皆様、だんだん寒くなってきている今日この頃、どうお過ごしでしょうか?虫たちもだんだんみられる数も少なくなってきましたが、逆にこの季節だからこそ目に付く虫を紹介したいと思います。その名は雪虫です。
最初からネタバレをしてしまいますが、雪虫と呼ばれる昆虫は厳密には存在しません。ではこの虫は何なのかと疑問に思うでしょう。それもそのはず、雪虫はアブラムシまたはワタムシという、比較的身近に存在する害虫が冬を迎えるにあたって活動する形態の一つだからです。
ではなぜ、もこもこした姿になって冬場前に現れるようになるのか?それは、産卵をするための形態だからです。本来アブラムシは、単為生殖という子供を増やすのにつがいを必要としない繫殖行為をします。理由は、個々の力が弱いため大量の子孫を産み、少しでも多く外敵から生き延びるための生存戦略です。しかし、冬が近づくと、ほかの昆虫同様、寒冷化についてゆけずに死亡してしまいます。そのために、冬が近づいている僅かな期間のみ単為生殖から雄と雌に分化し、交尾をして卵を産み、越冬するために体から白いワタのような分泌物を身にまとい、さらには羽をはやして飛行能力を獲得して、活動範囲を広げようとします。(羽をもつアブラムシは冬以外にも現れますが白い分泌物を出すのは冬のみです)
余談ですが、この雪虫の姿の個体は繁殖に特化しており、雄個体は口を持たないため、一週間ほどで絶命し、雌も卵を産むとすぐ力尽きてしまいます。また、飛行能力も弱く、風に吹かれるだけでふわふわただようことしかできなくなってしまいます。当然アブラムシ特有の弱さも改善されていないため、人の手などに触れようものならばすぐに弱ってしまいます。
今回は冬の風物詩とも言える雪虫について解説しましたが、彼らの正体について驚いてもらえたなら幸いです。基本的に害虫の繁殖活動の一環ではありますが、どこか儚げに映って宙を舞っているように見えるのは不思議ですよね。これにて今回は終了とさせていただきます。ご愛読ありがとうございました。