一年ほど前に除籍本にあった単行本で読み、気に入ったため電子版で再読。
結末において、リンツは硬貨の形をしたチョコレートを作りたいと言っていた。となると、リンツたちのいる世界にはコインチョコがないのか、と少し不思議な気分になる。この世界においてチョコレートは純粋なチョコレートということだろうか。固有名詞が高級な銘柄から取られていることからそう考える。
この話のメインはリンツとドゥバイヨルの腐れ縁だ。ラストでリンツがあんなに嫌っていたドゥバイヨルを助けたのはなぜか、と考えるシーンがある。おそらくリンツにおいて理由はなく、理屈では言い表せない感情だった。事件を解決するにあたり、ドゥバイヨルと共に行動する。そういう経緯において、リンツのドゥバイヨルへの感情は共に行動をする相手であり、目的を成し遂げるための戦友だったように思える。
ドゥバイヨルのリンツに対する感情はどうであっただろうか?単なる気に入らない移民という認識であったが、なんだかんだでリンツと事件の解明に挑む。リンツの祖父を訪ねたときの態度は冷たいながらも、彼がリンツとの距離を縮めていく様子が見て取れる。
好きなシーンはラストでドゥバイヨルが病室において「黙っていれば天使のよう」と形容されたところ。ドゥバイヨルは元貴族であり、当時の貫禄はしっかりと残されている…という。ドゥバイヨルは腐っても貴族であり、悪人になりきれないということかもしれない。
リンツは中盤で他の少年やドゥバイヨルから移民ということで差別を受けるが、ドゥバイヨルとは事件の解決を経て、いつのまにか差別するされる側の構図から脱出している。結局は差別をしないようにするには、相手を知ることだ。
国内文学だが、世界観などは海外の児童文学に寄せて描かれている。そこも自分が好みに感じたところだ。架空のヨーロッパ風の街で起きる小さな…大きな?事件だった。
