終わった世界を君と行く 5

 木々のざわめきや鳥の鳴き声で目が覚める、何か夢を見ていたような気もするが、もう夜の気配とともにそれも消え去っていた。大きく伸びをして、すぐそばで寝ているイブを見て、小さく驚きの声を上げた。私の声を聴いて、イブは瞼をこすりながら目を覚ました。

「おはよう」

 あぁ、おはよう、心臓の鼓動がやけにうるさい、私は彼女に気取られないように、昨日はよく眠れた? と作り笑いを浮かべた。

「まぁまぁかな、アダムは?」

 まぁまぁだな、そう返すとイブと私は見つめ合い、数秒後笑い出した。

「じゃあ、今日は何をしようか」

 私は彼女が昨夜語っていた夢について尋ねる、イブは腕を組んで考え込んだ後、なんでも! とまぶしいくらいの笑顔を向けた。

「なんでも、か、それはそれで難しいな」

 んー、じゃあ、イブの予想外の提案に私は目を見開いた。どう? いたずらっ子っぽく笑う彼女に、あまり気乗りはしないが、仕方ない、と渋々頷いた。

 イブの提案で、私は彼女に狩りを教えるため、昨日の小高い丘に来ていた。近場に転がっていた木の板を、近くの木に立てかけ、彼女に弓矢を手渡した。

「あの的を狙えばいいの?」

 すぐ側に置かれた的を見て、どこかイブは不服そうだ。まぁ初心者だからな、私がニヤリと口角を吊り上げると、これくらいなんてことないから! とイブは弓に矢を番え的を狙い矢を放った。矢は的にあたることなく、明後日の方向に飛んでいく。

「難しい、ね」

 照れたように笑うイブに、まぁ初心者だから、と苦笑した。この調子だと、矢が何本あっても足りなさそうだ、近くにいるから、と声をかけてから枝を拾いに行く。矢が空を切る音を聞きながら、矢と矢じりに使えそうなものを拾っていく。少しずつ日が傾いてきた、躍起になって矢を放っているイブに、そろそろ帰ろうか、と声をかけた。

「まだ、あと少しで当たる気がする!」

 確かに木の板付近の地面に、数本の矢が突き刺さっている。じゃあ、あと少しだけ、やれやれと首を振るとイブは嬉しそうに笑った。矢筒が空になるとき、乾いた音と共に木の板に矢が当たった。やった! 当たった! ピョンピョンとその場で飛び跳ねるイブに、私は無言で矢筒の中を見せた。

「……空になっちゃったね」

 さ、矢を拾いに行こうか、作り笑いを浮かべる私を見て、イブは小さな悲鳴を上げた。

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猫人

はじめまして、猫人と申します。映画鑑賞、小説を書く事、絵を描く事、ゲームするのが好きです。見たり読んだりするのはオカルト関連ですが、執筆するのはSFと言うなんとも不思議な事がよく起こっています。ダークだったり、毒のある作品が大好きです。

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