あらすじ
映画「糸」は、中島みゆきの名作「糸」をモチーフにしたラブストーリーで、平成年生まれの高橋漣と園田葵が、13歳で出会い、別れ、そして平成の終わりに再会するまでの18年間の物語を描いています。物語は、北海道で育った漣(菅田将暉)と葵(小松菜奈)が13歳で出会い、初めての恋に落ちることから始まります。しかし、葵は養父からの虐待に耐えかね、母親と共に北海道を去ります。漣は葵を探し、駆け落ちを試みるも、警察に保護され、二人は引き離されてしまいます。それから8年後、漣はチーズ工房で働き、葵は東京でホステスの仕事をしています。友人の結婚式で再会した二人は、それぞれの人生を歩んでいることを認識しつつも、運命に導かれるように再び惹かれ合います。さらに10年後、平成最後の年となる2019年。運命は、再び二人をめぐり逢わせようとします。この映画は、単なるラブストーリーではなく、平成という時代を背景に、人々の出会いと別れ、そして絆を描いた壮大な物語です。漣と葵の運命的な愛の軌跡を、美しい風景と共に紡ぎ出します。
感想
中島みゆきのヒット曲「糸」と言えば、「縦の糸はあなた横の糸はわたし織りなす布はいつか誰かを暖めるかもしれない」という歌詞が真っ先に出てくる。となると、2人が織りなす布(物語)を連想する。本作では、織りなす(物語)が主人公の「2人」だけでは成立しないところに意外性がある。糸と比喩される人は何人も存在し、縦の糸が誰で、横の糸が誰なのかという判断は、本作を見る者に任せる形になっているが、想像以上に後味が良い。劇中では、中島みゆき「ファイト!」が度々出てきて、みんなが励まし合う人間らしいドラマになっている。菅田将暉と小松菜奈は、平成生まれの高橋漣と園田葵を演じており、2人の出会いのシーンは特に印象的で、その後、再会するたびに見る者にとっては心が揺らいでいく。本作は、平成から令和まで「短いようで長い」スパンで描かれているところも見所で、時間の流れで変りなされた糸(物語)に感動させられる。葵の前向きである強さと女性らしい引きのシーンを演じた小松菜奈は、少し今までの役柄とは違う分、賞を狙える女優の1人だと感じられました。