昭和歌謡に魅せられて 『オトナ帝国』をもう一度〜昭和フォークのやさしさに埋もれたい〜

2026年6月、日本公開された韓国映画『君と僕の5分』(今のところ中規模程度の上映状況。未公開の地域でも、順次公開予定)。

2001年、韓国の中でも保守的な都市として知られた大邱(テグ)市を舞台に、内向的な転校生と、少し大人びた学級委員、このふたりの男子高校生の甘くせつなく痛みをともなった青春の日々を、globeの楽曲にのせて描いた傑作だが、その2001年、日本ではあるひとつのアニメ映画が話題を呼んでいた。

『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(原恵一監督)。

大人たちを“懐かしさ”のトリコにし、平凡な日常生活を奪おうとする秘密組織『イエスタデイ・ワンス・モア』とそれを束ねる男・ケン(チャコというパートナーがいる)。それと野原一家・かすかべ防衛隊との戦いを描いている。

これが「子供向き」の領域を超えた傑作に仕上がり、大人たちのハートをもわし掴みにし(もちろん、クライマックスの劇場内には、奮闘するしんのすけに向けた子供たちの「しんちゃーん、がんばれー!」という声援が響いていた)、リピーターも数多く発生し、上映そのものも比較的長い期間行われていた。

そんな、この『オトナ帝国』の劇中、大きな役割を果たしているのが、昭和の時代に一世を風靡したフォークソングたち。

中でもとりわけ、以下に挙げる3曲の名曲たちが、強い印象を残した。

☆白い色は恋人の色/ベッツィ&クリス(1969年)

北山修作詞、加藤和彦作曲

ハワイ出身の姉妹デュオ。シンプルで美しいハーモニーを聴かせ、いきなり大ヒット。来日するたび、姉妹どちらかがふくよかになっていたのも印象的。『オトナ帝国』では、大人たちを懐かしさのトリコにする組織「イエスタデイ・ワンス・モア」のリーダー・ケンが、自らの思いを語るシーンのバックに、フルで流れた。

☆ケンとメリー〜愛と風のように/BUZZ(バズ)(1972年)

80年代初頭には松田聖子さんなどのバック・コーラスも数多く担当した男性デュオ(現在は解散)が、どこか少しけだるい雰囲気をまとって歌い、ヒット曲となった日産スカイラインCMソング。このCMに登場した車種(C110型など)は「ケンメリのスカイライン」、CMロケで登場した北海道・美瑛にある木は「ケンとメリーの木」と呼ばれている。すっかり懐かしい雰囲気に包まれつつある街を、野原一家がクルマ(さすがに車種はスカイラインではない)で走行するシーンで流れた。

☆今日までそして明日から/よしだたくろう(吉田拓郎)

(楽曲発表は1970年、シングルカットは1971年)

エレックからソニーへ移籍して最初のシングル。ギターとハーモニカのみによる弾き語り。『オトナ帝国』終盤に流れる。このシングルのあと「結婚しようよ」が大ヒットし、吉田拓郎は一躍時代の寵児に。

これらの楽曲たちがかもし出す、日々のあわただしさを忘れさせてくれるような、えも言われぬやさしさ、そしてどこか懐かしい感情。

それは、それぞれの曲のヒット(発表)当時から映画公開の2001年までの間に発生したものであろうし、そこから現在・2026年までの間に増殖した懐かしさは、かの『クイズダービー』じゃないけどさらに倍以上となり、まさに「懐かしさのインフレ状態」とでも呼べそうな状況となっている……ものと思われる。

これら3曲のサブスク配信状況はちょっと微妙で、あったりなかったり……という感じなのだけれど、何のことはない、『オトナ帝国』の本編そのものは各プラットフォームで絶賛配信中なので、まずはそちらをごらんいただければ、感動と共にまるごと楽しんでいただけることだろう。

《おまけ》

『オトナ帝国』では未使用ながら、フォークのスタンダード・ナンバーとなり、合唱曲としても歌われ続けている名曲をふたつ、ここでご紹介しておこう。

◯あの素晴しい愛をもう一度/加藤和彦と北山修(1971年)

「白い色は恋人の色」の北山・加藤コンビによる自作自演ナンバー。

◯翼をください/赤い鳥(1971年)

そのハーモニーと演奏力で人気を集めた男女混成グループの代表曲。

解散後、紙ふうせん(現在も活動中)、ハイ・ファイ・セットのふた組に分かれて活動した。

(了)

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しんのすけ1965

昭和歌謡などの音楽以外にも、さまざまに興味を持っています。そういったあたりも、どしどし出していけたらいいなぁ………なんて、思っております。

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