内容 保育の心理学では、保育実践と子どもの発達に関わる心理学の知識を習得する。人や環境との関わりを通して成長発達すること、保育との関連から初期経験の重要性を理解する。
1.子どもの発達理解
乳児期 0歳~1歳
新生児の顔認識 ファンつ 新生児は顔に、より長く注意を向ける。
乳児は環境に積極的に働きかける能動的な存在
共鳴動作 乳児が大人の顔や手の動きを真似る行動をする。
原始反射 生後3か月から6か月で消失。モロー反射、バビンスキー反射、把握反射など。
首の座りから一人で歩くまで 首の座り(3,4か月)、寝返り、お座り、ハイハイ、つかまり立ちを経て一人で歩く(1歳頃)
幼児期前期
1歳 自立歩行、初語から一語文・二語文へ、表象機能(イメージを思い浮かべる)の発達→見立て遊びへ
2歳 行動範囲が広がり探索活動が活発に 語彙の増加 象徴機能の発達→ごっこ遊びへ 自己主張
幼児期後期
3歳 運動技能の発達 三輪車や遊具での遊び 日常会話がスムーズに興味や関心が高まる→「なぜ」「どうして」の質問が増える
4歳 運動能力がさらに高まる 遊びを通して物の性質を知る 大小・長短・上下・男女など概念の成立 友だちとのつながり→一方でけんかも増えてくる 今日と明日、ここからとそこへ 時間と空間の「あいだ」の理解
5~6歳 運動遊びを楽しむ 友だちとイメージを共有する 役割やルールのある遊び 自分なりの考えや判断ができる
言語の発達
1歳前後にことばを話すようになるまでの段階を理解する。言語の発達は周囲とのやりとり、共同注意(子どもと養育者が同じものを見る)、三項関係(自分、相手、ものという3つの関係)が基礎となる。
2.人との関わりと発達
基本的信頼感 他者やまわりの世界が安全で安心できる。信頼できるという感覚。エリクソンの発達段階で最初の課題。
愛着(アタッチメント) 特定の養育者との間に形成される情緒的な絆。子どもの社会性や対人関係の基盤となる。養育者は安全基地となり子どもの探索行動を支える。
エインズワースのストレンジシチュエーション法 子どもが母親と離れて1人でいる、または見知らぬ人といる状況を実験的に作り、その時の子どもの行動から愛着のパターンをとらえる実験法。
回避群…母親への接近、接触要求が少なく、分離の時の悲しみや再会による歓迎行動が見られない。
安定群…母親への接近、接触要求が強く、分離の時の悲しみや再会による歓迎行動が見られる。
抵抗群…不安を示す傾向が強く、分離では強い悲しみを見せ、再会しても不安がおさまりにくい。
無秩序・無方向群…顔をそむけながら近づく、しがみついたと思えば倒れこむ、突然すくんでしまうなど、混乱した様子を見せる。
エントレイメント 養育者と新生児の間に見られる同調的な相互作用。新生児が養育者の語りかけに応じて、手足を動かし声を上げる。一方、養育者も新生児の動きや発声に合わせてタイミングよく応答する。
3.生涯発達と初期経験の重要性
発達段階 年齢、学年、機能などの視点から区切る。
J.ピアジェ 認知・思考の発達を、感覚と運動、イメージと対象との間に関係が作られること(これをシェマと呼んだ)として位置づけ、それが修正・変化し、質的に変換する過程を軸とする発達段階を提唱。
感覚運動期(0歳~2歳) 自分の身体を使って、運動と感覚の間の関係を理解し始める。ものが目の前になくても存在することを理解する(対象の永続性)。
前操作期(2歳~7,8歳) 表象(イメージ・言葉)を使い始める。見立て、つもりの世界が成立する。見かけに思考が左右される。
具体的操作期(7,8歳~11、12歳) 具体的なもの、目に見えるものに関しての論理的思考ができ始める。他者の視点を理解し始める。
形式的操作期(11、12歳~) 命題を操作して抽象的な思考ができ始める。
E,Hエリクソン E。Hエリクソンが提唱した心理・社会的発達段階。発達段階ごとに、その時期に固有の危機とその乗り越えによって8つの段階を示した。
段階 1、乳児期
心理的危機 基本的信頼感vs不信
内容 自分の要求に適切に応えてくれる環境を通じて、自己への信頼や自分をとりまく世界への信頼感を育む
段階 2.幼児期前期
心理的危機 自律性vs恥・疑惑
内容 自分で身のまわりのことができるという自律性と、それがうまくできなかったときの恥の感情との葛藤
段階 3.幼児期後期
心理的危機 自主性vs罪悪感
内容 自分から行動する積極性と、それが躾・規範と反するため、いけないことをしたという罪悪感との葛藤
段階 4.児童期
心理的危機 勤勉性vs劣等感
内容 自分が活動し達成することができるという有能感、それを支える勤勉性と、できない自分の能力に対する劣等感との葛藤
段階 5.青年期
心理的危機 同一性vs同一性の拡散
内容 職業選択や性、価値観などを含めた自分が何者であるかという同一性と、それが定まらず方向性を見失う葛藤
段階 6.成人期(初期)
心理的危機 親密性vs孤立
内容 友人や配偶者など特定の他者と親密な関係をもつことと、それが満たされない孤立感との葛藤
段階 7.壮年期
心理的危機 生殖性vs沈滞
内容 次世代を育み、仕事や生活でそれを発展させるという課題
段階 8.老年期
心理的危機 統合性vs絶望
内容 自分のそれまでの生を振り返り、自分の人生を積極的に評価し統合するという課題
発達課題 ハヴィガースト 各発達段階で達成が期待されている課題。
初期経験 乳幼児期における初期経験が生涯にわたる発達の基礎をつくる。
ローレンツ 刷り込み(刻印づけ) カモなどの鳥類で見られる行動、孵化後に動くものを追うように学習される。誕生後、一定時間だけ起こる学習で、その時期をはずすと学習されない。
(臨界期 経験の特定の影響をその時期にのみ受ける敏感な時期)
野生児(社会的隔離児)研究 社会から隔離されて育った子どもの研究。
ハーロウ アカゲザルによる代理母の実験で愛着の重要性を示した。
4.保育における発達援助
学習準備性(レディネス)学習が成立するための心身の準備が整った状態のこと。効果的な学習にそれぞれ最適の時期があるとする。
発達の最近接領域 ヴィゴツキーが提唱。発達において「独力でできる水準(現在の発達水準)」と「他者の援助があればできる水準(発達しつつある水準)」との間にある領域のこと。一人ひとりの発達過程と最近接領域を適切にとらえ、働きかけることが求められる。
シェマ・同化・調節 ピアジェは、子どもの認知・思考の発達を、シェマ(動作パターンやイメージ)を使って外界を取り入れ(同化)、それをたえず修正(調節)していく過程と考えた。
主体性の形成 主体性は、子どもが自分の気持ちや思いに気づき、意図や目的をもって活動を選び、取り組むことで形成される。主体性を発揮することで、周囲との葛藤も起こる。保育者は精神的な支えとなり、葛藤の仲立ちをし、それぞれの子どもの気持ちや思いを受け止める段階がある。
自己主張と自己統制
自他の区別、自我の芽生え(2歳頃)→自己意識の高まりから自己主張へ
自己統制 自己主張と自己抑制(自分を抑えること)のバランス
行動基準(してよいこと、いけないこと)の内在化
社会性と道徳の発達
ピアジェ 他律的判断(6歳頃まで:大人が示した判断基準と権威に従う)から自律的判断(9歳頃から:自分からルールや義務などを判断して行動する)へ
コールバーグ 前慣習的水準(道徳の基準が外側や結果にある) 慣習的水準(道徳の基準が正しいことや他者からの評価にある) 後慣習的水準(道徳の基準が普遍的な価値にある)
心の理論 他者の欲求、意図、信念といった心の状態について推測し理解し予測する力。自閉症など対人関係に障害のある子どもたちは、心の理論の獲得が難しいといわれる。
check!! 気質と性格
気質とは、生まれながらに持っている生物学的な特徴で、個人差の元となる。元々持っている気質が、発達によってどのように変化するかを調べたのがトーマスとチェスによるニューヨーク縦断研究である。
〇9つの気質から子どもを3つの異なる気質に分類
イージー・チャイルド…規則正しいリズムを持ち、手のかからない子ども 40%
ディフィカルト・チャイルド…規則正しいリズムがなく、環境に順応しにくい子ども 10%
スロー・トゥー・ウォームアップ・チャイルド…活発ではないが、環境に対してゆっくりと順応していく子ども 15%
check!! 遊びの発達
発達していくにつれて、遊びでのほかの子どもとの関わり方が変化していく。ひとりから複数へ、関わりの薄い遊びからルールや役割をとる遊びへ。
ひとり遊び…ひとりで遊び、ほかの子どもがいても無関係
傍観者的行動…ほかの子どもの遊びを傍観している
平行遊び…一緒に遊ばないが、ほかの子のそばで同じ遊具で遊ぶ
連合遊び…ほかの子どもと一緒になって遊ぶ
協同遊び…ルールや役割のある遊びを一緒に遊ぶ
●感想
ブロンフェンブレンナーの生態学的システム論(マイクロシステムなど)やバンデューラ:社会的学習理論(観察学習・モデリング)は、学者名とキーワードの組み合わせがよく出るので重要人物として整理していった。ワトソン(環境論)、といった子どもの心身の発達をバランスよく支えるための5つの分野(健康・人間関係・環境・言葉・表現)にかかわる保育の5領域とは、幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領において定められたものと結び付けて考えた。
ネズミを使った実験「オペラント条件付け」で業績を残したスキナーや、自然的観察法にて健常児・病児・傷害児など同一の子どもを長期観察し、より多くの観察記録をつけて子どものデータを集め、研究を行ったダーウィン、子どもの遊びを5つに分類し、1人遊びから共同遊びに至る発達段階を分解して子どもの発達を研究したパーテン、情動の理論家と呼ばれており、精神の障害は生物学的要因だけでなく、環境的・社会的要因も大きく作用していることを説いたワロンが関わることも関係づけられる。
子どもが感情を認識し、適切に表現する力を育むための重要なプロセスが感情教育で、望ましい行動に対してトークン(ポイント)を与え、一定のトークンが貯まると報酬と交換できるシステムで自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子どもに効果的なトークンエコノミーにもかかわりがあると考えた。
