零感霊能探偵は妖狐と共に 6

 久しぶりの薫の手料理を味わいながら、誠はこの頃のことを二人に聞かせた。嬉しそうに頷く薫と対照的に、伸はあぁ、だの、そうか、だのと繰り返している。あの日と変わらない二人の様子に、自然と誠の顔がほころんだ。

「なに? なんか嬉しそうね」

 ニコニコと笑う薫に、そっちこそ、と誠が笑い返す。どこか楽しげな二人に、伸がふっと笑った。二人は顔を見合わせると、笑った! と驚きの声を上げる。

「笑っちゃ悪いのか?」

 どこかすねたように言う伸に、二人は頭を振った。誠がまだ実家にいた頃は、伸の笑った顔など殆ど見たことがなかった。自分が変わったように、二人も変わっていたんだろう、嬉しさとともにどこか寂しさも感じる。

「その、梓って子、いつか連れてこい」

 えぇ、と露骨にいやそうな顔をする誠に、たまには彼女くらい連れてこい、と伸が真剣な顔で誠に言うと、そういうんじゃないって! と誠が慌て始めた。

「冗談だ」

 どっちが? と混乱しながら聞く誠に、お前に彼女ができるとは思わん、とやはりぶっきらぼうにでもどこか楽しげに伸が返した。もう、お風呂入って寝る、ごちそうさま! 食器を両手に居間から出ていく誠を見て、二人は顔を見合わせた後笑った。

 誠は風呂から上がると、暫く家の中を歩いていた。思い出に浸りながら歩いていると、ふと開かずの間と言われている部屋の前で立ち止まる。霊感がないからとは言え危険だから、とずっと中に入ることを禁止されていた部屋の前で、暫く立ち尽くしたあとキョロキョロと辺りを見回した後、恐る恐る部屋の戸に手をかけた。

「何してる」

 突然後ろから声を掛けられ誠は悲鳴を上げた。ゆっくりと振り返れば伸が冷たい目で誠を見つめていた。

「何って、ちょっと気になって」

 そうか、変わらず冷たい目で見つめてくる伸に、誠が踵を返そうとすると、まぁまて、と伸が誠の腕を掴んだ。怪訝そうな顔で振り返る誠に、見てかないか? と伸が部屋を指す。

「いいの?!」

 目を見開く誠に、伸は小さく頷き返した。ぱっと腕から手を離すと、戸を開けて部屋の中へと入っていく。誠は暫く考え込むと、その背中を追った。

 部屋の壁には大量の札が張られており、足の踏み場がないほど大きな人形が置かれていた。見ればどれもこれも同じ顔をしており、あまりの異様な雰囲気に誠は小さくうめく。中央に置かれた大きな箱を見つめていると、伸が箱に近づくとゆっくりとふたを開けた。
 誠は恐る恐る箱の中を覗き込むと、中にはふさふさとした金色の尾が入っている。どこからか殺気のようなものを感じ振り向くと、ぼんやりと狐火が浮かんでいるように見えた。

「タマちゃん?」

 誠が声をかけると、ふっと狐火は消えてしまった。てっきり一人きりだと思っていたのに、玉藻が家までついてきていたことに誠は驚く。だがよくよく考えると、何の意味もなく玉藻が今まで自分についてきたとは思えない、きっと何かしら思うことがあってのことだったんだろう。暫く考え込む誠を見て、伸は人の背丈ほどある人形の一つを手に取ると、それを担いだまま部屋から出て行った。ハッと我に返ると、誠は自分の部屋へと歩いていく。

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猫人

はじめまして、猫人と申します。映画鑑賞、小説を書く事、絵を描く事、ゲームするのが好きです。見たり読んだりするのはオカルト関連ですが、執筆するのはSFと言うなんとも不思議な事がよく起こっています。ダークだったり、毒のある作品が大好きです。

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