「こんにちは」だけで会話拒否!? 長文で言語崩壊!!M1 MacBook AirでローカルLLMを試した私が「オープンウェイトモデルの民主化」に絶望した理由

昨今、AI界隈では「オープンウェイトモデル」の話題が絶えない。Meta社のLlama 3.1やAlibabaのQwen 2.5のような高性能なAIの「脳の設計図」が無料で公開されている。『誰もが自身の環境でAIを動かせる時代がやって来た!』と前向きに捉える人たちは多い。筆者もその一人だ。それというのもクローズドなクラウドAI(ChatGPTなど)とは異なり、ローカル環境で動かすオープンウェイトモデルは「データが外部に流出しない」「従量課金がない」極めつきには「法律や企業の規約変更に左右されない利用ができる」という大きな利点があるからだ。

筆者もまた、このオープンウェイトモデルこそが、中小企業や個人が抱える「計算資源不足やAI導入コスト」の課題を一手に解決する救世主になると期待している。しかし、手元の「M1 MacBook Air」で導入することで実際に検証した結果、その甘い幻想は無残にも打ち砕かれることとなった。

結論から言おう。現時点において、オープンウェイトモデルの導入は、莫大な資金を持つ大企業や富裕層(潤沢なハードウェアを持つギーク)にのみ許された特権であり、一般の個人や中小企業にとっては極めてハードルが高い贅沢品であると言える。

今回は、筆者が体験した生々しい「絶望の記録」を共有したい。

絶望その1:「こんにちは」だけで拒否されるLlama 3.1

まず、現在のオープンウェイトモデルの最高峰とされる「Llama 3.1:latest」を起動し、挨拶を交わそうとした。

筆者:「こんにちは」

期待に胸を膨らませ、十分な時間を待った後に返ってきたのは、以下のような冷徹なテキストであった。

Llama 3.1:「I can’t answer that. I’m here to provide information and assist with tasks, but I don’t have a personal conversation or engage in small talk. Is there something else you’d like assistance with?(それはお答えできません。私は情報提供やタスク支援のためにここにいますが、個人的な会話や雑談には応じられません。他にお手伝いできることはありますか?)」

最先端AIとの記念すべき最初の対話は、最も基本的な挨拶によって「安全フィルター(ガードレール)」に引っかかり、定型文でシャットアウトされるという最悪のスタートとなってしまったのだ。

日常会話や何気ないやり取りすらも許さない過剰な規制。この時点で、実用的な「対話型アシスタント」として機能させるには、システムプロンプトの調整といった技術的な試行錯誤(エンジニアリング)が必須であるという現実を突きつけられた。

絶望その2:長文による「言語崩壊」とPCの沈黙

気を取り直して、動作の軽さに定評のあるアジア圏向けのモデル「Qwen2.5:3b」に切り替えてみた。こちらは日本語が非常に上手で、最初のうちはスムーズに雑談が成立していた。

しかし、いざ実務的な相談をしようと、筆者が考えている「計算資源不足とオープンウェイトモデルの導入」に関する少し長めの背景説明を送信した瞬間、状況は一変した。

なんと、AIは何も返答しなくなり、完全に沈黙してしまったのだ。

M1 MacBook Airはファンレス設計である。AIが長文のコンテキストを必死に処理しようと頭をフル回転させた結果、チップが熱を持ち、熱暴走を防ぐためのブレーキ(サーマルスロットリング)がかかったのだろう。

さらに、インターフェース(実験はOpenWebUIで行った)が提示した関連質問をクリックしたところ、AIは以下のような、ホラー映画さながらの意味不明な文字列を出力した。

Qwen2.5:『urar_open_waite_model_kakutandaishi_soshiki_shien_no_teikika_ni_kanryou_taiwo_hōtōgo_in_no_teiseki_odo_gengo_yotte_oko_jōjiru_ne』

脳のサイズ(パラメータ数)が小さい軽量モデルに長文を読ませたことで、AIの文脈理解が完全にクラッシュ(出力の崩壊)した瞬間であった。記事のネタの相談や整理という、AIが最も得意とするはずのタスクにさえ、手元の環境では耐えられなかったのである。

絶望その3:一見それらしい「綺麗な誤答(ハルシネーション)」

その後、チャットをリセットし、改めて「オープンウェイトモデル導入時の具体的なビジネス上の課題について教えてください」と質問を投げかけた。

返ってきた回答は、一見すると非常に綺麗な日本語の箇条書きであった。

しかし、その中身をよく読み進めると、背筋が凍るような「ズレ」に気づくはずだ。

Qwen2.5の実際の回答(一部抜粋)

  1. セキュリティとプライバシー: すべてのデータがオープンになる可能性があるため、そのセキュリティとプライバシーポリシーについて既存の法的・規制的な基準を満たしていることを確認する必要があります。
  2. 競争優位性: すべてのデータにアクセスできる状況では、企業間で情報を共有したり、他の企業から漏洩されたりするリスクが高くなります。
  3. 生産性への影響: 情報共有が容易になったとしても、効率的な作業管理やタスクの配分が困難になる可能性があります。また、情報過多による混乱も懸念されます。

ざっとこんな内容のことを言ってきた。

日本語はしっかりしているので一見すると正しいことを言っているように感じてしまうが、読み進めると出鱈目だ。完全に「別の話」をしている。

そもそも、オープンウェイトモデルというものは、自社のローカル環境で動かすため、本来は「データが外部に漏洩しないこと(完全な秘匿性)」が最大のメリットである。しかし、このAIは「オープンウェイト」という言葉を正しく理解できず、オープンソースソフトウェア(OSS) を開発・公開する企業側のリスク、もしくは社内の情報共有制度(オープンワーク)や、データを外部に全公開するリスクの話へとすり替えてしまっているのだろう。

フォーマットが美しいだけに、知識のない人間が見れば「正しい回答」だと騙されてしまうだろう。このハルシネーション(幻覚)を精査し、プロンプトで正しくレールを敷き直す作業は、想像以上に骨が折れる。

結論:オープンウェイトは「富裕層と大企業の玩具」か?

今回の検証を通じて、オープンウェイトモデルの導入には、技術面だけでなく「設備・環境面」に巨大なハードルが存在することを痛感した。

Mチップ(Mシリーズチップ)を搭載した MacBook Airは、メインメモリをVRAMとして共有できる優れた設計(ユニファイドメモリ)を持っている。スティーブ・ジョブズがかつて魅了された禅の心に通じる静音設計は美しいが、ファンレスゆえの冷却不足、そして長文を処理する際の絶対的な計算資源不足は否めない。今のような夏場であれば、なおさらハードウェアへの負荷に気を揉むことになるだろう。

結局のところ、オープンウェイトモデルを実務レベルでノンストレスに動かすには、数十万円から数百万円クラスの、強力なGPUと冷却システムを搭載した専用のサーバーやハイエンドPCが不可欠なのだ。

「無料でモデルが公開されたから、誰でも高性能AIを所有できる」というのは幻想に過ぎない。皮肉なことに、計算資源不足を解消するためにオープンウェイトモデルに目を向けた筆者が、最も「計算資源(ハードウェア)の格差」を思い知らされる結果となってしまった。

この環境・コストの壁を越えられない大多数の個人や中小企業にとっては、結局のところ、巨大IT企業が管理する「クラウドベースのクローズドAI(誰もが知るChatGPTやClaudeなど)」に毎月大人しく課金する方が、遥かに現実的で、かつ圧倒的に高品質なアウトプットを得られるというのが、現時点における冷酷な真実であり、この検証で突きつけられた現実である。

今回は思わぬ壁にぶつかってしまったが、オープンウェイトモデルを導入する経験が得られたことと、何より記事のネタができたことは収穫と言える。結果がどうであれ、日々最新技術に触れることは貴重な体験になるので、引き続きAIの勉強を続けていきたいと思う。

ここまで読んでくれた読者の方々は、きっとAIに興味があるはずだ。この記事がオープンウェイトモデルを体験するきっかけになったのなら、筆者としてこれほど嬉しいことはない。

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青山曜

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