遅いランチを済ませて小走りでエレベーターに乗り込む。扉が閉まる直前に慌てて一人の男性が乗り込んで来た。
私は「何階ですか?」と聞くと男性は「〇階で!」と答えた。
私は軽く会釈をして先にエレベーターを降りた。
それから数日後、私を名指しで会社へ電話がかかって来た。
「〇〇証券の〇〇男です。先日エレベーターでお会いしましたよね!」と言って来た。その時に私の事務服の名前を覚えていて電話をしたと、その男は言った。
要するにデートの誘いであった。
あの時、私はさほど気にもしていなかったし顔も記憶に残っていなかったので丁寧にお断りした。
ところがあまりの強引さに根負けしてしまい、友人と一緒ならと約束した。
約束した前日の退社時刻の午後五時過ぎ頃であった。私は友人と明日の待ち合わせ時間などの確認の電話をしていた。
その時、大きな地震が発生した。
事務所内のロッカーは倒れて、机上の書類は散乱した。
М沖大地震である。
帰宅ラッシュの時間帯に鉄道がストップしたために、バス停に向かう人々の波、波、波、
停電で信号機も街の灯りも消えた。
何とかバスを乗り継ぎ自宅に着いたのは午後10時過ぎていたと思う。
そして翌日は会社は休みとなった。
翌々日、私は「〇〇証券の〇〇男」に電話をかけた。
返答は「わが社には〇〇男と言う社員はおりません!」と・・・ ・・・ ・・・
大地震の爪痕は建物倒壊などあったけど、М県は早い復旧であったと記憶している。
数日後の落ち着いた頃、私は美容室で週刊誌の拾い読みをしていた。数ページ読み進めていたところ、ある記事に目が止まった。
「〇〇証券の〇〇男です! 結婚詐欺師逮捕!」
私は背筋が凍り付き絶句した。
私は騙される寸前だった。友人にも多大な迷惑を掛ける事になったと考えると恐怖であった。
未曾有の大災害に私は守られていたのか?

