2022年4月 楽しかった海外ドラマをご紹介 愛及屋烏
『CSI:マイアミ』(S1.2002~S10.2012)
Continuation from last page. 07-2
おススメの名エピソード
CSI:マイアミ S2 #12「全てを見ていた男」/Entrance Wound
ある日、マイアミの屋内駐車場。
周囲を伺うようにビルから出てきた男性は駐車場に止めてあった車に乗り込み発進させるが、よそ見した際に他の車と衝突事故を起こしてしまう。
男性は仕方なく銃を隠し持ち、相手と話し合うが口論になり、やがて渇いた銃声が鳴り響く。
だが、たった一人だけ“全てを見ていた男”がいた……。
捜査にあたったホレイショは目撃者と対話する。
事件の全貌を目撃したと語るのは、フロリダ州のコインが欲しくて駐車場で窓ガラス拭きをしていたユージーン・トーマス・ウォルターズだった。
しかし、知的障害者である彼の精神年齢はおよそ7〜8歳程度。
到底話の信憑性に欠け、裁判での証言能力も認められない。
ホレイショは彼の証言に基づく捜査はできないとして、より確実な証拠の採取を優先するが、彼は自ら進んで捜査に協力を申し出る。
「ぼくもよのなかのやくにたちたい。きみみたいに」
彼の拙い証言からヒントを見出し、容疑者を浮上させ面通しを行うが、空振りに終わってしまう。
「ぼくにがっかりした?」 「いや、そんなことは…」 「ぱぱもそんなかおでぼくをみてた……ぼくは……ばかじゃないよ…」
当初は困惑するホレイショだったが、次第に純粋で一生懸命なユージーンに好感を抱いていく。
しかし、捜査が進展し有力な容疑者の特定に成功した時、ホレイショの携帯に連絡が入った。
「ユージーンが何者かに襲撃された」と─────
彼が狙われた理由は単なる口封じ。
いくら証言能力が低くても犯人にとって、ユージーンは危険極まりない目撃者に違いなかった。
すぐさまホレイショは病院の集中治療室に駆けつけるが、血液が固まらない病気もあり、既にユージーンの容態は絶望的で、医者ですらサジを投げていた。
瀕死の重傷を負ったユージーンはベッドに横たわったまま息も絶え絶えに呟く。
「ぼくもいっしょに…いくよ……ぼくたち…あいぼうだろ…?」 「ああ、そうだよ。相棒だ。でもどっちか一人が仕事に行けない時は、もう一人が二人分する。それが相棒だ」 「た…たのむよ…あいぼう…」
一時間だけ、何としても待ってるようユージーンに告げ、犯人逮捕に全力を注ぐホレイショ。
事件の全貌が推定され、後は動かぬ証拠を固めるだけという段階になった時、ホレイショの携帯が再び鳴った……。
最終的に決め手となったのは、犯人の衣服に付着していたユージーンのDNAだった。そう、彼を襲撃した際に浴びた返り血である。
「あのオツムじゃ不憫だから楽にしてやったんだ」
悪びれもせず笑う犯人。 それを聞いたホレイショは、静かに、だが確かな怒りを込めて言い放った。
「いいか…ユージーンは世の中に貢献しようと一生懸命生きてた。そして、人生の最後に…お前を終身刑にして正義を果たした」
施設暮らしをしていたユージーンには身寄りもおらず金も無く、その遺体は役所が埋葬する手筈になっていた。
事件解決後に霊安室に赴いたホレイショは、担当者に彼の埋葬を自分が行うと申し出る。
「ユージーン、お父さんは褒めてくれただろう? その筈だ……ありがとう」
ホレイショは果敢に悪に立ち向かった“相棒”の身体に、そっと自らの警察バッジを置く……。
後述(感想)
比較的、ハッピーエンドが多い(ホレイショが無理にでもそうする)マイアミ編の中で異質とも言えるが、一方でファンからの評価は非常に高い。
シナリオとしては、CSI特有の科学捜査描写も無いし、マイアミ編の特色である派手なアクションや銃撃戦も無い。
だが、ホレイショの人情味が伝わる、実に染みるエピソードであると思う。
実年齢とは別に精神年齢が子供の場合も優しいんだ、というのは若干失礼かも。
END.