「山都さんはなんで相撲が好きなんですか?」そうなにげなく聞かれたあの日、私は答えられなかった。私は相撲ファンである。とはいっても、2024年の夏場所から相撲を見始めて、もうすぐ2年という、恐るべきニワカファンである。なぜ、相撲が好きなのか。その問いに答えられなかったのはたぶん、相撲を見始めて1年経ったくらいの頃であったと思う。私はその日、本当に悔しかった。何かひとつでも答えを出したかった。答えを出せなかったのは、私がなぜ相撲が好きなのか、自分でも判然としないからだ。もちろん「なんとなく好き」でも全然いい。普通はそれでいい…けど、私は「これ」がしたいのである。
まだ相撲が好きではない人(以下「まだの人」)「山都さんはなんで相撲が好きなんですか?」
山都「それはですね〜!ほにゃららだからなのですよ〜!」
まだの人「へえ〜、それってどういうことなんですか?」
山都「よくぞ聞いてくれました!それはですねえ…これこれがほげほげで…(説明)」
まだの人「なるほど〜!知らなかったです!それはおもしろいですね!」
山都「でしょう!こんど◯月に相撲の放送があって、見逃し配信もあるんで、ちょろ〜っと見てみてください」
まだの人「えっ、そうなんですか!じゃあ、時間あったら見てみようかな〜…」
山都は「時間あったら見る」はイコール「見ない」に違いない、と踏んでいたが、なんと◯月、まだの人は仕事から帰宅してテレビをつけたとき、偶然流れた最後の数番に、胸を熱くしていた…
私はこれ―布教とまではいかないが、まだの人に、相撲を見たくなる種をまくこと―をたくさんすることで、しょっちゅうは見ないけど相撲は好き、そんな人を一人でも増やしたいのである。そのためには、「私が相撲を好きな理由」はなんぼでもあったほうがいいのである。私は無理やりツレに相撲を見せて好きにさせてしまったが、自分のまわりに相撲が好きな人はほとんどいない。なぜ!!そんなの絶対おかしいよ!!だって、相撲界はいま―空前の相撲ブームだからである!!切符は発売当日、一瞬で売り切れる。毎場所毎日満員御礼なのである。チケットが取れない人が続出している。それなのに、なぜ…私がいくら友達が少ないからって…どうしてこんなに相撲が好きな人はいないのだろう。仙台巡業を埋め尽くしたあの相撲ファンのみなさんは…本当に、実在するのだろうか…。
相撲の良さはわからない、それは無理もないことだと私は思う。私だって30代になるまで気づかなかった。裸の大男が組み合って力比べをする。一瞬のうちに終わるそれは、何が起こったかさっぱりわからない。まあ、おおよそ、力の強いほうが弱いほうを押し出したということだろうが、シンプルすぎる。つまらなくはないのだろうか。それを何番も何番も、15日間毎日何時間も見ているなんて山都ウミ、そういうお前が物好きなだけじゃないか!?ムカデだの、ゴキブリだの、ゲジゲジだのばっかり好きで、嬉しそうに虫の素揚げを食べているような、ウルトラハイパー物好き人間じゃないか!!私の素行に問題があるばかりに、そう言われても仕方ない。だが、多くの相撲ファンはそんな「蓼食う虫」ではないのである。
これから私がみなさんに提示したいと思う相撲の面白さは、物好きのマニアックなフェティシズムではまったくない。おそらくであるが、これはあらゆる相撲ファンと共有可能なのではなかろうか。相撲の歴史は古く、「古事記」「日本書紀」にすでにその存在が記されている。奈良時代には天覧相撲がおこなわれていたという。相撲の歴史は連綿と続き、第二次世界大戦下でも本場所の開催は途切れることなく、約1,300年もの時を経て令和の世にまで至る。国技であり神事でもあるとはいえ、これほどの永いあいだ熱狂が湧き出ずる根源は変わらないと思うのだ。普遍的であり、だれにでも、そしてあなたにも、きっと共鳴するものであるはずだ。このシリーズでは、なるべく多角的に相撲という競技、あるいは文化について、私が思う相撲の魅力を語らせていただきたいと思う。不勉強のため物足りぬところもあるかもしれないが、ここはぜひ相撲初心者でも楽しめる視点ということでご容赦いただきたい。
では、これより大相撲novalue場所、開催でございます。本場所の開催期間は15日。次回「1日目」から15回目「千秋楽」まで、どうぞお付き合いくださいませ。
