入院

鼻からチューブ
右手にぶら下がった幾つもの点滴
天井の光と幾つもの雑音
看護師さん達の声

ここはどこ?
私は生きているの?

確かに体はここにあるけれど
身動きが全く取れない
柵のあるベッド
左手はナースコールを求めて握りしめる

事あるごとにナースコールを押す
動けないから
歩くことはおろか
自力で起き上がることも出来ない

オムツをして
そこで排便なんて出来るはずがない

トイレへ行きたい
でも歩けないから
トイレへも行けない

手も足もこわばって
全く言うことを聞いてくれない

リハビリ頑張って下さい。
という主治医の声

作業療法士の先生と毎日歩く練習
まずはベッドに座ることから
次は立つこと
そして点滴台につかまって
車椅子へ移動
車椅子に座って手と足の運動

「もうすぐ歩けそう」
という先生の言葉

嬉しい!!!

「歩けたらまずしたいことは?」
という問いに

真っ先に「トイレに行くこと」
と答える

入院してからまだ排便がない
ずっと絶食だったから

手術後 HCU ICU 一般病棟へ
危なかった命
生かされた命
救われた命

初めて口にしたのはカロリーメイトゼリーりんご味200kcal
朝昼夕カロリーメイトゼリー
だんだん物足りなくなるが
お腹の張りは増すばかり
苦しい苦しい

苦しんだ末に
ベッド脇にポータブルトイレを置いてもらう
出したい出したい
あれ?出ない
一回目は失敗

二回目挑戦
ちょうどご飯時
同部屋の人に迷惑がかかると身構えながら
「ビリっ」という音とともに
入院後初めての排便
いつぶりだろう?

それからは看護師さんの手を借りて
トイレへ

トイレへ行きたい執念が実ったのか
あっけなく歩けるようになる

トイレまでしか行けないと思っていたが
廊下を歩くことが出来た

リハビリ卒業!
あっけなくリハビリも終わった

食べる練習は言語聴覚士の先生から教わる
お口や舌の体操を地道にやる

おもゆ→五分粥→全粥→御飯
最初に白米を口にした瞬間の喜びは計り知れない

とろみを付けないと飲めなかった漢方薬も
いつの間にか普通に飲めるように

シャワー浴も売店へのお買い物も出来るようになった

ただ一つガッカリするのが
鏡で見た自分の顔と体
10㎏以上痩せて骨と皮
顔は骸骨のよう

食べる量は増えても
体重は増えてはくれない

受け入れ難いが
これが今の私

誰にどう言われようと堂々と生きていこう

痛い。気持ち悪い。苦しい。辛い。

味わった感覚は忘れないけれど
確かに乗り越えられた

よく頑張った、私

これからが正念場だけれど
乗り越えられる気がする

たくさんの人の支えに感謝

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そらいろ

自分とは?この胸のもやもやは、どこから来てどこへ向かっているのか。「当事者研究」という自由な発想での自分自身の病気の研究をもっと多くの人に広めたい。共有したい。と思いつつ、ポエムも嗜む吾輩です。

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