SUCCESS NET NOVEL #02
2023年11月 なろう等のネット小説で諸々成功した作品 愛及屋烏
薬屋のひとりごと
Continuation from last page. 02-2 https://no-value.jp/column/39383/
アニメ放送開始
2023年の秋アニメとしては遅れ気味となる10/21に放送が開始された。
葬送のフリーレン等と同じ様に初回三話一挙放送である。 配信サイト等でも一括でのUP。 制作の遅延ではなくスポーツ枠によっての遅れ。
「まどマギ」等の所為で取り敢えず三話まで見ろ、という格言がある様に最初の第一話で作品の魅力が伝わりきるか分からないので初回に三話まで放送するというのは悪くない手法だと感じる。
初回からしっかりとあるOPは、緑黄色社会の「花になって」をバックにほぼ猫猫オンリー。 キャラよりも毒草・薬草の方がいっぱい出てくる。 壬氏だけラストに登場し、アニメのキービジュアルの1枚絵で〆。
サビは、曲調も動きも激しめでソバカスを消し、着飾った猫猫が踊る。 猫猫の踊りは劇中の舞とは明らかにジャンルが違うが、探偵物のOPは派手になる傾向があるので、これはこれでアリ。
第1話 猫猫(マオマオ)
花街で薬屋を営む猫猫は、人さらいにかどわかされて後宮に売られ、下女として働くことになった。 ある日、“帝の御子の連続死は「呪い」のせい”という噂を聞く。 呪いの正体を推理した猫猫が妃たちが暮らす宮へ行くと、上級妃の二人が言い争う声が聞こえてきた。 好奇心と知識欲が旺盛で「薬」「毒」と聞くと気持ちが昂る猫猫は、動き始める。
サブタイトルは原作小説準拠。
ガンガン&サンデーの両コミックスでは猫猫が既に後宮で働いてる状態から話が始まり、その経緯は後で語られる。ガンガン版はほんの少し。
アニメでは義父の元での薬師生活や花街・娼館との関わり、日頃から薬の実験を自分の体でしている事等を描写した上で人買い(女狩り)に攫われ、後宮に洗濯係の下女として入っている。
アニメとしては非常にテンポが良いが、むしろ丁寧に描写している。
ガンガン版寄りの美麗なキャラデザ+サンデー版の情報量にバンバンアニオリが入る印象。ギャグシーン等ではデフォルメ描写もあり、薬と毒が絡むと猫猫が名の通りに猫化する。
初手から中華系の背景美術の力の入れ方を見せつける。 娼館の遣り手婆(声ピッタリ)の発言から、小説版で語られた、実験中に粉塵爆発で部屋を吹き飛ばした前科しっかりもあったようだ。
後宮や宦官、女官の説明もしっかりと猫猫のモノローグで語られる。
なろう系女主人公で人外(蜘蛛)まで熟した、悠木碧のアンニュイな名演が光る。 方向としてはグリッドマンでのボラーちゃん君の時の演技から、覇気を抜いた感じ。
一方、壬氏はドラマCDでは櫻井孝宏が演じ、アニメの制作決定の初報でもそうだったのだが、私生活で結構なやらかしがあったので降板。 「推しの子」で星野アクアを演じた大塚剛央が演じている。違和感は特にない。
基本、話は1話内で収まるようになっているのだが、その回の事件の手掛かり、後の話の繋がりや伏線も視聴者に分かるよう、しっかりと描かれている。
- 梨花(リファ)妃の出産のシーンで御子と妃で明らかに肌の白さが違う。
- 玉葉(ギョクヨウ)妃とその娘も梨花親子程じゃないが肌色が違う。
- 猫猫が警告文を出すのに自分のスカートを裂いて使うが、その後はスカートに縫い跡がある。
- その縫い跡を壬氏の部下の高順がしっかりと目視している。
- 猫猫が梨花妃の方へと出した警告文を誰?が握りつぶしたかの描写。
1話のラストは異民族討伐の遠征中の部隊(兵)が食事中に毒で倒れる2話への繋ぎ(引き)でEND。 兵士が夾竹桃の枝を削って箸にしている描写もあるのでミステリ的に難しい訳では無い。
第2話 不愛想な薬師
猫猫は「呪い」の正体を見抜いたことを美貌の宦官壬氏に知られ、薬師としての知識を買われて上級妃である玉葉妃の侍女兼毒見役になった。ところが給金は上がったものの、「かわいそうな毒見役」であることを同僚に気遣われて暇を持て余す日々。 そんな折り、猫猫は壬氏にとんでもない薬を作ってほしいと頼まれる。
前回ラストの部隊の食事中の描写をより丁寧に描写してスタート。
直後、滞在した村の村長が敵の異民族に内応して毒を盛ったとして、責められ、捕らえられる。 だが、その場での処罰は一人の武官が止める。 モブにしてはハッキリと顔を出しており、原作・コミックスを履修済みだと「ああ、次の話で出てくる功績のあった武官の人ね」となる。
侍女としての生活を始めた猫猫。
しかし、彼女が毒見役を兼ねている事や腕に包帯を巻いていて、肉無し体型な事から、家族から虐待の上、売り払われたのだ!と先輩侍女達は猫猫に同情(勘違い)気味。
危険な毒見を喜々として熟す姿に周囲はドン引き。 日頃の侍女としての仕事は先輩達が気遣ってさせてもらえない。
このままでは猫猫ならぬ豚豚に……といった所で壬氏から依頼が。
冒頭での軍の毒の件の相談――はあっさり解決。
武官から催淫剤入りの包子を渡されている壬氏。男からも狙われているらしい。
壬氏からの本題は媚薬の調薬依頼。医局への立ち入りを許され、歓喜の猫猫。
医局のやぶ医者が自分の聖域に立ち入られて憤慨しているが、逆に貴重なシーンである。すぐに馴染むお人よしなので。医者としての能力は無いが善良ではある。
後宮医なのに「やぶ」なのは、そもそも名医で去勢されて、宦官になりたがる物好きが居ないのと腕が良いと後宮での政争に巻き込まれる、という問題(治療で暗殺を防がれるので邪魔)もある。
そんな他人の城で猫猫はチョコレート作りを開始。 菓子作りが主題のなろう作品「おかしな転生」でチョコを作れたのは、かなりの後半なのに。
「薬屋のひとりごと」は中華風ファンタジー世界なので貿易や食品事情も微妙に違う。
余ったチョコを染みパンにするも侍女仲間達がつまみ食いし、あられもない姿を晒すがスカートを捲って「大丈夫、未遂です」と平然と宣う猫猫は流石に花街育ちである。
ラストは城壁で踊る女を下女が目撃して〆。 どうも、次回の話の引きを入れるスタイルで行くらしい。
第3話 幽霊騒動
“城壁の上で女の幽霊が踊っている”という噂が後宮内に広まった。よくある幽霊話と気にしない猫猫だったが、壬氏に夢遊病について聞かれ、幽霊の正体をその目で確かめることに。 夜、壬氏の部下である高順に連れられて城壁に行くと、美しく舞う女の姿があった。その女――芙蓉姫の事情を調べる猫猫は、やがて思いがけない理由を知ることになる。
一挙放送でのラストの第三話。しっとりとした話をラストに持ってくるのは上手い。
遠征での活躍&毒騒動で功績を挙げた武官が、芙蓉姫の下賜を願い出た、というのが前提の話。
芙蓉姫は小さな属国の第三公主であり、政略的に後宮入りした。
だが御目通りの際、得意の舞踊を失敗しており、その後は部屋に籠っていた。 帝は興味を失っていて俗に言う「お渡り」もなく、手を出されていない状態だった。
そこで出た下賜の話のストレスによる夢遊病の可能性もあると考える猫猫だが、花街での経験から真相に気付くも壬氏達には敢えて多くは語らなかった。
下賜の当日、玉葉姫に「私にぐらいは(真相を)話しても良いのでは?」問われた猫猫。
あくまで想像だと念押しした上で猫猫は語る。
- 同郷の幼馴染(件の武官)と結婚したかったが、芙蓉妃は政略で後宮に入ることに。
- 後宮でお手付きにならぬよう、舞踏を失敗して皇帝の興味をなくす。
- 下賜が決定すると、最後に皇帝が寄ってこない様に幽霊騒ぎを起こして自分の評判を下げる。
- 結果的にお手付きなし身綺麗なままで好きな武官と結婚できるようになった。
花街での身請けの話(本命に半値で買わせる為に夢遊病を装い、一度囮の身請け話を破談にさせた)を交えながら、芙蓉姫の計画を想像していく。
城壁で踊る時の方角が変わったのは、武官の遠征先(東)を向いて無事を祈願していたのではないか。
原作小説・マンガ共に読んでいても、怪談と思いきや最終的に美しいラブストーリーに着地する展開には、思わず惚れ惚れする。 ラストで想い人との再会を果たした芙蓉妃の表情が本当に幸せそうで、玉葉姫が思わず「羨ましい」とこぼしてしまったのにも納得の絵面。
対面後、馬車?内で抱き合うシーン以降はアニオリで挿入歌まで追加。素晴らしい。
後述
満を持して、というか最初期のなろう作品のアニメ化が中々されないケースは割と多い。
機をそのまま逸したりする事も多いのだが、漫画版もバカ売れしていたので不安は無かった。
PVや告知の時点でアニメの期待値は高かったが、とんでもないのをお出しされてしまった。
続く4、5話も素晴らしく序盤の盛り上がり所の園遊会の話も期待大の様子。今季の一押しである。
END.