通信技術と言うと難しそうで退屈そうな話だと思うだろうか?私は最近ワクワクしている。
数年前までは5年後10年後の話だった技術が今年や来年の話になってきたからだ。
現代で皆さんはWi-Fiやスマホのモバイルネットワークを日常的に使っているだろう光回線を引いている家庭も珍しくなくなった。他にも電気のメーターも昔は従業員が検針に各家庭をまわっていたが今は電波で情報を取得している。
それらが無かった時代は調べ物をするのに図書館や書店に行ったり物理的な移動と時間が必要だったが、今では手のひらのスマホで何でも調べ物が出来るしChatGPTなど大規模言語に何でも相談できる。
20年くらい前はIT革命(情報技術革命)ブロードバンド(常時接続、広帯域ネットワーク)と良く言われたものだが今はさっぱり聞かなくなった。なぜなら既に革命期を終え日常の当たり前になったからだ。パソコン、インターネット、スマートフォンは珍しくなくなりSNSやメッセンジャーアプリで世界中の人と交流することが出来るようになった。

私が子供の頃はインターネットはおろか家にビデオデッキも無かったし原っぱで仮面ライダーごっこをしたり家族や近所の友達の話すくらいしか出来なかった。これがIT革命前の日常だ。
そこで最近では当たり前のWi-Fiだが昔は同一メーカーの製品同士でしか使えなかった。無線LANと呼ばれていた時代だ。今ではどこのメーカーのスマートフォンでもルーターでもWi-Fiは繋がるものだが、昔はそれぞれ独自の通信規格を採用していてNECの無線LANにはNECのノートパソコンしか繋がらないなど、とても不便だった。
それでOpenな共通規格としてWi-Fiを作ったのだ。よって今ではWi-Fiルーターを買う時にメーカーはバッファローでもエレコムでも良いしスマートフォンもiPhoneでもGalaxyでも良い。Wi-Fi規格に準拠していれば繋がって当たり前の時代になった。ルーターの調子が悪くなって買い替える時はバッファローからNECに変えても問題なく使える。必要な時に安くて評判の良い製品が選べるようになった。そうしてWi-Fiは一気に普及し身近なものになったのだ。

そして今OpenRAN vRANと言われるものが着々と進行している。例えるならモバイルネットワークのWi-Fi化だ。今まで携帯電話の基地局は特定のベンダー(メーカー)の機器を使って運用していた。vRANのvはVirtualつまり仮想化だ。仮想化とは物理的(ハードウェア)を、汎用的な機械を使いソフトウェアで実行して再現する。市販の電卓とスマホアプリの電卓のようなものだ。実際のボールでサッカーをするのとサッカーのビデオゲームで遊ぶのもサッカーの仮想化だ。

ちなみにRはRadioつまりラジオ(電波)の略だ。つまりスマホの電波、モバイルネットワークをオープンな規格に策定しソフトウェア化することで様々なベンダーの機器を調達可能にし汎用のPCなどを基地局に出来る。柔軟な設備投資が可能になるので利用者が少ないところには安価なミニPCを基地局にしたり都市部では高性能PCにすれば経費が節約できる。どこにでも高額な専用機器を設置しなくて良いと言う事は過疎地にも基地局を建てやすくなる。既存の基地局でもソーラーパネルとバッテリーを使って消費電力を削減したり災害時でも、しばらくの時間通信を確保する取り組みが行われているが省エネに特化した基地局を作ればソーラーパネルと寿命が長いバッテリーだけで電気が届かない場所で基地局を運用できるかも知れない。

汎用的な市販の部品なら修理も交換も楽だ。作業員の専門知識や訓練も大幅に削減できる。更にソフトウェア化されネットワークに繋がっているのでスマホアプリやWindows Updateの様に不具合や脆弱性の修正も遠隔で可能だ。通信障害にも、より迅速に対応できるだろうし、混雑状態の把握もしやすくなる。モバイルネットワークは他の電波と干渉しないように細かく調整されて居るが今後はソフトウェアでも対応可能になると、より迅速にきめ細やかに調整可能になるだろう。
特定のベンダーの制約を受けなければ、部品が調達できなくて予定通りに基地局が増やせないとか更新できないという事態も防げる。その時々に応じて必要な性能と品質を満たした汎用品を調達すれば良いからだ。
更に今進んでいるのはAI用の高性能GPUを基地局にして余剰な処理能力をAIのトレーニングや推論にも併用しようという取り組みだ。日本には無数の基地局が有るが、それらが分散して日本中に無数のAIデーターセンターが出来ると国内のAI開発も進むだろう。今はAI用のGPUは進歩が凄まじく新製品が出る度にAI性能が5倍やら30倍やらと飛躍的に向上する。電力需要やニーズに合わせてリプレースすれば日本の計算資源も飛躍的に増えるかも知れない。
また複数の通信キャリアで基地局を併用することも可能だそうだ。どのメーカーでもWi-Fiが繋がるようにドコモでもAUでもソフトバンクでも共用できれば更にコストは圧縮され電波も良く繋がるようになる。実は楽天モバイルがスマートフォン事業に参入したのは主にこの仮想化技術でコストダウンが見越せるため楽天の資金力でも通信キャリア事業が出来ると踏んで始めたとも聞く。その結果、各社も楽天モバイルの料金プランに対抗してサブキャリアの料金を見直したりしたので消費者にとっても良いことだ。
今の楽天の通信エリアでは乗り換えるのが不安な人も他社のサブキャリアでスマートフォンを安価に使えるようになったし、今後OpenRANで楽天モバイルの通信エリアも他社と遜色ないものになるかも知れない。
既に身近で当たり前のものになった通信技術だが、固定電話からスマートフォンに進歩したように今後もますます便利になっていくのだろう。