あの人は今⁉(第三編)

「楽天イーグルスの問題児」

と呼ばれた男

Todd Linden(トッド・リンデン)

ライナス

謝罪の服装がまさかの

「Tシャツ・短パン・サンダル」の

前代未聞の3点セット!結果として

ノムさんの怒りに火に油を注ぐ結果に

…。

 こうしてリンデンは球団創設初のクライマックスシリーズのファーストステージに出場が出来ないという事態に見舞われることになりました。このノムさんの独断の登録抹消に対して当時の三木谷オーナーや島田球団社長は激怒。この行為に対して監督の続投が白紙になったと言われ、その風聞を聞いたノムさんも「だったらどちらもクビにしろ」と応酬するという事態を引き起こします。

 渦中のリンデンは後日ノムさんの元へ謝罪に赴きましたが、その服装が物議を醸す事態となります。その恰好がTシャツ、短パン、サンダルという、謝罪に訪れた人物とは到底思えないドレスコードで訪れたのです。

野村監督に謝罪に訪れたリンデン。

Tシャツ、短パン、サンダルという

「まさか」のいで立ちである。

 これだけでも門前払いをされても文句は言えないのですが、球団関係者の必死のとりなしによって、何とか会談はなされることになります。

 しかし、リンデンは完全に「来てやった」と言わんばかりの態度だったそうです。そもそもリンデン自身が自身と監督双方が着席した際に、開口一番こう切り出したと言います。

「大体そもそも、『クレイジー』という言葉の捉え方が日本と米国で違うんだ。貴方が言葉に過剰反応し過ぎている。貴方の問題だ。」

 う~ん…。「上から目線」というか…。少なくとも、「謝罪に訪れた側」の言行とは、到底言い難いものではありますね。完全に「喧嘩腰」の態度と言われても仕方ないと言えます。後にノムさんは著書の中で、この会談について語っています。

「服装だけでなく、態度もこちらを舐めきっていた。ふんぞり返って、ズボンのポケットに手を突っ込んでいた。反省の色なんかないよ。何より目が謝っていなかった。だから俺は言ってやった。『なんや、その眼は。俺を睨みつけて。』って。そしてこう付け加えたよ。『日本の言葉にこう言うのがある。子を見れば親が分かる、親は一体何をしている、ってな。』そしたら余計怒っちゃってね。」

野村克也著「あ~ぁ、楽天イーグルス

(角川oneテーマ21)より

 しかし、この言葉に両親や自身が父親の立場のリンデンは両親や自身が侮辱されたと感じ、こう逆上します。

「それはどういう意味だ!俺が父親失格だとでも⁉それとも俺の両親がろくでなしだとでも言いたいのか⁉」

 二人の会話は全くかみ合う事は無く、ノムさんはこのリンデンの謝罪を受け入れることなく、完全に二人は物別れになりました。

https://www.nikkansports.com/baseball/news/p-bb-tp0-20091014-555338.html

https://livedoor.blogimg.jp/aataa/imgs/2/0/20fa4f4b.jpg

 この「騒動」に対して、楽天球団がとった対応はというと、

「抹消そのものがペナルティーだ。」

とのコメントのみ。完全な首脳陣批判にもかかわらず、罰金刑にすらしませんでした(先発投手が風邪で登板回避した際に、罰金刑を科していた球団が、です。)。それだけではなく、その後の球団の行動も明らかに「造反行為」を犯した選手への「それ」とは思えない大甘なものでした。そもそもリンデンはコーチ陣や選手に謝罪もせず、その後練習中に帰宅しました。その後に待ち受ける報道陣に対し、球団はリンデンを隠す工作をしました。おとりのタクシーを利用して、報道陣の移動を画策。さらに裏口から逃げさせるという念の入れようでした。

 筆者としてはそもそもあの「服装」で監督に「謝罪」に行かせようとした時点で、球団側が引き留めて着替えさせるなどの対応があって然るべきなのに、「悪態」をそのまま放置して「謝罪会談」を仕掛けるなど、ノムさんの立場を完全に無くさせるものですし、リンデンに対して異様に肩入れしすぎなのでは?と当時は思ったものです。最も今では、当時の球団側の対応を「話題性が乏しいが故の球団側の『自作自演』の『演出行為』」だったのでは⁉と筆者は下衆の勘繰りをしていますが。

「二度目の『謝罪』」では

キチンとスーツで登場。

ノムさんも球団と「和解」し、

CSで「天敵」から先制打!

 こうしてリンデンは大事なクライマックスシリーズのファーストステージの出場を自身の素行不良によって棒に振ってしまいました。リンデン自身もさすがに堪えたのか、自身の申し出によって、二度目の「謝罪会談」が開かれることとなりました。今回はさすがに一度目の轍は踏まないと思ったのでしょう。球団が支給したスーツに身を包み、表情もしおらしく会談に臨みました。その殊勝な態度にノムさんも理解を示して、こうして二人は和解することとなりました。

2回目の監督への「謝罪会談」直後のリンデン。

右目に痣があり、報道陣からも

不穏な噂が流れた。

 なお、この時の謝罪の時にリンデンの右目に痣があったのを見た視聴者が、その後ネットで「誰かに殴られたのか?」と投稿したのをきっかけに、当時の2ちゃんねるを中心にネットの界隈では「リンデンを殴った『犯人』は誰か」と話題になり、「ジャーマン」(山崎武司の愛称)、「セギ様」(セギノールの愛称)、「意外にリック」、「実は『奥さん』」、「やっぱり『ノムさん』」等、一時的に盛り上がりを見せましたが、事の真相は「練習中に打球が当たった」という事でした。

 こうして、ゴタゴタがありながらもリンデンとノムさんは和解を果たし、チームもポイントゲッターだったリンデンの不在を埋めるように打線を中心に選手が奮起し、クライマックスシリーズのファーストステージを勝ち上がったのでした。

 晴れて出場を果たしたリンデンはファイナルステージで日本ハムファイターズと対戦。初戦の相手先発はチームにとってもリンデンにとっても「天敵」だった武田勝。1回表に得点圏に走者を背負った状態で打席に入ったリンデンは、相手の決め球のチェンジアップに体勢を泳がされながらも何とか食らいつき、どん詰まりの打球が運よくテキサスヒットとなり、これが貴重な先制打となって、チームも自身も「天敵」を攻略する結果となりました(なお、試合の結果は皆さんご存じのとおり、楽天のクローザー福盛和男スレッジに逆転サヨナラ満塁本塁打を被弾し、サヨナラ負けを喫しました。)。

楽天とのクライマックスシリーズの九回、逆転サヨナラ満塁本塁打を放った日本ハムのターメル・スレッジ。投手は福盛和男。 2…

日ハムのスレッジに逆転サヨナラ満塁ホームランを喰らった

福盛の一枚(捕手は中谷)。後に投球数をもじられて

福盛の21球」と呼ばれるようになった。 

ファイナルステージでリンデンは攻守で奮闘するものの、初戦のサヨナラ勝ちで勢いと流れを掴んだ日本ハムに圧倒され、結局は1勝3敗で敗退する結果となりました。リンデンはその後の去就が注目されましたが、シーズン途中加入ながら打率.292、12本塁打37打点、先頭打者本塁打を3本、サヨナラ安打を2度放つ活躍が評価され、翌年のシーズンも引き続き楽天でのプレーを続行することが決まったのでした。

楽天2年目は相手チームに

徹底的に弱点を突かれて

成績は低空飛行。

素行も悪化の一途で

負のスパイラルに…。

 こうしてリンデンは翌年も楽天での残留が決まり、年俸も倍増(4000万円から8000万円の増額)する契約をして、2010年マーティ・ブラウン監督の指揮の下でプレーすることとなりました。

「外国人監督の『自由で寛容な指導方針』の下で、初年度以上の成績を残せるだろう。」

 そういった目算がフロントの側にあったのかどうかは分かりませんが、貴重なポイントゲッターとしての期待は高かったものと思われます。

 しかし、そのフロントの思惑は見事なまでに取らぬ狸の皮算用に終わることになります。まず、監督に就任したブラウン氏ですが、読者の皆様の中にどんなイメージがあるでしょうか。現役時代を知る古参のカープファンならフェンスに激突したり、ホームランボールを捕ろうとしてラッキーゾーンを乗り越えてしまうなどのハッスルプレー、監督時代を知るカープファンなら審判への抗議で退場宣告をされた際にベースを引っこ抜いて投げたりするなどのパフォーマンスでしょうか。

ブラウン監督を語る際に必ずと言っていいほど

話題に上がる伝説の「ベース投げ」。

因みに本人曰く「自分が退場して試合の流れを引き寄せるために

咄嗟に思い付いた」そうである。

 このように「『豪快』で『破天荒』」なイメージを持たれている方々が多いと思われますが、実はブラウン監督は米国ではマイナーリーグの監督を歴任し、その実績から優秀監督賞を授与されているほどの経歴の持ち主で、その頃からリンデンの不穏な話などについても情報を収集しており、スタメンでの起用に対してフロントに難色を示していました。 しかし、前年の野村監督との確執で辟易したのか、オーナー側は人事権などをフロントに委譲する措置を取り、監督権限を縮小させるという対応を取りました。これによって、リンデンはよほどのことがない限り、スタメン起用が確約された状態となっていました。

 当のリンデンはそのことに関してどう思っていたのかは分かりませんが、多少の慢心と言えるものがあったのではないかと思える問題行為をシーズン開幕直後に起こします。オリックスとの開幕3連戦で米国製のバットに自身が契約している国内のメーカーのシールを張った「違反バット」を使用していたことが分かり、プロ野球規則委員会から注意を受けるといった問題行為を犯してしまいました。

https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2010/04/12/articles/K20100412Z00002510.html

 それでもリンデン自身は同点本塁打を打つなどの活躍をし、昨季と同様の活躍が期待できるスタートを切ったのでした。

 しかし、シーズンオフに他球団がリンデン対策を徹底的に編み出し、インハイのストレートでカウントを稼ぎ、アウトローの落ちる球で打ち取るという必勝パターンをリンデンに対して仕掛けてくるようになりました。

 この対策に当のリンデンは全くと言っていいほど対応できず、三振と凡打の山を築く結果となってしまいました。

 事態を重く見た現場側は様々な指導や助言をリンデンに対して行うも、当のリンデンがそれらを拒否。練習の特打も拒否するなど状況を改善する余地がないという状態となり、現場側は匙を投げ始めます。

 せっかく出塁しても、その好機をリンデンが潰す結果となる状況が続発することとなり、リンデン自身にもフラストレーションが溜まっていたのでしょう。2010年8月18日のオリックス戦でまたしても福家英登球審に暴言を吐き退場となった後、ベンチ裏でリンデンをなだめようとしたブラウン監督に対し悪態をついた挙句、このような暴言を放ちます。

何故ジャップの肩を持つんだ!

と人種差別発言および監督批判を行いました。

 それまではリンデンに対して鷹揚に構えていたフロント側もこの発言に対して流石に重い腰を上げ、厳しい処置を取りました。というのもブラウン監督はこのシーズン前に日本人の女性と再婚をしており、リンデンのこの発言が監督批判だけでなく、監督夫人への人種差別及び殆どのチームメイトと球団の全ての関係者への侮蔑であると見做したのです。

 それまで度々起用法に関して監督と衝突していた[注2]事と相まって9月7日に球団から40日間の謹慎と600万円の罰金が科せられました。

【審判に激怒で即退場】リンデン全く納得いかずに詰め寄る

https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2010/09/07/articles/K20100907Z00002250.html

判定に激高して福家球審に詰め寄り

暴言を吐くリンデン(右は本西外野守備走塁コーチ)。

この暴言が判定への不服だったのか、

英語を話せる福家球審への差別的発言だったのか、

真相は球審とリンデンが知るのみである。

・[注2] なお、ブラウン監督は楽天の監督就任当初からリンデンや外国籍選手の素行の問題に関して自身がマイナーリーグの監督を歴任してきた経験をもとに、取材陣や報道陣に対して丁寧な説明をしており、その中で「日本人には理解できない部分が多いかもしれないが、どうか寛容な目線で理解していただきたい」と話していました(当時の宮城県のブロック新聞「河北新報」のスポーツ欄の「ブラウン語録」から)。なお、この退場の際にもブラウン監督は「外国籍の選手は自分の怒りを鎮めるために『スラング』を発することで気持ちを落ち着けようとする人もいる」と発言して、リンデンを庇った発言をしていましたが、リンデンの素行の悪さに辟易しはじめていた楽天ファンにはあまり届いてはいなかったように筆者は感じます。                                    また、銀次聖澤諒内村賢介などの若手選手の積極的な起用を監督もフロント側も模索していたため、結果としてリンデンの出番が少なくなってしまった部分があり、そのことがリンデンのフラストレーションを増やしてしまっていたのではと筆者は感じています。

第四編に続く)

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ライナス

ライナスと申します。読書や日本の歴史、アイルランドやスコットランドの音楽が好きなので、皆様に紹介して共有できればと思っています。

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