自立とは依存先の分散であるという話(後編)

前編では「自立とは依存の反対語ではなく、依存先を増やすことである」という目から鱗の考え方を提唱する脳性まひの小児科医・熊谷晋一郎さんのことを紹介したが、今回の後編でも障害福祉サービスをうまく利用しながら地域で自立して暮らしている一人の障害者の方の話をご紹介しようと思う。

その方は、メインハイというお笑いコンビとして活動しているYoutuberのコウキくん。

コウキくんは高校生の夏休みの夜中に、友達と小学校のプールに忍び込んだ時に事故にあってしまう。コウキくんがはしゃいで勢いよく飛び込んだプールには、水がほとんど入っていなかったのだ。プールの底に強く頭を打ち付けたコウキくんは頚髄損傷の大けがを負い、首から下がほとんど動かない重度の身体障害者としての生活が始まる。

これから一生歩けずに車椅子生活だという告知を受けショックを受けるコウキくん。

リハビリをしながら色々な病院や施設を転々と周って行く。

その時コウキくんが考えていたのは「昔のような生活に戻りたい」ということ。けれど同時に「無理だな」とも感じる。

楽観的で明るい性格のコウキくんは「生きてればいいか」「たまに外泊届を出してパチンコに行ったりする、そんな感じの人生を送ろうかな」と思うこともあれば、やはり「昔のように戻りたい」という気持ちが強くなる時もある。

「昔のように戻りたい」と考えたコウキくんは、様々な先輩障害者の話を聞きに行く。

そこでコウキくんが出会ったのが、下地さんというおじさんの障害者の方だ。

2週間に1度、下地さんの家に行き一緒に麻雀をするようになったコウキくん。好きな時間に介助者を使ってカップラーメンを食べる、など病院や施設では考えられないような生活をする下地さんに衝撃を受ける。

「同じ障害レベルの下地さんができているのなら、自分にもこの生活ができるのではないか」と考えたコウキくんは、福祉関連の会社で働きながら障害福祉サービスを利用して一人暮らしを始める。

コウキくんのケースでもやはり、一人暮らしのきっかけになったのは様々な人との出会いだ。

施設や病院に居たのでは存在すら知りえなかった生活を目の当たりにしたことで、コウキくんの中の選択肢・手段(=依存先)が増え、自立して一人暮らしをすることに繋がったのだ。

コウキくんの動画を見ていて感じたのは、失ったものの数を数えるんじゃなくて、自分が持っているもの・増やしていけるものの数を数えることが、生きていく上でとても重要なんじゃないかな、ということだ。

その点において、自分よりも困難な状況にある人がどうやって生きているかを知ることは、困難な状況を打破するためにとても参考になる。

障害者であっても、健常者であっても、自立して生きていく上で重要なのは、己の能力を客観視し自分にできないことがあるということを受け入れること。

「できること」と「できないこと」を理解したうえで自分が持っているカードでどう戦うか。手持ちのカードをどのようにして増やすか、自己理解と工夫と環境調整で乗り越えることが、自立への近道なのかもしれない。

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なび

双極性障害2型の当事者。文章を読むことと書くことが得意。好きなものはハンドメイド、動物、料理、ガーデニング、ゲーム、スポーツ観戦など多趣味。趣味のことや精神疾患患者が少しでも生きやすくなるヒントを発信。

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