俺は精神疾患なんかじゃない!! 第二話

昨夜から薬を飲み始めた。医師は即効性はない、飲み続けることで症状が緩和していくとのことだった。

朝起きてみてしばらくベッドに入っていた。体は依然だるかったが、幻聴幻覚はでてこなかった。これなら美樹が来ても大丈夫かなと勇人はベッドに横たわったままでいた。

11時過ぎ、美樹は食材を持ってやってきた。

「大丈夫?熱はないの?」

「ああ、熱は下がったよ。ちょっとだるいくらいだ。」

「そう、よかった。朝も食べてないんでしょ?今、作るね。お腹に来てる風邪じゃないんでしょ?」

「うん、腹の風邪じゃないよ。」

勇人はキッチンでかいがいしく自分の食事を作っている美樹の後姿を見て、俺が本当のことを言ったらどうなる、離れていくに決まっているよな。」

と悲観的な気持になっていた。

当の美樹はそんなこととは露知らず

「はい、風邪のときは消化のいいのがいいかなって。」

半熟卵の入ったうどんを作ってくれた。

「生姜も入れたけど大丈夫?」

「ああ、美味しいよ。」

美樹は自分もテーブルに着くと作ったうどんを食べながら

「勇人くん、働きすぎなんじゃない?この間も残業ばっかでしょ?ただでさえ営業なんて大変じゃない。」

「まあな。でも大丈夫だよ。俺営業に向いてるしさ。売上も先輩よりよかったりするんだぜ。」

二人は学生時代のアルバイトで知り合った。美樹はお嬢さま学校の短大生で勇人より二つ年下だった。

勇人は就職して4,5年くらいで仕事が軌道に乗ったら結婚したいと思っていた。それで美樹の両親に挨拶に行くつもりだったのが、このざまだ。そうだ、当の美樹だけじゃなく親御さんだってこんな病気持ってる男と結婚なんかさせたくないよな。

勇人が食べ終わって、ぼんやりそんなことを考えていると、

「勇人くん、何か元気ないんじゃない?あっ、そうか風邪だもん、当たり前よね」

美樹は無邪気に笑った。風邪じゃない、俺は精神疾患だとこの場で言ったら間違いなく美樹は去って行くだろう。

「夕食も作っておくね。」

美樹はまたキッチンに戻り勇人はベッドに入ってぼんやりしていた。

いつかはばれる、でも俺自身の口からは言えないんだ。俺はこの病気になったことを隠し通していけるのか。今日調子良くても、仕事中だって症状が出て来ないとは限らない。

夕食を作り終えた美樹が勇人の元に来た。ベッドの端に座ると、

「お父さんもお母さんも、勇人君が来るの楽しみにしてるの。今度は風邪ひかないでよね。」

と笑った。勇人は思わず美樹を抱きしめた。

「どうしたの?勇人くん?」

「いや、久しぶりに会ったからさ。」

勇人は本当は何もかも話して、美樹に助けて欲しかった。精神以外の体の病気なら受け入れてくれるかもしれない。だが精神病は無理な話だ。勇人が腕を離すと美樹は

「あんまり長居するとゆっくりできないよね。

そろそろ帰るね。」

と立ち上がった。

「いや、そんなことないよ。」

「うん、でも帰る。お夕飯ちゃんと食べてね。」

キッチンにはラップをかけた夕食が置かれていて、勇人は美樹がいつまで自分を想ってくれるのか、もう結婚どころか付き合っていくのさえ難しくなっていくだろうと考えていた。

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おさる

はじめまして。閲覧ありがとうございます。フエルト、リボン細工、レース等で作った草花を季節ごとに載せていきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いします。

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