
似た顔だけど身分が全く違う少年たちがお互いを装って生活をする話…であるが、「お互いの身分」が問題である。 主人公トムが乞食、エドワードが王子…だが、うっかりトムがエドワードと衣装を交換したところ、周りから逆に思われてしまい、エドワードは締め出されトムとして扱われる。逆にトムがエドワードを演じることに。 というわけで、一番受難だった登場人物はエドワードである。ある意味貴族だったが転落…みたいな状況に。
とはいえトムも貴族が本当に良いものか?と疑問に思うような場面に直面するし、それを経由してエドワード側にいる人物とも分かり合い、最終的にはエドワード側に引き取られる、という古典児童文学の王道…とも言える展開である。
これはトムが王子として頑張った結果とも言える。エドワードのことを忘れかけたが、それでも彼の良心は揺るがなかった、と。トムが元々下層階級だからこそ分かることであっただろう。エドワードもトムの立場を理解して、トムたちがどんな思いで暮らしていたか…と感じたということだと考える。
ラストはある意味トムとエドワードが「分かり合う」展開とも言える。お互いを知らない、顔だけ似ている人間同士がどう分かり合うか?という答えがとても面白い。友情物語としても読み解くことができる。
作者は「ハックルベリー・フィンの冒険」の著者ということもあり、かなり当時の差別意識に対する風刺が多い。アクが強いというか… 尺としても同程度に長いため、人を選ぶかもしれない。タイトルからして「乞食」のワードが入っているわけで、近年の舞台化でタイトルが変更されていることからも分かる通り、かなりストレートな原作と訳ということだ。
角川版は当時の挿絵が豊富であり、おそらく分厚い原因の半分くらいはこれにある。さらに完訳が珍しいという作品である。ハードカバーで借りたため、かなり重かったが、ハードカバーで読んで良かったと思えた作品であった。表紙のデザインもとてもいい。トムとエドワードの関係性が表れている。
同じ顔のキャラクターが役目を入れ替える、という点では「ふたりのロッテ」と共通するが、こっちはとてもハード路線である。わたしはどっちも好きだ。
