あの人は今⁉(第二編)

「楽天イーグルスの問題児」

と呼ばれた男

Todd Linden(トッド・リンデン)

ライナス

ヤンキースの3A在籍中に

イーグルスからオファーを受け、

楽天に入団することに!

 2009年、リンデンはニューヨーク・ヤンキースとマイナー契約を結び、スプリングトレーニングに招待選手として参加しました。しかしここでもロースターに残ることは出来ず、マイナー契約となり、3Aで燻ぶった生活を送っていました。

 しかしここで運命のオファーが届きます。当時貧打と長打力不足に悩む日本の東北楽天ゴールデンイーグルスからの獲得オファー[注1]が届いたのです。

 リンデンはそのオファーを承諾。2009年6月12日に東北楽天ゴールデンイーグルスと契約を結んだことが報じられ、6月16日に楽天が契約合意を発表し、晴れてここに「楽天・リンデン」が誕生します。

トッド・リンデン選手との契約合意について – 東北楽天ゴールデンイーグルス

 因みに入団時の触れ込みは「走攻守の三拍子が揃い、長打力も兼ね備えた好選手」というものでした。

トッド・リンデン選手、福盛和男選手入団記者会見 – 東北楽天ゴールデンイーグルス

・[注1]  なお、リンデンについては阪神タイガースも獲得を検討していたそうなのですが、メンチの獲得によって話は流れたようです。

来日直後から活躍!

しかしその一方で弱点と

素行の悪さも明るみに…。

 こうしてリンデンは7月2日の北海道日本ハムファイターズ戦にて一軍に初出場し、当時からエースとして活躍していたダルビッシュ有から2安打を放つと、7月7日の千葉ロッテマリーンズ戦では来日初本塁打、初打点を含む4打数4安打3打点の活躍をします。守備面では入団直後は右翼手で起用されていましたが(こういう場合の起用は選手の基本的な守備能力や肩の強さ、送球などのプレー判断の速さや正確さ、野球IQの高さを測るために行われることが多いです)、6試合目から左翼手に固定されます。7月16日の埼玉西武ライオンズ戦では西口文也から初回先頭打者本塁打を放ち、7月19日のオリックス・バファローズ戦では来日初のサヨナラ安打を放ちました。

L1-3E 0716 楽天・リンデン選手 ヒーローインタビュー

20090719 ExBs HEROINTERVIEW

 しかしその一方で、「問題児」と言われた素行の悪さが顔を出し始めます。7月20日の福岡ソフトバンクホークス戦で、見逃し三振の判定に激高したリンデンは福家英登球審にスラングと暴言を吐いてしまいます。恐らく日本人だから英語が分からないと思って高を括っていたのではないでしょうか。しかし福家審判は審判研修で留学していた経緯を持ち、通訳なしで英語が話せる人物であり、鞘当てをするには相手が悪すぎました。結果として福家球審はリンデンのこの行為に対し退場宣告を下し、リンデンは来日初の退場処分を受けました(リンデンは後日、このことに対し、判定に不服があったので抗議をしただけと語っています。)。この件で、日本プロ野球組織の加藤良三コミッショナーは厳重注意と制裁金5万円を科しました。

 更に8月2日のロッテ戦で、相手バッテリー(唐川侑己里崎智也)の執拗な内角攻めにたまらず激高します。

ロッテ戦において唐川投手の度重なる内角攻めに激高し

「二度目だぞ!」と怒声を上げるリンデン。このことが後に

里崎をバットで報復攻撃する「伏線」となった。

6回表の第3打席の初球でセーフティバントの構えから引いたバットの先端を里崎のマスクに掠めさせたことで里崎選手が激怒。当初は素知らぬ顔をしていたリンデンでしたが、里崎選手が英語で怒りの声をまくしたてると一緒に激高して双方ともに一触即発、これで両チーム乱闘寸前の事態となりました(その後リンデンは空振り三振。)。

 無論リンデンのこの行為は悪質な故意の報復行為とみなされました。里崎選手は引退した後に自身のYouTubeチャンネル等においてこの時のことを語っています。

一触即発!リンデンとの勝負!リック・ショートの接触プレーを語る【外国人スカウト編成総チェック】楽天編

テレ朝POST » 「バットで殴られ…」元ロッテ捕手が外国人選手から受けた衝撃ラフプレーを激白「絶対にわざと」

里崎マスクを小突かれる リンデン

【元ロッテ里崎捕手】完璧なリンデン封じ!最高! #里崎 #里崎智也 #shorts – YouTube

 さらに悪行はこれで収まることはなく、10月6日のロッテ戦で、中谷仁選手のスクイズ失敗により三本間で挟まれた際に、相手三塁手福浦和也のグラブを肘打ちしてボールを弾き飛ばし守備妨害を宣告されました。

ロッテ戦で相手選手の送球を肘打ちで妨害するリンデン。

首脳陣の予想以上に活躍するも

それを上回る素行不良で

指揮官と一触即発に!

 このように完全に「問題児」としての振る舞いが続出していたリンデンですが、それでもしっかりと結果は残していました。

 9月26日の西武戦(西武ドーム)で岸孝之投手からフェルナンド・セギノール、リンデン、中谷仁の球団史上初となる3者連続ホームランを記録しました。

【イーグルス史上初】セギノール・リンデン・中谷3者連続ホームラン

絶好調リンデン 2打席連続の11号ホームラン! L-E 9月26日

L6-10E 9月26日 4安打4打点の活躍!リンデン選手のヒーローインタビュー

 因みに7番打者から9番打者の3者連続ホームランは、2003年9月14日の福岡ダイエーホークスフリオ・ズレータ出口雄大鳥越裕介)以来、プロ野球史上2度目の珍記録となりました。

 当時の楽天は選手層がまだ薄く(現在も充実している、とは言えませんが)、外野陣もその例外に漏れることなくほぼ日替わり状態であったため、問題行動を起こしながらもしっかり結果を出していたリンデンを球団、指揮官側もスタメン起用しながら使わざるを得ない状態となっていました。

 しかしこの頃から他球団がリンデンの弱点や対策を練り上げ始めます。リンデンは両打席共にインローのクロスファイア気味のストレートに対しては滅法強いのですが、インハイなど苦手なコースや弱点に関しては平然とバットを動かさずに追い込まれたり、アウトローの落ちる球や逃げる球に(特に右打席)対して強引に強振して空振り三振を喫するケースがどんどんと目立つようになっていきました。

 そのことに関して当時の野村克也監督やコーチ陣などが色々と指導や助言を行うも、当のリンデンは全くの馬耳東風状態。野村監督恒例のミーティングに関しても公然と欠席するなど、監督、コーチ陣との確執

が日に日に強まっていきました。

 そんな野村監督との関係が決定的に悪化した一件が勃発します。この日は西武戦で相手投手はサウスポー帆足和幸投手。来日当初から決め球のパームボールにリンデンは全くと言っていい程に対応が出来ず、空振り三振を連発し、ノムさんから「扇風機」「カモ」とボヤキのネタにされていました。恐らく通訳を介してその言葉もリンデンの耳に入っていたでしょう。

 さすがに見かねたノムさんがネクストバッターズサークルに向かおうとするリンデンに対してこう一言言いました。

「お前、そっち(右打席)じゃ勝負にならんやろ。左(打席)で入れ。」

 ノムさんなりにリンデンを思いやり、少しでも結果を良い方向に導くためのアドバイスだったのでしょう。しかし、リンデンはこのアドバイスに激高し、

「お前!ふざけるな!それで指揮官のつもりか⁉」

とブチ切れ解答をしてしまいます。リンデンはそれでも収まらず、自分を冷ややかに見つめるコーチ陣に対しても、

「こんな事を言う奴の言う事を、お前らは黙って聞いているだけか⁉」

と声を荒げます。スイッチヒッターにとっては投手の投げる手の打席に立つのはかなりの屈辱だそうで(それじゃスイッチヒッターをやっている意味がありませんからね)、ましてやそれが問題児のリンデンであればなおの事。リンデンにとっては自身の野球人生を否定されたように受け取ったとしてもあながち間違いではないと筆者は思います。

 とりあえずその場はコーチ陣のとりなしで何とか収まり、リンデンは憤懣を抱えながら右打席に立ちますが、結果は凡退。悔しさを出しながらベンチに戻るリンデンに対し、ノムさんは冷ややかな表情でこうボヤキます。

「だから言うたやろ。人の言う事には黙って従え。」

 この一言に堪忍袋の緒が切れたリンデンはロッカールームに引きさがり、自分から選手の交代を申し出たそうです。これもコーチ陣が必死にとりなして、リンデンは最後まで出場しましたが、野村監督及びコーチ陣や首脳陣とは決定的と言っていいほどの溝と確執を抱えてしまいました。

 その問題が看過できない事態となったのが10月10日の日本ハム戦でした。この試合の先発はこれもリンデンが苦手としていたサウスポーの武田勝。相性を考えてノムさんからスタメン落ちを伝えられたリンデンは、ロッカールームから引き上げる際に覚えたての日本語で、試合後の記者会見で報道陣の取材を受けていたノムさんにこう伝えます。

「アリガトウ。」(外してくれて。)

 完全な嫌味と言える発言にノムさんは唖然とします。

その直後に宥めようとする橋上秀樹ヘッドコーチに対し、

「俺を外すとは何事だ!クレイジーな奴らめ!」

と侮辱の言葉も連発したため、チームは一時騒然とします。その後に6点ビハインドの9回表に代打起用されました。その際、ノムさん及びコーチ陣に対し、

「俺に6ランホームランを打て、という事か!」

 とまたしても皮肉交じりの暴言を放ちます。この発言に対してついに野村監督はリンデンに見切りをつけました。収まりが付かないリンデンは橋上ヘッドコーチに対して再び、

「クレイジーなクソッたれどもめ!」

 とさらなる暴言を放ち、これには現場側もリンデンに対して匙を投げる方針を撮らざるを得なくなりました。フロント側の判断を待つ前にノムさんの独断で一軍の出場選手登録を抹消するという決定を下したのです。その後ノムさんはリンデンに対して、

「もう人間失格。許すわけにはいかない。顔も見たくない。」

と選手としての三行半を突きつけたのです。

https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2009/10/12/articles/K20091012Z00001620.html

第三編に続く)

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ライナス

ライナスと申します。読書や日本の歴史、アイルランドやスコットランドの音楽が好きなので、皆様に紹介して共有できればと思っています。

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