Cross Over Is Like #04
2022年8月 好きなクロスオーバー作品をご紹介 愛及屋烏
零・碧の軌跡 & 閃の軌跡Ⅰ・Ⅱ
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閃の軌跡
「零(ゼロ)から閃(セン)へ――」
「軌跡シリーズ」第3作となるシリーズ作品で、ファルコム初のマルチプラットフォーム(PS3・PSVita)の発売タイトル。 シリーズ初のコンシューマ機向けの作品となっている。IIIとIVはPlayStation 4用として開発され、IとIIもPS4に移植された。セーブデータ移行も可能。 移植版ではUIの修正や高速モードが搭載され、周回プレイ勢には喜ばれた。
「軌跡シリーズ」としては『閃の軌跡』が第7作目、『閃の軌跡II』が8作目の作品となる。
今作は、シリーズにおいて長らく敵国側として描写されることの多かった「エレボニア帝国」を舞台としており、これまではリベールに攻め込んで百日戦役を起こして更に大元のきっかけが自国にあると知った途端に形振り構わず隠蔽に走り、クロスベルに圧力をかけた挙句年単位で占領したり、宰相が分かり易いほど裏で暗躍するタイプの悪党だったりと、プレイヤー視点では演奏家とその護衛、及びこの二人の夫婦漫才くらいしか良い印象のなかった敵国・オブ・敵国だったが、今回は色々と内情が明らかになる。時系列としては、前作『英雄伝説VII』(零の軌跡・碧の軌跡)とほぼ同時期の時代を扱った作品である。
『The Legend of Heroes 閃の軌跡 Northern War』のタイトルでTVアニメ化が決定している。時系列はゲーム的に直接の描写の無い、Ⅱ後・Ⅲ前の北方戦役をフューチャーしたものらしい。
真面目 or スチャラカ
『空』からのシリーズプレイヤーからすると帝国人の印象は二極化する。
リベールから見て、敵国民としての印象を除けば、質実剛健で真面目となる。
空の軌跡の主人公の一人(むしろヒロインかも)のヨシュアは元々帝国とリーベルの国境近くの辺境の村出身だった。 だが、そこで心神喪失状態になった後、結社の執行者(それも暗殺特化)として、肉体・精神を調整されているので一般的な印象からは外れる。 本来の性格は一般的な帝国男子のそれらしい。
だが、二人目がその印象をひっくり返す。
自称・漂泊の詩人、愛と美の探求者の演奏家『オリビエ・レンハイム』である。テラ子安。
リュートの弾き語りをしながら旅をしている自由人。
ゲーム的には空の軌跡での4番目の仲間という扱い。 (三番目はエステル達の先輩遊撃士で姉貴分の『銀閃』のシェラザード)
軽妙かつ飄々とした態度に肩までかかる金髪と端正な顔立ちをしたイケメンだが、変態。 女の子達を(時には男も)子猫ちゃんと呼び、美少年であるヨシュアに顔を赤らめてつきまとったり、無銭飲食をして牢屋にブチ込まれたりしている。
仲間内でもスルーされたり、無理やり黙らせたり、保護者によって強制連行されている。その保護者筆頭がミュラー・ヴァンダール。帝国軍第七機甲師団所属、階級は少佐。『空FC』での初登場時はリベールの帝国大使館の駐在武官として登場した。
固そうな見た目と職業に違わず真面目で融通が効かない性格。実直な帝国男子そのもの。帝国軍人としての責務を果たすことを重視する堅物である。
碧の軌跡では都合により「音楽家のマネージャー」を名乗っていたが、黒スーツにグラサン装備の出で立ちはどう見てもSPそのものだった。特務支援課にも不審がられた。
オリビエとは幼なじみの関係で、王都で彼が何かやらかすと現れて事態を収拾する。主に物理的な手段で。普段は真面目なミュラーくんだが、オリビエが相手だと容赦の無いツッコミで熟練漫才コンビとしての実力を大いに発揮してくれる。
軍人であるミュラーとの関係からオリビエの普段の態度は擬態で帝国の諜報員か何かではないか、と彼の出自や存在に疑惑のまなざしを向けるキャラは少なくなかった。
だが、SC終盤まで正体は明らかにならなかった。
『空SC』終盤にてエレボニア帝国の皇帝ユーゲントⅢ世の第一皇子、「オリヴァルト・ライゼ・アルノール」その人だと判明したが、母親の身分が低い事から皇位継承とは縁遠く、あまり表ざたになっていなかった。後のシリーズで継承権自体を放棄していると語られた。
ミュラーのヴァンダール家は皇室の守護を担う武門の家なので帝国人のヨシュアはオリビエの余りのキャラに疑いつつも、素性自体には気付いていた。
だが、皇子として高貴な振る舞いは別にしても、素の性格は普段の愉快なオリビエそのままだった。(閃シリーズで登場する腹違いの妹のアルフィンが似た性格なので皇帝由来の性格疑惑がある)
リベール来訪の目的は、クーデター計画の一環で自分が王女の政略結婚の相手になっていた事の裏の調査。
更にリベールの異変において、自国の鉄血宰相が裏で結社と情報の取り引きを行っており、導力が停止した異変にかこつけた援軍の体を装った、周到に用意された蒸気戦車による穏当な侵略への備えをカシウスと接触して事前に用意する為だった。
以降のシリーズでもオリビエとしてもオリヴァルトとしても登場し、主人公達との縁を繋ぎ、本人もまぎれもなく英雄であるが、何より英雄達を繋ぐ者として存在感を示した。
『余所者、若者、馬鹿者』の三つ全てを満たす、常識を壊し、世界を変える稀有な存在。
軌跡シリーズを通して描かれる彼の人生もまた、シリーズの見所。
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