバフをかけたりしています。
このように、周囲の人々が必要以上にアルジュナを過保護に接したことによって、『英雄』としての掴み取る栄光の瞬間までの道を最短で進んでしまいました。

英雄としての苦難と覚悟を得る機会がないまま『英雄』となってしまった事が、アルジュナにとって最大の不幸だと言わざる得ないでしょう。
周りにお膳立てされて最短で進んだ英雄の道に、積み上げた『英雄』としての功績に達成感を感じられるはずもなく、そこにいるのはただ「理想の英雄像」を着せられたマネキン如き己のみだったのです。
それ故に、アルジュナは戦いの中で生じる苦渋や汚点に耐え切れなくなっていき、元々の生真面目な性格も相まって、自身の持つあまりにも潔癖過ぎる『理想の英雄像』に「このようなエゴを持つことを許されない」という一種の強迫観念に縛られており、このような悪心が自身の中にあることが許せないアルジュナは絶望し、その事実を受け入れることができず、苦しみ続けていました。

「英雄として相応しくない自分」がいることが許せず、誰にも知られるわけにはいかない。

いつしかそういった面を押しつける身代わりの人格を心の中で作り上げていき、おのれが醜いと感じた行動はその人格に振るわせるという役割を与えました。
そうして出来上がったのが『黒(クリシュナ)』です。

アルジュナは聖杯に望む願いに「永遠の孤独」と掲げています。一見すると耳を疑う願いですが、これは自身の「闇」を見られることへの恐れから生まれたモノでした。
他人と距離を置きたがるのはこういった自分の「闇」を見られたくないからであり、彼の本質を至るところまでつかみ取ろうとする者がいれば、それが誰であれ、自分が仕えるマスターであっても例外なく、何であれ殺さなければならないと定めており、それを「自分が英雄であるために必要な殺人」と捉えています。
例えマスターが彼の「闇」を受け入れる覚悟を持っているとしても、アルジュナ自身がその「闇」を恥じている限りは信頼を失うことに繋がりかねません。
(ですが、この「永遠の孤独」という願いの本質は「カルナとの対等な戦い」にあります。神も呪いも関係なく、今度こそ誰にも邪魔されずただの戦士として、正々堂々とカルナとあの日の決着をつけたいという未練から生まれたモノでもあるのです)

『黒(クリシュナ)』はアルジュナの幕間の物語『問い掛け続けることにこそ』で登場します。
ある日、主人公はどこか様子がおかしかったアルジュナを心配していました。その夜、夢で彼のもつ「闇」の姿を垣間見てしまいます。
その後、夢の中に彷徨い込んでしまった主人公とアルジュナは夢の中で『迷宮』を発見し、ひたすら下層へと進んでいきます。
下層を進むごとにラーマとカルナに遭遇し、2人はアルジュナに「お前は何者だ」と問いと試練を投げかけられます。
(ここのカルナとの戦闘は倒しても倒しても生き返って来るので、見事にかぎしっぽの中でトラウマとして刻まれました)

途中、色々あってカルナも一緒に同行することになり、そして迷宮の最深部に辿り着きます。
そこには玉座に腰を掛けて邪悪な笑みを浮かべる『黒(クリシュナ)』が一行を待ち受けていました。この迷宮はアルジュナの深層心理であり、遭遇したラーマとカルナも本物ではなく、アルジュナの記憶を元に作り上げた素体であり、彼らは別人の姿を借りてアルジュナの感情を代弁した「アルジュナ自身」になります。
彼らがアルジュナに投げかけた『問い』と『試練』は幕間のタイトル通り、自分自身に『問い掛け続けて』いたのです。
人格ごとに役割が異なっており、ラーマは「人生に立ちはだかる様々な生涯」として、カルナは「敵対者」としてアルジュナの前に立ちはだかりました。
そして『黒(クリシュナ)』は「悪」を象徴する存在として立ちはだかりますが、「悪」でありながら、アルジュナの味方でもあります。「悪」を受け入れないアルジュナの心を守るために、己の存在を知った主人公と同行してきたカルナを殺害するべく戦いを挑んできます。
ですが、戦いを通してアルジュナは『黒(クリシュナ)』と向かい合い、ついに『黒(クリシュナ)』受け入れます。
「悪心なんて誰にでもある」と言いきり、ただアルジュナが心配という理由だけで夢の中まで付き添ってくれた「特別ではない人」の為に、己の悪心に恐れることも恥じることもなく、ただマスターの為に戦う覚悟を見せます。
その覚悟を聞いた『黒(クリシュナ)』は、その覚悟を受け止めると同時に「その後悔はこちらで預かる」と告げてアルジュナ達の前から姿を消します。
夢から醒めた後、アルジュナは主人公の前に現れて危険な目に合わせたことへの謝罪と共に闇を乗り越える為に駆け抜けてくれたことへの感謝を口にします。

この出来事を通じてからは自身の「闇」を受け入れたことで迷いが吹っ切れたような表情を見せ、聖杯に望む願いは一変して「最後までマスターと共に在ること」を望みます。

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かぎしっぽ

アニメ、マンガ、ゲームが好きです。特にマンガはジャンプ系が好きです。 絵を描くのも好きなので一次創作も出来たらなと思います。

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