民間人が特別に訓練された国家の宇宙飛行士としてではなく、純粋な旅行者や一般の滞在者として宇宙空間に寝泊まりすることは、SFの世界の話ではなく、すでに現実のものとして何度も達成されています。
費用
アクシオム・スペース社などが運営する民間人の宇宙ステーション滞在ツアーは、1席あたり約5,500万〜7,000万ドル(日本円で約80億〜100億円以上)の費用が必要であり、超富裕層や企業スポンサーに限られています。この高額な料金には、スペースX社のクルードラゴン等による往復運賃、国際宇宙ステーション(ISS)での滞在費、食事代、および数ヶ月に及ぶ事前訓練の費用がすべて含まれています。
必須条件
民間人が宇宙に泊まるためには、プロの飛行士ほどの超人的な身体能力は求められないものの、いくつかの必須条件をクリアする必要があります。
まず重要なのが「メディカルチェック」です。心臓や脳などの重大な持病がないか、そして急激な重力変化や無重力という過酷な環境に耐えられる健康な身体であるか、厳しい医療審査が行われます。
次に「言語力」が挙げられます。宇宙船の操縦訓練や、国際宇宙ステーション(ISS)滞在中の安全なコミュニケーションのために、英語またはロシア語を高いレベルで使いこなせるスキルが絶対に欠かせません。
最後に「長期の訓練」が課せられます。数週間から数ヶ月間にわたり、打ち上げ時や帰還時のトラブルといった緊急事態への対処法、宇宙船の各種操作、無重力空間に順応するための専門的なトレーニングを徹底的に受け、すべての準備を整える必要があります。
これらの条件を満たすことで、初めて一般の人でも安全に宇宙へと旅立ち、滞在することが可能になります。
日本人の利用者
日本の民間人として初めて条件をクリアし、国際宇宙ステーション(ISS)に宿泊したのは、実業家の前澤友作氏とアシスタントの平野陽三氏の2名です。両氏は2021年12月、ロシアの宇宙船「ソユーズ」に搭乗し、12日間にわたる宇宙滞在を達成しました。プロの宇宙飛行士ではない日本の民間人が宇宙に寝泊まりしたのは、これが史上初の快挙でした。この宇宙旅行を実現するために、2人は大きな条件と背景をクリアしています。まず費用面では、2人分の旅費として総額約100億円と言われる巨額の資金を支払いました。また、事前の準備としてロシアの「ガガーリン宇宙飛行士訓練センター」に数ヶ月間滞在。事前の厳しいメディカルチェックに合格したのち、約100日間に及ぶ過酷な訓練に挑みました。そこでは無重力環境への適応訓練や、緊急時の脱出トレーニング、宇宙船の操作などをすべてこなし、必要な条件を完全にクリアして見事宇宙への切符を手にしました。
日帰り宇宙旅行もある
日帰り宇宙旅行(弾道飛行)ツアーは、総額で約7,200万〜1億2,000万円の費用がかかります。ツアーはアメリカ・ニューメキシコ州の「スペースポート・アメリカ」を拠点に行われ、数日間の事前訓練を経たのち、専用宇宙飛行機で高度約80〜85km以上の宇宙空間を目指します。
まとめ
かつては映画やSFの世界だけのものだった「宇宙旅行」ですが、いまや民間人が実際に宇宙に泊まり、日帰りで宇宙空間を楽しめる時代へと完全にシフトしています。100億円の宿泊ツアーから、1億円前後の日帰りツアーまで、まだ一般人には「高嶺の花」の金額ではありますが、民間企業の参入によってそのハードルは確実に下がり始めています。数年後にはさらに手頃な「宇宙ホテル」の計画も進んでおり、私たちの世代が生きている間に、誰もがパスポートを持って宇宙へ飛び立つ未来がすぐそこまで来ています。
あなたなら、もし宇宙に行けたらまず何をしてみたいですか?
