無言の中に生まれる「深み」とは何か

X(旧Twitter)発祥で、今や日本中で大人気のコンテンツ「ちいかわ」のことをみなさんはどのくらいご存じでしょうか?

今回の記事では、私が大好きな「ちいかわ」の特に気に入っているエピソードを通して、「無言の中に生まれる深み」について考察しようと思います。

ちいかわの中で私が一番気に入っていて、初めて読んだ時に感銘を受けたエピソードがあります。

それは漫画第4巻に収録されている「ほめられリボン」の話です。

ハチワレは、草むしり検定5級の合格のお祝いに自分に似た猫の形のクッキーを、ちいかわからプレゼントしてもらいます。

そのクッキーのラッピングに使われていた青いリボンを花瓶のふちに結んで飾っていると、鎧さんたちから褒められたので「ほめられリボン」と名付けて大切にします。

ある日ハチワレが花瓶の水を交換しに行っている間に、野生の鳥がそのリボンをくわえて持って行ってしまいます。

大切な友達からもらったリボンを失くしてしまったことがショックで、ちいかわの前で泣いてしまうハチワレ。

そんなハチワレを喜ばせようと考えたちいかわは次の日、もう一度同じクッキーをプレゼントしようとハチワレの家に行きます。

しかしハチワレが「世界にいっこしかないのにッ…大事なリボンなのに…」と泣いているのを見てしまい、ちいかわはある一つの方法を思い付きます。

家の入口に落ちている青いリボンを見つけるハチワレ、そこに現れたちいかわに「今ちょうどさァッ」「あったんだよ!!リボンッッ」と喜びを表出します。

しかし現れたちいかわの口元にはなぜかクッキーのカスがついています。

実はこの青いリボンは、鳥に取られたものが返ってきたのではなく、ちいかわがクッキーを急いで食べ、そのラッピングに使われていた新しいリボンをハチワレの家の入口にそっと置いたものだったのです。

ハチワレも、ちいかわが握りしめているクッキーの袋や口の周りについたカスに気付きますが、あえて多くを言葉にはせずに微笑みます。

ちいかわはもともと少ししか喋れませんが、普段は流暢に言葉を操るハチワレも、この話の中では全てを言葉にすることはせずに、繊細な表情の変化と「……」という台詞だけのコマが続きます。

ちいかわもハチワレも、台詞こそありませんが相手の心の機微を敏感にとらえています。

このエピソードでは、ちいかわとハチワレがお互いに相手を思いやっているけれども、あえて全てを言葉にせずにお互いにさりげない優しさを見せているところが、繊細かつ丁寧に描写されています。

作者のナガノさんの表現の技術の高さに驚かされましたし、個人的にちいかわという作品は、こういった台詞のないコマ、その余白の中にある深さこそが魅力だと思っています。

この話を通して私が感じたのは、「現実の人間の世界においても、常に全てを言葉にする必要はないのではないか?」ということです。

もちろんはっきりと言葉にして伝えるのが重要な場面ではそうした方が良いですが、あえて言葉にせずに、余白を残すことでこそ生まれる魅力や深みといったものが存在するのではないかと考えるのです。

実際に私が他人と関わるときも、思ったことを全て口に出して話してしまうおしゃべりな人はなんだかせわしなく、落ち着きがないように感じて苦手だし、無口な大人しい人は本心がどうであれ、なにか余裕があるように感じます。本当は「今日の晩ご飯何食べよー?」とかそんなに深くないことを考えていたり、たとえ何も考えていなかったとしても、無口なことにより表面上は深みが出て余裕があるように見えるのです。

同時に気付いたのは、「大人しい人や無口な人が、大人しいからといって何も考えていないというわけじゃない」ということです。

ちいかわも、簡単なことしか話せず普段は大人しいけれど、「ほめられリボン」のエピソードからもわかるとおり、色んなことに気付いて色んなことを考えています。

私も普段、考えていることの2割くらいしか口に出さないタイプです。

もともとおしゃべりな方ですが、それでも全てを口に出しているわけではなく、頭の中では普段口に出している言葉の量の5倍くらい色んなことを考えています。

そして全員に全てを話すのではなく「この人にはこれは言った方がいい、これは言わない方がいいだろうから言わないでおこう」と無意識に言葉を分別して話しているのです。

私が無言の中に感じる「深み」の正体はこれじゃないかと気付きました。

自分自身が無意識に言葉を「分別」して話しているからこそ、無口な人も自分と同じようにあえて全てを言葉にしていないだけで、頭の中ではたくさん考えているのではないかと勝手に想像していることが、私の感じる「深み」の正体なのかもしれません。

でも実際は無口だからといって常に深いことを考えている人ばかりではなく、「おなかすいた~」など、とりとめのないことを考えていたり、何も考えずにただボーっとしているだけだったりする場合も多いと思うので、私が感じている「深み」は半分本当、半分幻想なのかもしれません。(*´ ˘ `*)

今回は、ちいかわの「ほめられリボン」のエピソードを通して、人間の「無言の中に生まれる深み」について考察してみました。これらも今回のように私自身が感じたことや、私の考えを発信していけたら幸いです。

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なび

双極性障害2型の当事者。文章を読むことと書くことが得意。好きなものはハンドメイド、動物、料理、ガーデニング、ゲーム、スポーツ観戦など多趣味。趣味のことや精神疾患患者が少しでも生きやすくなるヒントを発信。

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