不思議図書館・索「6:裂く者(後編)」

「バアル…。」

みるはユリィから聞いた事を思い出し、なぜ自分の記憶に大悪魔の事が無かったのかを理解する。

まさか冗談で言っていた事が本当で、更に上位の存在だったとは…みるは思わず苦笑した。

そして自分が今、弱い事もわかっている。目の前の大悪魔を打ち負かすのはもちろん、捕われているイミアを助けるのすら困難だろう。

でも…

「今ある手持ちで、全力全開でやってみる!」

先程ユリィに放った光の球をまた出し、大悪魔に向けて銃撃のように放つみる。

(いや、啖呵切ったけど…武器無し、大技無し、反撃力無し、オマケに相手のフィールド内って、正直打つ手無くない!?)

「エイル!」

みるの背中に小さな白い翼が現れ、空中へと飛ぶ。

だがしかし、本棚から本が無数に飛んで来て、みるの行く手を遮ってきた。

(あー!!びゅんびゅん飛んで来んなー!!避けるのもせいいっぱいって、私弱すぎ!!)

などと、みるは思っているが…

【やっぱり女神ってやばいですわ…何で本を避けながら攻撃できているんですの…しかも途切れずに。普通とっくに魔力が無くなりますわよ…。】

魔導書グリモワール…の中にいる悪魔、ゼルルはイミアを見張りながら言う。

あ、やっぱりみるの魔力って他から見てもやばいんだ、とイミアはちょっと思ったとか。

「そろそろ飽きてきた…終わらせるか。」

小さく欠伸をした大悪魔は、左手に黒い雷を出し、1.5メートルの長さがある剣に形を変えて投げた。

みるの光の球は一撃で吹き飛び、左顔ギリギリ横の壁に突き刺さる。衝撃でみるの黒髪が何本か切れて落ちた。

「……っ!!」

(ああこれ死ぬかも。死んだらゴメン、■■■。)

「今からでも命乞いをして、俺を好きになれば止めてやってもいいが?」

「絶対にしないし、好きになんかならない!この大悪魔!!」

「…なら一回死ね。そして魂を永遠に俺の手の内に留めてやる。」

大悪魔は同じ大きさの黒い雷の剣をみるに向けて投げる。みるは両手を前に出した。

「シールド!!」

光の膜がみるを覆い、雷の剣は止まった…が、防ぎきってはいない。少しずつだが、光の膜が破れている。

「くうぅ…!」

(魔力が…保たない…!!)

剣が徐々に近付き、みるの手のひらに触れる

…ところだった。

バリン!!という音がして剣が崩れ落ちていく。

横から飛んで来て剣を崩した「それ」は、みるの手にそっと乗った。

「「黒い羽根!!」」

みるの歓喜の声と、大悪魔の忌々しそうな声が重なる。

「またか!!またジャマをするのか!!お前さえいなければ…!!」

大悪魔がまた剣を作り、今度は直接みるに向かい切り込む。だが、それをみるは黒い羽根で受け止めた。

たった一枚の羽根が、まるで鋼のように硬い。

「お前さえいなければ、永遠に俺は司書でいられて、みるも変わらずに来てくれていた!!…全部お前のせいだ…お前が俺から全てを…みる達といる司書の日々を奪った!!」

それは果たして「誰の」叫びなのだろうか。

なぜ、むつぎは過去を思い出す事を選んだのか。

「…む…つぎ…。」

目の前の大悪魔は、本当に全て大悪魔なのだろうか。

「…ずるいよ…そんなの…戦えるわけないじゃん…!私が羽根を見つけてしまって…私のせいなら…!」

みるが「みるでいた日々」を思い出し、ほんの少し、羽根を持つ手を鈍らせてしまった。

それを大悪魔は見逃さなかった。

「そこだ!!」

切り「裂く」音が 響き渡る 

剣は みるの胸を 切り裂いた

「言った筈だ。オレの女神は誰にも渡さん、と。」

様に見えたのだが、剣が…止められていた。

スラリと光る刀を持つ、銀色の長髪を一つに纏めあげた男によって。

「あ…ああ……」

一度たりとも忘れたことなどなかった。

会いたかった。触れたかった。声を聞きたかった。一緒にいたかった。

「7つ羽根を集めたら場所がわかる…「そこに貴方本人は含まれない。」なんて、バカげた話がある?信じられないわ。クロハネ。」

「クロハネと呼ぶなと言っただろう。「ユメリィ」。」

「詐欺も同然よ!!何度でも言うわ、クロハネ!…みる、貴女からも言ってやって頂戴!」

男の背後からやって来た女性…ユリィは、その手から黒い羽根を投げる。

少女の手の羽根と、女性が持っていた羽根は、少女の胸の中に溶けていく。

羽根は、少女の持っていた「記憶と力」を少女に戻す。

「…レフィ……「レフィール」っ!!」

少女…「みる」は、ようやく「探しもの」を見つけた。

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メルン

小説を書くのが好きな、アニメ・ゲーム・読書が趣味の人です! 目についたものや不思議なことを小説にしたり、絵にも挑戦したいです。 ほのぼの、ほんわか、ちょっと謎な話もあるかも…?

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