革命的メタルバンドPanteraについて

 Panteraは90年代に活躍したアメリカのヘヴィメタルバンドである。1981年にギタリストのダレル・アボットとドラマーのヴィンセント・アボットの兄弟を中心に結成された。結成当初は「Pantera’s Metal Magic」と名乗っていたが、翌年にバンド名を短くし「Pantera」と改名した。1983年から85年にかけて3枚のアルバムをリリースするが、売れなかった。この頃の音楽性はグラムメタル的なものであり、時代の流行に近いサウンドだった。音楽性の相違から1986年に初代ヴォーカルが脱退し、2代目のヴォーカルとしてフィル・アンセルモが加入する。1988年、新しいラインナップで4thアルバム『Power Metal』をリリースする。この作品はハードロックとスラッシュメタルを融合させたヘヴィなアルバムであった。これに手ごたえを感じたバンドはそれまでのグラムメタル的スタイルを捨て、後にグルーヴメタルと呼ばれる独自の音楽性を追求していくことになる。

 1990年、5thアルバム「Cowboys From Hell」をリリースする。この作品は前のアルバムで披露したスラッシュメタルスタイルをさらに追求したものであった。この頃からバンドの実力は向上し始めたといえる。1992年に6thアルバム『Vulgar Display of Power-俗悪-』をリリースすると、全米チャート44位を記録した。フィル・アンセルモによる歌唱は荒々しいハードコア系の声に変わり、ギターサウンドも重さを増した。グルーヴメタルとよばれる重さを重視したアメリカンヘヴィメタルの誕生である。Panteraの新しさは80年代に隆盛を誇った速さ重視のスラッシュメタルとは異なった、ギターリフの重さを重視したヘヴィメタルをつくったことにあった。Panteraはスラッシュメタルから出発しながらも、最終的にはそれを破壊する新たなヘヴィメタルを完成させたのである。その意味において、Panteraはヘヴィメタルの世界に革命を起こしたバンドであった。

 Panteraはその後もアルバムをリリースし、1994年には全米・全豪でチャート1位を獲得するまでの人気を得た。しかし、ヴォーカルのフィル・アンセルモの薬物依存が徐々に深刻さを増していき、バンドメンバー間の溝が深まっていった。1996年7月、アンセルモがヘロインの過剰摂取により心停止を起こすが、何とか一命を取り留めた。この事件はさらにメンバー間の溝を深めた。結果的に2000年にリリースしたアルバム『激鉄』を最後に、2003年にバンドは解散した。その後、2004年にギタリストのダレルがPantera解散の原因はダレルにあると逆恨みしたファンの男に銃殺される事件が起き、このバンドの再結成は全く望めなくなったのであった。その14年後にドラマーのヴィンセントも死亡している。

 Panteraは不運な運命を辿ったバンドであったが、このバンドが後進のヘヴィメタルバンド達に与えた影響は極めて大きい。重さを重視したサウンドやギタリストのダレルが弾く生々しい音のギターソロなど、Panteraは特異なバンドであった。Panteraが創始したグルーヴメタルというジャンルは、2000年代のメタルコアなどのバンド群にも影響を与えている。Panteraのギターリフはシンプルでありながらも破壊力のある重低音サウンドであり、このバンドはヘヴィメタルが沈滞していた90年代に颯爽と現れたスーパーバンドであったのである。
 

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メタルマン

メタルマンと申します。 ヘヴィメタルと読書が好きです。 音楽や本、映画など幅広い記事を執筆 していきたいと思います。 よろしくお願いします。

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