後編

前編の話を読んでいただいてから、こちらの後編を読んでいただきたいです。前編では、文化や考え方、建国記念日から学ぶ歴史に季節の過ごし方、よく食べられる食べ物、スウェーデン人の働き方や移民や難民との向き合い方、王室のあり方、スウェーデンで暮らす外国人の暮らし方などをまとめました。
後編の最初は、
スウェーデンでの出産と育児。一般的にスウェーデンは「子育てしやすい国」と言われている。
出産・育児は公的制度がしっかりささえている。
妊娠中の妊婦健診は、主に助産師さんが担当し(定期健診は無料)パートナーも同席しやすく、母親学級が充実しているのも嬉しいところ。出産は殆どが公立病院。医療費は原則無料、または少額を支払う(自己負担額に上限あり)。
入院は、通常1〜2日程度で、母子の状態が良ければ早めに退院させられる。
基本方針が、妊婦本人の力を大切にし、医療介入(薬・処置)は必要最小限にする考え方が出産スタイルの特徴。助産師中心の自然分娩が重視されている。しかし、実際の分娩では、40〜60%台の妊婦さんが無痛分娩を経験するそう。選択肢は豊富で、必要な人には麻酔を使うという考え方が背景にあるらしい。
産後サポートが整っていて、出産して帰宅するまでに、順調にいったら2日くらいしか入院期間はない。スウェーデンのママとパパは、育児休業制度をフルに使って育児休暇を赤ちゃんと共に過ごし、たいへんであろうが満喫するのである。スウェーデンの育児休業制度は世界でもトップクラスと言われており、約480日間の育児休暇(子どもが8歳になるまで)を取得できる。もちろんママとパパで分け合って取得する。(一定日数はそれぞれ専用)スウェーデンでは、パパが取得するのも一般的で、休んでいても、所得の約8割相当をもらえる給付金がある。
次は、スウェーデンでよく飲まれているお酒の紹介。じゃがいもを原料とした蒸留酒、アルコール度数40%のスナップス。
スウェーデンとデンマークでは、夏至祭(ミッドサマー)とクリスマス、イースターなどの祝日に飲まれることが多い。食事中に一緒に飲む小さなショットグラスのお酒。間違っても、平日のランチで飲むものではない。
面白い習慣があり、スナップスを飲む前にスナップヴィーサ(乾杯の歌)を歌い、歌い終わったら「スコール=乾杯」と言って一気に飲むのが伝統。
スウェーデンでも、飲みすぎや悪酔いは嫌われる。みんなで歌ってから飲む、飲み過ぎないよう気をつけるというお酒の場でのマナーを大事にする気質の民族である。
スウェーデン人にとって、スナップスは酔う為のお酒ではなく、食事やお祝いを楽しむ文化の一部である。(なので、スウェーデン人が度数の高いアルコールを飲んでいたとしても決してお酒に強いわけではない。)
スウェーデンで有名なものがもうひとつ。夏の終わりに食べるザリガニ。スウェーデンでは、8月から9月にかけてザリガニ漁が解禁され、川や湖でザリガニ漁をして食べる。この時期は現在ではスーパーで大量にザリガニが売られている。ザリガニ漁やザリガニパーティーは、まさに夏の終わりを告げるスウェーデンの伝統行事である。もともと19世紀初頭、ヨーロッパ中でスウェーデン産のザリガニが美味しいという噂が広まって、乱獲されるるようになり、その頃からザリガニ漁が規制されるようになった。
ザリガニ漁では、個体の大きさが10センチ以下の場合はリリースしなくていけない。このようにしてザリガニを保護している。
伝統行事である一方、昔は一般家庭でも漁を楽しめたが、現在は漁業権が必要な場所が多く、気軽に誰でもどこでもできるわけではないことから、ザリガニ漁やパーティーを楽しむ人が減っている。
次は、夏休み。スウェーデンの社会人の一般的な夏休みは、4〜5週間である。
実は、スウェーデンはヨーロッパの中でもダントツで休みの長い国なのである。全労働者に(年間)25日の有給休暇が与えられており、これは、労働者の権利だという意識がとても高い。そんなスウェーデンの夏休みは、夏休みの予定を3月には勤務先に申請しなければならないルールがある職場が多い。みんなが夏休み(特に7月)に休みたがるのと、夏に業務が止まらないように調整が必要だからである。次に、有給休暇を取得すると、「休暇手当」がもらえる。給料に有給休暇分の追加でもらえるお金のことである。日本だと、有給休暇をとって休んでも、給料が出るだけであるが、スウェーデンでは、有休休暇をとったら、給料+ボーナスがでるようなものである。
病院に勤めている助産師さんも夏休みは普通に休暇を取る。日本人だと緊急の時はどうするの?と思ってしまうが、慣れているスウェーデン人は当たり前だと考えているらしい。色々と緊急を要する職業があるが、ラーゴムの文化の中で生きてきた人達なら当然な
考え方かもしれない。
スウェーデン人は夏休みに限らず休みを多くとっているイメージで、クリスマスや年末年始にもしっかり休みを取っているかと思いきや、クリスマス(クリスマス休暇は24日から26日。日本のお正月の三が日に当たるイメージ。)が終わると、その後はあっさり仕事に戻り、大晦日も関係なく年始も2日から働く(1日だけ祝日)。なぜかというと、家や街は暗くて寒く、やることがないからである。太陽を求めて南ヨーロッパに旅行に行く人もいるが、この時期はホテルや飛行機代が高くて一般人には手が届かないので、そんな時期に旅行に行くのはもったいないと、仕事をしようという人が多い。
子どもたちは、保育園や学校のクリスマス休暇が12月中旬~1月上旬までの約2週間で、スウェーデンでは、子どものいる家庭では、子どもの休暇に合わせて自分の有給休暇を取ることが多い。日本のように「みんなで一斉に休みを取る」文化ではなく、個人が有給で調整する文化なのである。
家族が集まるクリスマスは、アデベントというクリスマスの4週間前から日曜日が來るたびに1本ずつ計4本のろうそくに火を灯していくクリスマスを数える行事がある。
スウェーデンのサンタは、小人のようなトムテと呼ばれる妖精で、家にプレゼントを持ってきてくれる。スウェーデンではまわりの欧米と同じく、子どもにだけではなく、家族や親せき同士でプレゼントを渡し合う。
クリスマス当日は、テレビでディズニー特番(ドナルドダックの特番)が放送され、国民的行事レベルなので、殆どの家庭で観られる。
街中のお店も閉まり、会社も出社しても「人がいない」状態でほぼ全休状態になる。
次に、北欧と言えばサウナだが、サウナと言えばスウェーデン、というよりおとなりの国フィンランドであろう。(フィンランドには、全国にサウナが330万あり、2,3人にひとつの割合でサウナがある。それに比べるとスウェーデンには全国に30万ほどで、30人にひとつの割合でサウナがあるので、フィンランドのほうがサウナが根付いているかもしれないが、日本と比べてみたい。)フィンランドでは、「サウナで生まれてサウナで死ぬ」という言葉があるくらい親しまれており、教会のような神聖な場という一面もある。それが、北欧の寒い冬を乗り越えるため活用されて、スウェーデンにも広まった。サウナは、特別なものというより、生活に根付いたものである。
スウェーデンでは、ジムやプールにはもちろん、親族で持つ別荘やマンションなどの共同住宅にサウナが一緒についていることが多い。「サウナ」はフィンランド語で、スウェーデン語では、サウナのことを「バストゥ」と言う。北欧のサウナで、公共のサウナは、水着を着て入る男女混浴か、男女別々(水着を着なくていい)のサウナの両方ある。
親族で持っている別荘などには、規模が小さいので、窓があることも多く閉鎖感がないのもよい。熱源も電気やガスではなく、薪であることも多い。北欧のサウナは、ウエットサウナなので、室温は70度、湿度は20%くらいなのでゆっくりしっとり温まれるので、苦しくない。(日本にあるドライサウナは室温90度前後で、湿度10%くらいでカーッとした暑さを求める人向け)
話は変わって、スウェーデンは、福祉や医療体制が整っているとぼやっと考えてきたが、この「整っている」というのも日本の感覚で触れてしまうと、非常に驚くことになる。
まず、体調が悪くなっても、すぐに医師の診察は受けられない。そもそも病気の時に診察してもらうための日本のかかりつけ医のような総合クリニックに家族ごとや個人ごとに登録しなければならないからだ。そして、体調が悪くなった時にそこに電話して、診察してほしい時は予約をする。しかし予約もすぐには取れないことが多く、風邪などの場合は「市販の薬で抑えて、栄養をしっかりとって休んでください。」などと言われて、予約が取れるのは、体調が良くなってからということも多々あるそうだ。一方、そんな時に会社に勤めている場合、日本よりかなり手厚い制度があり、1日休むのは無給だが、2日目以降の病気休暇には給与の約80%が会社から支払われる。15日目以降は、社会保険庁から引き続き約80%の給与が保障される。医師の診断書も休暇取得7日目までは必要でない(8日目以降から必要)。
そして有給休暇とは別なので、有給を削らないですむ。日本のように体調が悪いのに出勤すると問題視される。その他子どもが病気の時に看病するために休むVAB制度(看病休暇)があり、年間120日程度まで利用可能で、給与の約80%が国から保障される。
登録してあるかかりつけ医に行くまたは電話する前に、医療機関を受診するべきかどうかなどを聴くことができる、ヘルスケアの総合案内番号1177番があり(救急の場合は警察・消防と共通で112番)、まずはそこで判断すべきらしい。
かかりつけ医への診察も、どんなに苦しくてもすぐに診てもらえず、完全予約制だったりする。このように病院に行っても予約なしでは絶対診てもらえないなどが徹底されているのは、病院が公立で、税金で賄われているからである。スウェーデンでは、無料の健康診断がないかわりに、健康促進費というものがあり、普段からいかに健康を維持するかに重きを置いている。会社などの福利厚生施設として、ジムやサウナが提供されているのもそのためである。自分の命は自分で責任を持つという意識がつよいスウェーデンの人達にとって、病気にならないことそのものが、大切であるので、医療機関に相談しなくても薬局に行き薬剤師さんに相談するだけで十分ということもあるので、スウェーデンの人達は病院や薬と上手く付き合っているんだなと思う。日本のような健康診断は一般的でないことを日本人は、自覚しないといけないと感じる。そして、乳がんなどは、スウェーデンでも一定の年齢以上になると、日本と同じように検査の案内が届いて検査に行くことを促されることを知っておきたい。

次にスウェーデンといえば、ノーベル賞。スウェーデン・ストックホルム出身の発明家、科学者、実業家であるアルフレッド・ノーベルが遺言によって創設した世界的に最も権威ある賞。ノーベル賞の多くはスウェーデンの機関が選考に携わり、毎年ノーベルの命日に授賞式が行われ、ノーベル賞各賞発表が行われる前後のイベント数か月をノーベルウイークという。2020年からストックホルム市庁舎をはじめとする10数か所で光のショーが行われる。(プロジェクションマッピング)ノーベルウイークは、ストックホルム市内で様々なイベントが行われ、ニュースでも取り上げられるが、国民の熱量はそんなに高くない。もちろん国民全員がノーベルのことを学校教育で学んで知っているし、ノーベル賞が世界的に権威のあるものだという自負もある。子どものころから学校で触れ、誇りはあるものの、日常生活に直結して熱狂するものというわけではなく、日常には密着していないイベントなのである。

次にスウェーデン人の人柄。スウェーデンに渡って住みだしたらとても大事なことである。日本人からすると、初めてスウェーデン人と接すると、カルチャーギャップを感じることであろう。全体的な傾向として、控えめで謙虚、内向的(シャイで人見知りな部分がある)な人が多い。その反面、必要な時には協力的(親切)だが、初対面の人とは礼儀正しく、過度に親密になろうとしない。親しい人でも過剰に干渉することはしないなど、人との距離感を大切にし、プライベートな空間や時間を尊重する傾向が強い。スウェーデン人は人見知りなので、日本社会より、会話の最初の壁が厚め。会話が途切れても気まずいと思わない文化である。
そんな中、遠慮しすぎると、自分の意見がない人と思われることもあるので、自分の意見はきちんと伝えたほうがいい。控えめでもいいので、自分の意見は言う。
最初はクールでも、信頼関係ができると、一気に親しくなる。仲良くなると、距離が縮まるのが早いので、最初が大切。コミュニケーションは少ないが、自己主張が少なく調和を重んじるので一見冷たく見えることもあるが、信頼できる相手として付き合える。
その他、約束や時間に正確で、信頼されやすい性格である。
ラーゴム(ちょうど良い)の考えが生活に根づいているので、人生のあらゆる面でバランスを重視し、社会的平等や公正さも大事にする。
スウェーデン人もパーティーを開いたり、呼ばれたりするが、パーティーで初めての人にあまり話しかけないので、人間関係が深まらない。
知っている人同士で固まりがちで、グループごとにゆったり話すことが多い。帰りたい人は静かに帰るなど一体感より個人の快適さが重視される。
スウェーデンでは、パーティ―は仲が良い人達がより仲を深めるために開くもの。
最後に。スウェーデンで上手に暮らすポイントは、スウェーデン人の性格も考えて意見は控えめであるがちゃんと言うべきことや仕事を頑張りすぎるより、家族やプライベートな時間を大切にして生活することが重要。
一番は違いに慣れることで、日本の感覚のままだと、戸惑ったり、不信感を持ったまま生活しなくてはいけないので、スウェーデンに渡る前にしっかり準備をしていくことが大切である。
その他、上司・年上の人間関係も対等で、過剰な敬語や遠慮も不要である。
私的には、冬が日本より寒くて太陽が出ていない時間が多いので、気持ちが塞いだり鬱になったりする傾向があるのがちょっとしんどいが、自然が多く誰もが対等であるべきという平等意識が強いのも、素敵だなと思う。その他にも自分の健康を自分で守るという健康意識も、長い人生の中で大切だなと感じる。
日本で充実した生活を楽しむのも十分素敵だが、海外に住むとしたら、是非選択肢に入れたい国のひとつである。海外に住むことは、夢ばかりではないが、準備と努力を怠らなければ、きっと素敵な暮らしに繋がるだろう。

