※使用ツール『GeminiAI』
EP4
「はあっ……..はあっ………やっと見つけた」
魔霧が一人、スタジオの中に入ると灯りはついていた。
警備員が何事だと質問してきたが警察絡みの探偵事務所と伝えたら納得してくれたようだ。
そこに彼女がいた。
黒いワンピースにブラックの大きなリボンにエメラルドグリーンの瞳。
依頼人、『小巻ゆりあ』の姿はどこにもいない。
『へぇ。意外と早かったわね。残念だけどもう彼女はわたしとひとつになったの』
「…………….」
『どうしたの? 彼女がいなくなったから怒っているの?きゃはっ、当然よね。だってわたしを捨てたのが悪いし』
魔霧は怒りもせずに、ゴスロリ少女の目の前でしゃがみ込み交渉体制へとうつる。
少女は驚いて魔霧を見つめる。
「あのさ。ゴスロリちゃん、いやジュリアと言うべきかな」
『ジュリア?』
「そ。キミの名前、【キミは小巻ゆりあに化けていてわざとストーカー犯を探してほしい】と願ったよね」
『え?』
さっきまで余裕な表情で魔霧を見下していたが、か弱い少女へと変化する。
冷や汗をかいているのだ。
「思い出したんだ。私、偶然声優アイドルオーディション番組を見ていたんだ。そこにキミに似た子が」
魔霧は真顔ではっきりと答える。
「彼女の名は、【ジュリア・アンヌ】。ボツ案になってしまったキャラクターだよね」
『どうしてそれを貴方が知っているの……………?』
「元々はメインメンバーになるつもりだった。今大人気の注目キャラとして。でも原作側がそれを否定した」
魔霧が見ていたオーディション番組は、ネットで配信されていたゲーム原作のリアルアイドルプロジェクト。
最近KーPoPが流行りだし、元アイドルが声優になることは珍しくない。
その中でこれは、魔霧がとても気に入っている原作側のキャラクターをリスペクトしている。
原作では、『ジュリア・アンヌ』は元々メインメンバーの中では大人気キャラクター。
しかし日本版にプロジェクトが進行される時は、『小巻ゆりあ』という帰国子女というキャラで通す。
いわゆる大人の事情で出したくても出すことが厳しい子だと言われたのだ。
『それじゃあ、【本物の小巻ゆりあ】はどこにいるの……………』
「内田奈那子(うちだ・ななこ)さん。キミが友人と話をしていた子だよ」
『え?』
「実は彼氏ができましたーってのはウソで本当はレッスンを一生懸命に取り組んでいた二次試験の子だよ」

魔霧はジュリアにトドメをさした。
「電話中のスピーカーモードでスニーカーのキュッキュッ、て鳴る音が聞こえたから」
「忘れ去られた人形は、キミさ。【キミ自身を受け入れなければ『小巻ゆりあ』は存在しないまま】だ」
言い返すことには慣れている、レスバなんて言われても構わない。
簡単に言えば【小巻ゆりあというキャラクターを受け入れない限りジュリアは怪異もどきのまま】。
内田奈那子は、諦めかけているというか前に進めない。
難しいけれど現実は残酷だ。
『わたしが認めればあの子は解放できるの? つまり、わたしが彼女を束縛していたというわけ………』
「言えたじゃねえか」
それは呪霊になるよりずっと未練が強くなることだ。
その代わり、代償として未来は変わってしまう。
代償とは。
「世間の認識は、『小巻ゆりあ』というアイドルにメロつくわけ。ジュリア・アンヌは存在しない」
すると拍手と共に妖艶な血の匂いが魔霧と恒聖にまとわりつく。
ジュリアも驚いて相手を見た。
『わたしはこれからどうしたらいいの?』
「かわいいね。キミ、合格。ぬりぃんだよ、僕のところにおいで」
ジュリアの背後からドス黒いモヤが現れた。
悪意があって誰かを蹴落としても頂点を摑みとるウソで満ちたつまらない欲望が。
ジュリアの頭を優しく撫でる玲を見たふたりは冷静さを取り戻す。
「だったらキミが俺の推しになってよ。優しく愛してあげるから。キミが名乗ればいい」
「今だ!恒聖、行くよ」
「ああ。あのドス黑い呪霊をつぶす」
三人はゴスロリ少女の背後にいるモヤに向かって言い放つ。
「アンリミテッドルールブック、ボクは決め顔でそう言った」
「領域展開。俺と一緒に地獄に堕ちようぜ」
「のまれんなよ、俺が全て壊す。クッソ跪け、BlueRock」
声にならない絶望した歪んだ少女の悲鳴がスタジオ全体に響き渡った。
Epilogue
こうして小さな事件は解決していった。
現在は、『小巻ゆりあ』がSNSでバズりまくり。
声優アイドルの内田奈那子こと通称『なきゃこ』は人気に躍り出る。
人形師で魔女と呼ばれた女性はこの世の生者ではないことが後からわかった。
玲は新しく加入したゴスロリ少女、ドールではくなったジュリア・アンヌを可愛がる。
「あー、怖かった。正直今回の依頼は失敗するかもしれないと思った」
「さすがの俺でもこの類の依頼は御免だぜ。芸能界も首突っ込めないしな」
「僕が見込んだ最高の人材だよ。消えてもらうには惜しいからね。まさか寂しかったの?」
「はぁ⁉」
「うるせぇ」
ジュリアは、おどおどしながら三人を見つめる。
本当に全てが終わって一息ついたが、存在を消されることを恐れていた彼女は溜息をついた。
場違いだから自分がいても大丈夫なのだろうかと。
「あの、わたしはここにいていいのかな」
あの時の強気な感じではなく女の子らしく純粋な性格へ変わっていた。
特に同じ女性の魔霧には親近感を持ち、男性の恒聖、玲には気をつかっている。
「勿論だよ。これからもよろしくね、ジュリア」
「人手が増えるのはありがたい。しかも仲間なんてな。よろしく頼む」
「どうせなら楽しく行こうよー。俺はキミを歓迎するから」
「う、うん!よろしくお願いします。マキ、コウセイくん、レイさん」
怪異もどきでも特級呪霊でもない、人間になれた幸運のドール。
それがジュリア・アンヌという少女の存在意義だった。

終幕
