今回のテーマは「昭和の鉄道」です。 今やリニア中央新幹線の開発が進み、ICカードをタッチするだけでスマートに改札を通れる時代。ですが、昭和後期(1970〜80年代)の鉄道は、もっと人間臭くて、独特の音と匂いに満ちた「旅のドラマの舞台」そのものでした。
どこか無骨で、でも最高に格好よかったあの頃の鉄路の風景を振り返ってみましょう!
1. パチンと響く小気味いい音! 駅員さんがハサミを入れる「紙の切符」
昭和の駅の改札口には、自動改札機なんてありません。 ずらりと並んだボックスの中に駅員さんが立ち、乗客が差し出す紙の切符に「カチカチカチッ!」と凄まじい速さで「改札鋏(かいさつばさみ)」を入れていました。
駅や路線によってハサミが切り抜く形(M字や半円など)が異なっており、あのリズミカルな金属音を聞くだけで「これから旅に出るんだ」と胸が高鳴ったものです。
ポケットに大切にった切符を、失くさないように何度も手で触って確かめるのも、昭和の子供たちの定番の姿でした。
2. 窓が開く特急に、座席の灰皿! 大らかすぎた車内風景
今の電車はエアコンが完備され、窓は固定されているのが普通ですが、昭和の現役列車(特に各駅停車や旧型客車)は窓が自由に開け閉めできました。 トンネルに入ると勢いよく吹き込んでくる煙の匂いや、涼しい夜風を肌で感じながらガタゴトと揺られるのが心地よかったものです。
そして驚くべきは、当時の「普通列車」や「特急」の座席の肘掛けや窓際、さらには前の席の背もたれに、当たり前のように「灰皿」が設置されていたこと。 車内はお父さんたちのタバコの煙でモクモクしていることも珍しくありませんでしたが、当時はそれがごく普通の移動風景でした。
3. 駅のホームはパラダイス! 「駅弁の立ち売り」と「立ち食いそば」
新幹線や特急の停車駅のホームには、首から大きな箱を下げた「駅弁の立ち売り」のおじさんがいました。 電車の窓を開けて「お弁当ひとつ!」とお金を渡すと、お茶が入ったポリ容器(プラスチックの持ち手付きのミニボトル)と一緒に手際よく手渡してくれます。
また、ホームに漂う出汁のいい匂いに誘われる「立ち食いそば」も欠かせません。 乗り換えの短い時間の合間に、器から湯気を立たせてハフハフとすする1杯のうどんや蕎麦は、なぜかお店で食べるよりも何倍も美味しく感じられました。
おわりに
今の鉄道は、静かで、正確で、どこまでも快適に目的地へ連れて行ってくれます。
でも、昭和の鉄道には「移動する時間そのものを五感で楽しむ豊かさ」がありました。
ガタゴトと響くレールの音、窓から入る季節の匂い、ホームに行き交う人々の活気。 単なる「移動手段」を超えて、乗る人すべての人生や夢を乗せて走っていた昭和の列車たちは、今も私たちの記憶の中で、あの独特のホイッスルの音とともに輝き続けています。
