零感霊能探偵は妖狐と共に 11

 どこか浮かれた様子の梓を連れて、誠と玉藻は遊園地にやってきた。平日ということもあって人はまばらだが、そっちの方が今回は都合がいい。今すぐにでも迷子になりそうな梓の手を誠が引き、半ば引きずるようにしてお化け屋敷へと連れていく。

「せっかく来たんだよ?! 遊んでもいいじゃん!」

 頬を膨らませる梓に、誠はため息をついた。施設トラブルにつき、関係者以外立ち入り禁止、と書かれたお化け屋敷を見つめていると、お化け屋敷の中からひょっこりと男が現れた。おぉ、来たんすね、どうですか? この遊園地、ニコニコと笑う男を見て、三人は顔を見合わせる。梓が、やっぱり遊園地ってテンション上がりますね! と子供のような笑みを見せた。そうっすよね、そうっすよね、と笑う男を見て、梓はそうですそうです、とそれはそれはうれしそうに笑っている。どこか不機嫌そうな誠の肘を玉藻が小突くと、誠はハッとする。

「まさか、嫉妬してるんですか?」

 ニヤニヤと耳打ちする玉藻に、誠は、まぁ、と頭を掻いた。意外な返答に玉藻は驚くと、やっぱり貴方も男ですねぇ、とニタニタと笑い出した。

「あぁ言うのがタイプなのかな」

 小さな声で呟いた誠の声に、梓がふと振り返った。誠はハッとすると、思わず玉藻の背に隠れる。玉藻はすっと横によけると、ドンと誠の背中を押した。誠は前によろけると、梓にぶつかる。わたわたと慌てる誠を、不思議そうな顔で梓は見つめる。

「あ、あの! 現場はどこですか?」

 誠は男へと向き直ると、声を裏返しながら話しかけた。様子の可笑しい誠を見て、男は心配そうに、大丈夫っすか? と顔を覗き込んでくる。だ、大丈夫っす、と誠が返すと男は、ならいいんすけど、とどこか釈然としない様子だ。

 三人は男に案内されるがまま、お化け屋敷へと足を踏み入れた。明るい状態のお化け屋敷に入るのはこれが初めてだが、いくら明るいとは言え不気味な装飾品にあふれたそこはかなり気味が悪い。おっかなびっくり進む誠と対照的に、しげしげと眺める梓と玉藻を見て、男は不思議そうに首を傾げた。問題の地点に到達すると、じゃあ俺はこの辺で、と言ってどこかへと姿を消す。三人がぐるりと辺りを見回していると、件の長い髪の女がこちらを見てゆらりと立っていた。誠が小さく悲鳴を上げると、梓と玉藻は驚きの声を上げる。女は慌てた様子でこちらへと近づき、大丈夫ですか?! と前髪をかき上げた。

「あ、あれ? 幽霊じゃ、ない?」

 思わずそう呟いた誠を見て、女は不思議そうな顔をする。あの、失礼ですが、ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ? と言われ誠はバイトの男から依頼された、と告げる。女は頭の上に疑問符を浮かべ、そんな話は聞いていないと頭を振った。

「いえ、でも、確かに、彼はここでバイトをしていると言っていましたよ」

 男の名前を告げると、女はサーっと顔を青くする。あのその人は、つい最近亡くなっています、と女は三人に告げた。三人は思わず顔を見合わせる、あそこまではっきりと見えていた男の顔が、そう言われた途端思い出せない。

「元々体が弱かったらしく、ちょうどこの場所で亡くなっていたんです。リハーサル中の出来事だったので、お客様が知るところではありません」

 悲しげに笑う女を見て、三人はそれが本当のことだと信じざるを得なかった。霊感がない筈の誠は、ハッキリと自分の目で霊を見てしまったことに、それに何よりそれが依頼者本人だという事に困惑した。女はそんな誠を見て、彼はムードメーカーで、悪戯が好きだったんです、きっとお客様を驚かせたかったんでしょうね、と寂しげに笑った。

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猫人

はじめまして、猫人と申します。映画鑑賞、小説を書く事、絵を描く事、ゲームするのが好きです。見たり読んだりするのはオカルト関連ですが、執筆するのはSFと言うなんとも不思議な事がよく起こっています。ダークだったり、毒のある作品が大好きです。

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