AIが東京大学の合格点を出したことについて

先日2025年の東京大学の入試問題をアメリカ製のAIと中国製のAI。大規模言語モデルが合格点を出した。

しかも日本最難関と言われる東大理科三類を合格だ。もちろん1類も2類も文系も合格。

これがいかに凄いことか解説すると、元々2年くらい前から日本とアメリカの医師国家試験とアメリカの司法試験には既に合格するAIは有ったのだ。医師国家試験は医療に関して、司法試験は法律に関してジャンルが限られるし情報も多い。

しかし日本の大学の試験を日本語で突破するのは理由が違う。大学共通テスト(旧センター試験)も突破している。

大学共通テストは「国語・地理歴史・公民・数学・理科・外国語・情報の7教科21科目で構成され、この中から、最大9科目を受験でき、受験生は、志望大学が指定する教科・科目を選択して受験することになる」

つまり幅広く深く理解していないと合格できない。以前、東大卒の会社経営者の方から聞いた話が「東大の入試は、そんなに難しい問題は出ない。高校生レベルの問題しか出ない。ただ高校生が勉強することを、どれだけ深く広く正しく理解してるかが問われる」と話していた。

ちなみにアメリカ製のAIは、およそ90%英語で訓練している。AIの企業や団体によるが、日本語は0.3%くらいしか学習データに入っていなかったりする。そして中国製のAIは英語と中国語が半分ずつ。つまり実は東大よりアメリカやイギリスや中国の難関大学のほうが得意なAIなのだ。

更に東大の過去問を訓練したわけでも無い。ゼロショット(特定タスクに対する追加学習なし)で東大理科三類で合格点を出したのだ。

しかも受験方法も紙の答案用紙を画像認識で人間と同じ用に日本語の問いやグラフや表を読み取って解いたそうだ。しかも、かかった時間も受験時間以内。科目によっては数分。

受験生で例えると英語と中国語が得意な海外の学生が東大の過去問も解かず、赤本も買わず、つまり受験勉強せずに、いきなり日本で大学共通テストと東大を受けて全学部に受かったようなものだ。

しかもアメリカ製のAIは有料のモデルなのだが、中国製のAIは誰でも無料で利用できるモデルだ。どちらのモデルも数ヶ月前のモデルなのだが、今日現在では既に、より高性能な新しいモデルが公開されている。

今の学生さんは、そんなに凄いAIが有るのだから勉強しやすくなるだろう。授業で良くわからなかったところをAIに何度でも聞いてわかるまで復習すれば良いのだ。しかし、みんなが偏差値70になることは出来ない。結局その中でも競争と差が生まれてしまう。

そして今のAIはIQ136相当だの、あらゆる分野で博士号レベルの知識だの凄いことになっている。そうすると真面目で勉強が出来る人間の価値は相対的に下がる。特定分野を除いてAIの知識に勝てる人間はいないし、その特定分野も時間の問題で克服していくだろう。

そしてAIの仕組みやハードウェアは日々改良され推論コストは下がり人間の生産性や知能や知識の価値は相対的に下がり続ける。最近はAI研究者の間でも真面目にこういったことが議論されている。人類はAIで滅亡するとまで真面目に主張する研究者も居る。

そうすると真面目に勉強する意味ってなんだろう?良い学校を卒業したり、たくさん知識を蓄えることの価値ってなんだろう?という疑問が生まれる。人間の価値ってなんだろう?

どんなに勉強しても知識量はAIに勝てないし、今後、数年で人間には理解できない高度な推論で人類の課題や、社会問題、新たな科学技術まで生み出してしまうのだろう。

個人的には、それは数字やデータに出来ない”人間の感覚”だと考えている。

面白い、楽しい、美味しい、嬉しい。これらは数字やデータに出来ない。例えば塩分何グラムは測れても、それは美味しいではない。

今後は人間の喜怒哀楽や感想、気持ち。そう言ったものが人間が人間であることの意味を見出していくのだろう。

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半導体、機械学習、深層学習、AI技術などテクノロジーの調査、考察、見解を発信します。

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