いわゆる「夏といえば、」で思い浮かぶアーティストや楽曲は、おそらく世代や年齢、またその中でも細分化されていて、かなりバラバラになることと思われる。
自分が生まれた頃=昭和40年代はじめであれば「夏はベンチャーズ。あと加山雄三(「ある日渚に」、いい曲です)。ついでに橋幸夫のリズム歌謡路線?(「恋のメキシカン・ロック」、言わずと知れた名曲です)」、みたいな感じでほぼ言いきれると思うのだが、もちろんそういった大きな流れに身をゆだねつつも、ちょっと違うラインの音楽からも「夏っぽさ」を摂取していたような気がするのだ。
たとえばそれは、共にハワイアン歌手の顔をもつ日野てる子さんの「夏の日の想い出」(いわば「昭和の夏うた・ド定番!」)であったり、渚ゆう子さんの「長崎慕情」であったり(ベンチャーズとタッグを組んだ3曲めにあたるこの楽曲で、特に季節の描写は無いが、主人公の女性は港に停泊している外国船に魅せられ、ふと旅立ちたい思いにかられたりする)。
グループ・サウンズからは、堺正章さんと井上順さん、ムッシュかまやつさんはじめ才能の宝庫であったスパイダースの、主にビーチ・ボーイズのサウンドにインスパイアされた「サマー・ガール」。
70年代に入ってからだと、意外なところで内山田洋とクール・ファイブの、湘南を舞台にした「恋は終ったの」(誰かに棄てられたソンブレロが、浜辺にポツンと忘れ去られている…という描写が泣ける)、そして物悲しげな季節の移ろいに、愛の終わりを重ね合わせた「晩夏(ばんか)」など。
80年代にかかって来るが、テレサ・テンさんのシングル化されていないオリジナル曲「ジャスミン慕情」も、ライトでポップで、忘れがたい。
やがて80年代に入ると、大滝詠一さんの大傑作アルバム『ロング・バケイション』という、全体にリゾートのイメージで制作された作品が大きなヒットになるなど、ハッキリした形で「夏の歌を歌う」ことがビジネスとして成立するようになって行くのだが、そのライン……まさに「夏といえば、」のワードにピタッとハマるところからスタートしたのが、息長い活動を続けている、かのサザンオールスターズであろう(もちろん、先駆者としてのワイルド・ワンズ、後進としてのチューブの存在も忘れてはいけない)。
サザンといえば、ごく最近では「いとしのエリー」がNetflix作品『ガス人間』の中で重要な楽曲として使われ話題となったりもしているが、本稿のテーマに合わせて絞って行くと、やはりシングル曲ではない「海」「シャボン」、そして「涙のキッス」といったあたりについて少々語りたくなる。
ジューシィ・フルーツもカバーした「海」は、年季の入ったサザンの大ファンである爆笑問題のお二人も、特に思い入れのある1曲だそうで、個人的にも恋というもののビリビリくる感じを教わった、大切な1曲。
アイドル期の長山洋子さんもカバーしていた「シャボン」には、恋が終わった(失恋した)後のやるせなさが横溢しまくっていて、「会えるわけないのに、そこへつい行ってしまう」みたいな、そんなせつない感情をなぐさめてもらった記憶がある(2曲とも1984年のオリジナル・アルバム『人気者で行こう』に収録)。
そしてご存知「涙のキッス」(1992年のオリジナル・アルバム『世に万葉の花が咲くなり』ほか、各種ベスト盤にも収録)。
これはTBS系のドラマ『ずっとあなたが好きだった』の主題歌でもあり、主演の賀来千香子さん扮する女性の実家が仙台にある、という設定もあり、仙台でもあちこちでロケが行われた。
ドラマがスタートするかしないかの頃、自分は地元のラジオ番組に「涙のキッス」をリクエストし、採用していただいたのだけれど、その番組を担当されていたアナウンサーの方が
「さわやかなサウンドで。どんなドラマになるか、楽しみですね〜」
などと語り、ラジオのこちら側の自分も、のんきにそう思っていた。
登場人物のひとり、“冬彦さん”(演:佐野史郎氏)が、その本性を発揮しだすまでは………。(了)
※本稿は「ダイレクト・ライティング方式」により執筆されています。
