アニマルセラピーという分野をご存じでしょうか。
セラピー犬等の動物が人間へもたらす様々な効果を、医療や福祉、教育の現場に介在させ、患者や利用者の健康に役立てていくというものです。
アニマルセラピーとは総称で、その内訳は、下記の3種類の活動です。
アニマルセラピー ①「動物介在療法」Animal Assisted Therapy(AAT) ②「動物介在活動」Animal Assisted Activity(AAA) ③「動物介在教育」Animal Assisted Education(AAE) |
それでは、それぞれのアニマルセラピーについて説明していきます。
①「動物介在療法」Animal Assisted Therapy(AAT)
動物介在活動(AAT)とは、病院などで医師や作業療法士などと一緒に行なわれる治療方法の一つです。
例として、精神科でのセラピー犬を介在させたデイケアです。
患者のストレスの改善や、他者と動物の世話をすることでコミュニケーションのきっかけ作りが生まれること、更には社会性の改善の効果が見られるという治療方法です。
また、リハビリに犬を介在させることで、患者のモチベーションアップに繋げたり、小児の長期入院患者の精神的な支えとして、アニマルセラピーを取り入れている病院もあるようです。
高血圧や心不全の患者さんにも、セラピー犬と触れ合うことで数値の改善がみられたことが観察されています。これは、交感神経緊張が緩和されること等から起こる効果と考えられているようです。
②「動物介在活動」Animal Assisted Activity(AAA)
動物介在活動(AAA)とは、介護施設や福祉施設のレクリエーションとして、利用者とセラピー犬猫たちが触れ合う活動や、動物とスタッフが利用者の家に訪問する等をして触れ合いをするという活動です。
普段はあまり動かない高齢者が、犬や猫に触ろうとして自発的に手を伸ばしたり、自然と笑顔が見られたり、周囲の人との会話も弾んだりという様子が伺えます。
動物介在活動によっての高齢者施設の利用者の変化として、幸せホルモンであるオキシトシンの増加や、ストレスホルモンのコルチゾールの減少等の効果も確認されているそうです。
また、不登校や障がいのある子どもたちに、動物との触れ合いの場を提供したり、訪問によってアニマルセラピーを行う活動もあります。
アニマルセラピーは、発達障害にも効果的な場合があるようです。
自閉スぺクトラム症の方は、その特性から、コミュニケーションの苦手さや、感覚過敏などからのストレスを抱えていることが多くあります。よって、アニマルセラピーを導入することでストレスの改善や、動物との友情の芽生え、自己肯定感の向上が見られたというケースもあるようです。
③「動物介在教育」Animal Assisted Education(AAE)
動物介在教育(AAE)
小学校低学年の授業に犬などの動物を介在させるという教育方法で、教育従業者が計画を立てたうえで、動物への正しい接し方や、動物の命の尊さについて学習していくそうです。
また、海外では、教育現場に動物を介在させることで、学習能力の向上が見られているようです。
次に、アニマルセラピーとして導入されている動物を調べてみました。
【アニマルセラピーに適している動物】
- 犬、猫、ウサギ、モルモット等の伴侶動物
- イルカ、馬 等
特に感情を表現できる動物が、アニマルセラピーには適しているとされています。
【アニマルセラピーの難しさ】
様々な効果があるアニマルセラピーですが、現実の厳しさも多いと感じます。
動物が苦手な方やアレルギーのある方への配慮、利用者と動物への配慮などを万全に行っていく必要があります。
実際の動物介在活動では、これらの配慮のほか、日ごろの飼育や衛生・健康管理等の様々な労力と費用がかかります。
アニマルセラピーは、専門学校で学んだり、専門の講座を受けて資格を取得し活動している人が多いですが、日本の現状ではボランティアとしての活動となっていることが多いようです。
また、動物介在医療を行なっている医療機関は、存在していますが、まだ少ないのが現状です。
学校に動物を介在させることも、子どもたちの心を育む教育に大変有意義だと思いますが、まだ活発には行なわれていないようです。
このように、日本では発展途上の分野となっているようです。
おわりに
それでも、利用された方に、動物と会って笑ってもらえる、幸せな気持ちや前向きな気持ちを持っていただける、とても有意義な活動だと思います。
そして、次回の活動も楽しみに待っていてもらえる活力となる事でしょう。
今後、科学的なデータの充実や、社会に関心を持ってもらえる事によって、アニマルセラピーが、必要としている人々に発展し、続いていける活動となることを願っています。
参照 ユニ・チャーム ペット アニマルセラピーで活躍する動物たち ~犬や猫の役割と仕事内容〜 /公益社団法人 日本動物病院協会/社会医療法人 松平病院