黒いコートの彼

朝、 いつもの電車の2番線ホーム着の3両目。

私は就労施設に通う為に毎日、同じ電車に乗る。

ふと、車輛の端を見ると、黒いコートを着て左手には小難しそうな本を開いているサラリーマンを見つけた。

右手にはお弁当袋を提げていた。

私はすかさず左手の薬指を見た。

「無い・・・。」

そう、彼の指には結婚指輪が有りませんでした。

私は小さくガッツポーズをしていました。

お弁当はお母さんの手作りか?いや、もしかすると彼が自分で作ったのかもしれない。

いろいろな妄想をしながら、数十分の時を過ごす。

 2・3週間すると、ぱったり、彼が電車に乗らなくなった。

「どうしたんだろう?車両を変えた?通勤時間を変えた?」

それから1週間、彼の姿を見る事は無かった。

私は後、1週間で就労施設に通う事が終わってしまう。

「このまま会わずにサヨナラかもしれない。」

そう思いながら私は最後の日を迎えた。

 私はいつもの時間、いつもの電車、いつもの車両に乗っていた。

諦めの気分で車内を見ると、同じ場所に彼は居た。

いつものように小難しい本を読み、弁当袋を提げていた。

一つ違っていたのは彼の指に指輪が光っていたこと・・・。

「そうか・・・。」

それを見た私は全てが分かったような気がした。

「今まで、ありがとうイケメン君。キミのお蔭で最後まで就労施設に通う事が出来たよ。」

私は心の中でそう思いながら、スマホに目を落とすのだった。

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なないろびと

水彩画中心に絵を描いています。 先ずはやってみることが、私流です。 日々感謝の毎日です。 少しでも、みなさんに幸せを届けられますように・・・。

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