４万３千の中の大当たり

　私はよく持っていると言われる。良い意味でも悪い意味でも・・。４万３千回スクラッチを削ったら大金を手に出来るかもしれない。でも数年前の４万３千・・。これは東京ドームの観客数である。
　あるビール大手会社主催の野球のOBドリームマッチが行われ私はドームの一階席に座っていた。有名女優さんが始球式を行いエンターテイメント要素の強いその試合を私も夢中になって観戦していた。試合も９回１アウトまで進み、満面の笑みでグラウンドを眺めていたらファールボールが飛んできた。
　何となく両手を前に出しそれをキャッチできると感じた瞬間頬骨のあたりにガーンと衝撃が走った。痛みが無かったので大丈夫、大丈夫ととんできたスタッフに告げたら周りのお客さんの顔が青ざめていく。急いで医務室に連れて行かれると、医者らしき人がいて「鏡で顔を見て下さい」と言われた。
　鏡にはパンパンに膨らんだ顔面が映っていたので、急いでタクシーで病院に運ばれ眼窩底骨折をしてないか検査した。不幸中の幸いで骨に異常はなかった。病院を出て水道橋までタクシーで行きそこから電車に乗り、夜分遅くに母に電話で状況を伝え、家に帰ったのは日付をまたいでいたかもしれない。母が夜中の２時頃保冷剤をたくさん持って一人暮らしの私の所に来てくれ、とにかく冷やした。
　翌日からはとにかく暇さえあれば冷やす。それを繰り返した。頬のあざは段々上に移動していき白目が赤くなってきた。月日は流れ３か月後位にはなんとか元の顔の状態に戻る見込みが立った。横浜スタジアムへは山の数ほど観戦に行き、一度もボールに当たったことがないのに人生で数回しか行ってない東京ドームで何故。
　ちょっとずれていたら失明していたかもしれない。OBとはいえ元プロ野球選手である。「ファールボールにご注意下さい。」と球場ではよくアナウンスがある。
　一球入魂という言葉がある。投げる方も打つ方も魂のぶつかり合い。つまり魂がこもっていてもボールは魂でキャッチしようと思ってはいけない。ボールが飛んで来たらすぐによけよう。