レアアース(希土類)は、スマートフォンの画面、電気自動車(EV)のモーター、風力発電機などに欠かせない17種類の希少な金属の総称です。製品の性能を劇的に高める特徴があるため、工業界では「産業のビタミン」と呼ばれています。
日本はレアアースのほぼ全量を国外からの輸入に依存しています。その中でも特に中国への依存が際立って高いのが現状です。
国内で採掘
2026年2月、日本の地球深部探査船「ちきゅう」が南鳥島沖の排他的経済水域(EEZ)内において、水深約5,600メートルの超深海からレアアース泥を船上へ連続して吸い上げる世界初の実証試験に成功した。大荒れの天候という過酷な環境下で純粋な泥の重量で約50トンのレアアース泥の回収に成功し、将来の商業化および日本の経済安全保障強化に向けた重要な一歩となった。
レアアース泥の成分分析結果
内閣府と海洋研究開発機構(JAMSTEC)が公表した南鳥島沖のレアアース泥の成分分析結果によると、回収された泥には希少価値の高い中重レアアースが全体の53.9%を占め、有害物質や放射性物質は検出されなかった。環境への悪影響がないことが確認されたこの結果を受け、プロジェクトチームは2027年2月の本格的な採鉱試験や商業化に向けた総合評価へ進む方針である。
採掘による日本側のメリット・デメリット
国産レアアースの採掘成功は、中国への過度な資源依存を解消して経済安全保障を強化し、ハイテク・自動車産業の国際競争力を維持する上で巨大なメリットをもたらします。環境負荷が低い世界トップクラスの埋蔵量を国内で自給自足できれば、日本は「資源を持たない国」から「最先端の資源国」へと変貌を遂げる契機となります。
国産レアアース開発のデメリットは、主に「採算性」「環境破壊」「精製体制」の3点です。
まず、水深6,000メートルの超深海から泥を吸い上げて本土まで長距離輸送するには莫大な費用がかかるため、陸上で安価に大量生産される中国産に対抗できず、ビジネスとして破綻するリスクがあります。次に、海底の泥を大量にかき混ぜることで独自の深海生態系を損なう懸念があるほか、泥の吸い上げによる海水の濁りが海洋環境へ与える悪影響も払拭されていません。さらに、レアアースは掘るだけでなく17の元素に分ける「精製」が必要ですが、この技術と工場は中国が世界シェアの約85%を独占しており、日本国内に高コストや環境規制をクリアした精製拠点をゼロから築くことは極めて困難です。
このように、民間企業の自由競争だけではコスト負けしてしまうため、今後の実用化には国による長期的な財政支援や法整備が不可欠となっています。
今後の見通し
短期的な見通し(2027年〜2028年)2027年:大規模な採鉱試験の実施1日あたり350トンのレアアース泥を安定的かつ連続して引き揚げる、より実戦的な大規模テストが予定されています。2028年:経済性の総合評価実際に引き揚げた泥を国内工場へ運び、元素を分ける「分離・精製」を実施します。ビジネスとして採算が合うかどうかの最終ジャッジが下されます。中長期的な見通し(2030年代以降)2030年代:本格的な商業化への移行民間企業が本格参入し、電気自動車(EV)やハイテク産業へ「国産レアアース」の日常的な供給を開始することを目指します。脱・中国依存の実現供給網の多くを握る中国への過度な依存から脱却し、日本の製造業が外交リスクに左右されない安定したサプライチェーンが構築される見通しです。
日本国民に与える影響
国産レアアースの商業化は、ハイテク製品や自動車の価格安定、次世代家電や精密医療機器の普及、さらには脱炭素化を通じたクリーンな社会の実現など、国民生活に多大な恩恵をもたらす可能性がある。一方で、深海採掘に伴う膨大なコストによる国家補助金(国民負担)の長期化の懸念も存在している。
