SUCCESS NET NOVEL #06
2025年8月 なろう等のネット小説で諸々成功した作品 愛及屋烏
片田舎のおっさん、剣聖になる
~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~
前述
ネット小説全盛期は過ぎた感はあるが、戸口は広がり、
作品人口は拡大を続け、玉石混合の魔境である。
単純に出版小説としての成功、コミカライズ、アニメ化と成功のポイントは
多岐に渡るが、その中でも特に全局面的に成功した作品を紹介したい。
自叙
なろう小説界隈に稀にある、
コミカライズでSSRを引いて怪物コンテンツ化のパターン。
コミカライズが良すぎて、アニメの評価に影響が出た。
それでも一期終了後、二期が発表されるぐらいには評価されている。
概要
『片田舎のおっさん、剣聖になる』は、佐賀崎しげる氏が「小説家になろう」に連載している小説。イラストは鍋島テツヒロ。
中世ヨーロッパ風の世界が舞台の所謂「おっさんもの」。 片田舎で剣術師範をしている主人公が大成した弟子達と再会し、彼らと交流していく中で大きな陰謀や事件に巻き込まれていく王道のヒロイックファンタジー。
主人公のベリルは作中世界屈指の実力者なのだが、上級クラスの魔物は全体的に結構強いので、人間相手ならともかく魔物に対しては単騎無双とはいかず、それ故の弟子や戦友たちとの共闘シーンも見どころ。
小説家になろうでの連載開始からすぐに好評を得て、スクウェア・エニックスの版元で書籍化された。既刊9巻(2025年3月時点)。
その後、秋田書店がコミカライズの権利を獲得し、乍藤和樹氏を作画担当に抜擢して漫画になった。 (第1話は「どこでもヤングチャンピオン」2021年9月号に掲載)。
西洋剣術を下敷きにした躍動感とリアリティ、緊張感に満ちた「先読み」描写が兼ね備わった殺陣アクションに定評があり、主人公のベリルは、書籍版の序盤ではとても軽いキャラクターだが、漫画では最初から剣術の求道者として描かれている等の違いもある。
その他にも、書籍版とはキャラクターの設定や描写の追加と変更など、かなり手を咥えられており、原作ではあっさり倒された様な場面でも、バトル描写が追加され、諸々盛られている。
特に原作2巻のミュイ編からは、敵サイドの面子にも一人ひとりキャラ付けと描写ががっつりと追加、ベリル以外のキャラクターにもそれぞれ見せ場が用意されている等、めちゃくちゃに盛られまくった。 話の大筋こそ同じだが最早、別物と言っていい状態になっている。
昨今のメディア展開したファンタジー小説にはよくある事例とはいえ、販売売上を基準に見た場合に漫画版の支持層が作品のほぼ9割近くを占める、という大きな偏りが発生する程である。漫画版の主人公ベリルの才能と戦闘描写は、後述にもあるがかなり得体の知れない存在としてクローズアップされている。
2025年春にテレビ朝日系列にテレビアニメ化された。漫画ではなく原作小説を元に作られているが、原作には無いシーン等も追加されている。 転じて、漫画版で盛られた戦闘描写や演出はアニメには無い。
コミカライズ版の乍藤和樹はアニメにはノータッチだが、漫画の方でビジュアルが初出のキャラがアニメに出る回は、スタッフロールにクレジットされている。
なお、アニメ版のプロデューサーはインタビューで、アニメ化の企画が始まったのは原作が3巻、漫画版が1巻発売された頃だと述べている。
なろう系作品に初期から親しんできた視聴者の年齢が、30代~40代に差し掛かりつつある事を踏まえて、「おっさん主人公の成り上がりストーリー」である本作に着目したという。
当時の漫画版は、上記の作風は変わらないが、原作から大きく乖離しておらず、アニメ化が発表された時程の人気は流石になかったので、「漫画版の人気によってアニメ化が実現した」という見方はおそらく誤りである。
このような見方が生まれてしまったのは、アニメ化が正式に発表されるまでの間に漫画版の人気が原作と比べて大きくなりすぎてしまったからと思われる。
あらすじ
レベリス王国の片田舎。 ビデン村に代々続く剣術道場の師範、ベリル・ガーデナント。
剣術を教える事に才能があった彼の元には、立地の割には数多くの門下生が入門し、また卒業していった。
現在の生活に満足し、このまま村で一生を終えるのだろうと思っていたある日。
卒業した弟子の一人アリューシア・シトラスが訪ねてくる。
王家直轄のレベリオ騎士団の団長にまで上り詰めたアリューシアは、恩師であるベリルに団の特別指南役になってほしいと告げた。
余りに突拍子のない話に困惑し、固辞したいベリル。
しかし、アリューシアは事前に国王御璽付きの任命書を用意していた為、ベリルは断る事も出来ず、彼女と共に首都バルトレーンに向かう事に。
バルトレーンの人々との新たな出会いや、かつての弟子達との再会は地味だったベリルの人生を大きく変えていくのだった。
to be next page. 06-2 https://no-value.jp/column/129117/