【平成生まれがフランダースの犬を見て号泣!?】

子供の頃不定期でアニメの名場面ランキングというものを放送するたびに「フランダースの犬」の最終回が紹介され、作品を見たことがない私はなんで感動するのかさっぱり分かりませんでした。それから20数年経った現在、日本アニメーションが50周年を迎えたことを記念してYouTubeで「世界名作劇場シリーズ」が配信される事になったので、なぜあの最終回になるのか見届けたいと思い見ることにしました。

※ネタバレ全開で行きますのでダメな人は回れ右で

ベルギーのフランダース地方の村に住む、絵を描くのが得意な少年ネロと祖父のジェハンおじいさんは貧しくも牛乳運びの仕事で暮らすなか金物屋に捨てられた犬パトラッシュを助けます。ネロの看病のおかげで元気になったパトラッシュは牛乳運びの仕事を手伝いながら一緒に暮らすことになりました。

ある日絵のコンクールが開催される事になり選ばれれば賞金が出る事を知ったネロはコンクールに挑戦することを誓います。ネロの絵を描くパネルを買うためにおじいさんは遅くまで働き、パネルをネロにプレゼントしますがその後おじいさんは限界を超えてしまい天国へ旅立ってしまいます。

おじいさんが亡くなり深い悲しみに暮れるネロでしたが、友達の励ましにより立ち直りコンクールの絵を描きはじめたのでした。そんなネロに更なる不幸が襲い掛かります。村の大切な風車小屋火事になり冬を越すために備蓄していた食料が燃え尽きてしまったのです。火事の夜出歩いていたネロに村人は不信感を持ち、ネロに牛乳運びの仕事を頼まないようになったのです。

仕事を探すネロでしたが子供に出来る仕事などなく、収入が無くなり家賃を払えなくなり頼みのコンクールも落選したネロは家を出ていきずっと見たかったルーベンスの絵が飾ってある教会に向かい、幸運にも絵を見るとが出来たネロはパトラッシュと共に天国に旅立つのでした。

【ネロ】

絵を描くのが好きで次第にルーベンスのような画家になることを夢見るようになる。おじいさんと2人暮らしで村1番のお金持ちの家のアロアと仲良し。優しく穏やかな性格。年齢は10歳。

【アロア】

村1番のお金持ちの家の子で少しワガママなところが目立つおてんば娘だが明るく優しい心を持っている。ネロが大好きでいつもネロと遊んでいる。

【ジェハンじいさん】

ネロの両親なき後ネロを引き取り二人暮らし。牛乳運びの仕事と薬草を売って生計を立てて暮らしている。ネロの画家になりたいという夢をかなえてやりたいと思っている。

【パトラッシュ】

金物屋に虐待されながら荷馬車を引かされていた老犬。食べ物も飲み物も与えられないパトラッシュは衰弱し、荷馬車を引けなくなり金物屋に捨てられてしまう。衰弱していたところをネロに救われ共に暮らす。

【コゼツ(アロア父)】

アロアのお父さんで村1番のお金持ち。貧しいネロがアロアと仲良くしているのが気に入らない。絵を描いているネロを怠け者だと思っている。風車小屋を管理している。

【エリーナ(アロア母)】

アロアのお母さんで穏やかで優しい性格。アロアと仲良くしてるネロを気にかけているが夫のコゼツにあまり強く言えない。

【ハンス】

コゼツの小間使いで嘘つき。貧しいネロを毛嫌いしており、ネロに会うたびに嫌味を言ってくる。個人的にはこの作品1のクズだと思います。

【ジョルジュ】

村の不良少年というような風貌だが情に篤い。ネロ達と川で遊んでいた時に溺れた弟をネロに助けられたことに深い恩を感じ友達となる。

【ポール】

ジョルジュの弟でいつもジョルジュにくっついている。今作の癒し枠。

【ヌレットおばさん】

ネロたちの隣に住むおばさんでネロとおじいさんとは仲が良い。ネロにとっては母親代わりの存在。

【ミシェルおじさん(木こり)】

木こりのおじさんでジェハンじいさんと仲が良い。ネロを自分の息子のようにかわいがっている。

【ノエルじいさん(職人)】

街を放浪する職人で、風車小屋の修理に呼ばれたことをきっかけにネロと出会う。ネロと関わった時間は短いがネロの才能を見抜き気にかけていた。

最初の1クールは主にネロとパトラッシュの出会いとネロの周りの人物との関係性の説明で、思いの外ネロに対して優しい人物が多くて驚きました今の感覚で見ると序盤はスローペースでモヤモヤすることもありましたが、「こんなにいい人たちがいるのになぜあの最終回になるの?」とますます気になり金物屋ハンスにイラつきながらも途中で視聴を止めることはなかったです。貧しくともお互いを思いやる優しさで心は豊かに暮らしているのだと感じました。

次の物語中盤ではネロのような怠け者にならないようにとコゼツがアロアを勉強のためイギリスに送ります。その後アロアが病気になってしまいアントワープの病院に入院することになるのですが、いつも元気いっぱいだったアロアからかけ離れた青白く曇った表情に胸が苦しくなりましたし、ネロに青白い顔を見せたくないアロアの乙女心も分かってしまい更につらかったです。お見舞いに来たネロがアロアに会えない代わりに村の風車小屋の風景の絵をアロアに送り、それをみたアロアが大好きな村の景色を懐かしみ涙を流すシーンでは思わず一緒に泣いてしまいました。

その後医者の勧めでアロアに必要なのは村の澄んだ空気と仲の良い友人だという事でアロアは自宅で療養するのですが、コゼツは医者に言われてもアロアからネロを引き離そうとするのでコゼツの頭の固さに呆れました。なかなか会えないネロとアロアですが、ネロがアロアのお見舞いのお花をアロアの家の玄関に置いて、受け取ったアロアがネロからだと大喜びしたり、コゼツに隠れて2人が好きな風車小屋が見える丘で会ったりする様子を見て恋愛物を見ているようなときめきを感じましたし、元気になっていくアロアに心が温まり思わず「アロアの特効薬はネロー!!」と声に出してしまいました。

物語後半、ネロはおじいさんを手伝いながらコンクールのための絵を描き始めます。おじいさんはネロの画家になりたいという夢を叶えてやりたい想いからネロに内緒で夜まで働き続け、ネロのコンクールのための絵を描くパネルをプレゼントします。いつも落ち着いてるネロが子供らしく飛び跳ねながら大喜びする姿をみて胸が温かくなりました。

しかしその後無理がたたりおじいさんは倒れてしまいます。病気が悪化したおじいさんは牛乳運びの仕事が出来なくなりネロが代わりに運ぶことになりました。

日に日に弱っていくおじいさんは自分は冬を越せないことを悟り自分のマフラーを刻んでネロの手袋に作り変えます。その後「良い絵を描くんだぞ」と言い残し最後にネロのスープを一口飲むと満足そうに天国へ旅立っていきます。おじいさんのネロに夢を叶えてやりたい思いとネロのおじいさんとずっと一緒にいたいという思い、2人の優しさと一緒には居られない悲しさに胸が張り裂けそうな思いになりました。手袋の時点で涙ぐんでしまいましたが、おじいさんが亡くなるシーンで涙腺が決壊しネロが泣き崩れるシーンで一緒に泣きました。涙と鼻水が拭いても拭いても出てくるのでスカスカだったゴミ箱が涙と鼻水のティッシュで半分埋まりました。

その後おじいさんが亡くなった後の話で友達のジョルジュポールがおじいさんの死を知った時、ジョルジュが「1番辛いのはネロなんだから俺たちは泣いたらダメだ」とネロの前で耐えてネロに隠れて2人が「おじいさんは俺たちにも優しかった大好きだった」と言って泣き崩れるシーンでまたまた涙腺が決壊。2話続けて声優さん達の名演技に心揺さぶられ泣き、気がつくと私の喉は渇き目の周りはパサパサになっていました。30年以上アニメを見てきた人間ですが、話数をまたいで泣いたうえに脱水症状を心配するほど泣いたアニメは「フランダースの犬」しかありません!

終盤、村の風車小屋が火事になり村の備蓄が燃え尽きてしまいます。ハンスがネロが出歩いていて怪しいという発言からコゼツはネロを犯人だと決めつけ「仕事を減らされた腹いせに火をつけた」と村人たちの前で叱ります。このシーンは腹が立ちすぎて「コゼツ!ハンス!お前らいい加減にしろ!ネロが燃やすわけないやろ!!」と思わず口に出して言ってしまいました。視聴者はネロが木こりのミシェルの代わりに風車小屋の部品に使う木を切った事、いつもアロアと遊んでいた丘から見える風車小屋を中心とした村の景色が大好きな事を知っているので本当に腹が立ちます。アロアの必死の反論も聞き入れてもらえず、村人はネロへの不信感コゼツに逆らえないことからネロに牛乳運びの仕事を頼まなくなりました。このシーンはあまりにも大人が汚くリアルで唖然としながら見ました。

子供が出来る仕事などなく、ネロはコンクールの賞金をあてにするしかありませんでした。大好きなおじいさんとパトラッシュの絵を描くネロ。仕事のないネロはコンクール発表のクリスマスの日までに家賃を払えなければ家を出ていかなければならなくなりました。

コンクール発表のクリスマスの日、ネロの絵は落選してしまいます。絶望しながら家に帰るネロに私も胸を締め付けられます。家を出ていく準備をし、村を出るネロとパトラッシュは雪に埋もれた道でコゼツの大金の入った袋を拾い、ネロとパトラッシュはそれをアロアの家まで届けに行きます。「金貨1枚でもあればお腹いっぱい食べられるのにネロはどこまで心が綺麗なんだ!?」と関心しました。お金を届けるとエリーナはお礼にスープを御馳走したいと言いますがネロはそれを断りパトラッシュをアロアに預け出ていきました。私はネロが人の好意を受け取らなかったことにモヤッとしましたが、ネロが生きようとしていないからだと理解しました。ここでアロアとエリーナが引き留めていれば結末は違ったかもしれない…。

その後落としたお金を探しに出ていたコゼツとハンスが帰ってきて絶望しているとエリーナがコゼツが落とした大金を差し出します。アロアが「お父さんが嫌いなネロが届けてくれたのよ」というとコゼツは後悔します。そこに職人のノエルじいさんがやってきて風車小屋の火事はコゼツとハンスが油を差さなかったことで摩擦が起きて火事になったことを説明、ノエルじいさんが2人を怒鳴りつけるシーンはスカッとしました。コゼツはネロに謝罪と礼をしたいと言いみんなでネロを探し始めます。みんなでネロを探す中パトラッシュは最後の力をふり絞りネロの下に向かいます。偶然にも開いていた教会に入るとパトラッシュはネロと最期を共にし天国に旅立ち物語は終わります。

結論を先に言うと感動の名場面と言われ語り継がれたフランダースの犬の名場面「ネロとパトラッシュがルーベンスの絵を見て天国に行く場面」私は感動しませんでした。なぜならネロに夢を叶えてほしかったおじいさんとネロと親しかった残された人たちが可哀想だからです。老犬であるパトラッシュ目線だと主人であるネロと一緒に天国に行けてハッピーエンドなのは分かりますが、最終回の周りの人達とネロのすれちがいが悲しすぎて感動できませんでした。せめてネロが亡くなった後の登場人物たちの描写があれば少しは救いがあったと思います。

※コゼツとハンスがネロに直接謝罪する場面は絶対ほしかった。

特にアロア、ジョルジュ、ポール、ヌレットおばさん、ミシェルおじさんが可哀想すぎるので順番に語ります。まずはアロア。彼女がどれほどネロを好きか最終回まで見た人間には良く分かります。ネロを探すシーンでは吹雪の中で全力でネロを呼ぶのが痛々しいです。あの声にアロアの気持ちが全部詰まっていると思います。

ジョルジュとポール兄弟はコンクールに落選したネロを励ますためにネロの家にやってくるもネロが出ていったあとで、みんなでネロを探しているときは兄弟で泣きながら村の鐘を鳴らしているシーンは胸が苦しくなりました。

ヌレットおばさんは物語中盤までネロを息子のようにかわいがってましたが持病の神経痛から娘夫婦と暮らすことになり引っ越します。最終回ではネロたちとクリスマスを過ごすために帰ってきたがジェハンおじいさんの死を知らされ泣き崩れます。アニメでは描写がありませんでしたがネロが亡くなったあと深く悲しんだと思います。

木こりのミシェルおじさんはジェハンおじいさんが亡くなってからミシェルおじさんはネロと暮らす約束をしていましたがネロはコンクール発表まで待ってほしいと言いました。しかしネロはコンクールに落選したことで絶望し、早々に家を出てしまいミシェルおじさんとの約束を破り亡くなります。

私はネロの選択を愚かな選択だと思います。手を差し伸べてくれる人がいたのにその親切を受けず、おじいさんの夢を叶えてほしいという願いに泥を塗ったと感じました。なぜならネロの家にみんなが集まりネロの手紙を読み終えたシーンでコンクールの審査員の1人がやってきてネロの才能を高く評価し、絵の勉強を支援したいと言っていたからです。ネロは生きていれば画家になりたいという夢を掴みとれたのです。しかしネロが全部悪い訳ではありません。この作品を大人目線で見ると、卑怯で汚い大人達が1人の少年を追い詰め「生きる力」を奪い間違った選択をさせた物語だと思います。

ネロの絶望を見てアニメだけど他人事ではないと感じました。自分も肉親を亡くした上に自分の夢に挑戦するも落選し、生きるために仕事を探すも仕事が見つからないなんてことになったらネロのように生きようと思わなくなると思います。

自分も精神を病んだ人間なので分かるのですが、終盤のネロってうつ病などの精神病の人が無理をして普通に振舞っているような危うさを感じるんですよね。ネロの生き方を見て人を恨まず思いやりある心の綺麗さを見習いたいと思うと同時に、追い詰められた時にネロと同じように人の好意を受ける気持ちをなくし愚かな選択をして周りの人を悲しませ幸せを掴めないという事にはなりたくないです。就労支援を利用する上でスタッフさんや相談員さんが差し伸べてくれた支援の手をしっかり取りたいと思いました。

感情が揺さぶられすぎて長文となりましたがここまで読んでいただきありがとうございます。「フランダースの犬」見たことがない方はU-NEXT、FOD、Dアニメストアで見れるので是非見てみてください!

  • 3
  • 0
  • 1

おすすめのタグ

沙鞠

ゲーム、漫画、アニメ、カラオケ好きなのでそれらに関するコラムや、ハンドメイド関係、精神病や事業所で体験したことを伝えられれば良いと思います。

作者のページを見る

寄付について

「novalue」は、‟一人ひとりが自分らしく働ける社会”の実現を目指す、
就労継続支援B型事業所manabyCREATORSが運営するWebメディアです。

当メディアの運営は、活動に賛同してくださる寄付者様の協賛によって成り立っており、
広告記事の掲載先をお探しの企業様や寄付者様を随時、募集しております。

寄付についてのご案内