今回は、ペルシャ音楽についてご紹介したいと思います。
・古代メソポタミア文明の音楽を継承したペルシャ音楽
前回の記事でもご紹介しましたが、古代メソポタミア文明にはとても高度な音楽が存在していて、現代の私たちが驚くような楽器や理論や構成などが考えられていたそうです。その直接の後裔と言われているのがペルシャの音楽です。
・ペルシャ音楽は西アジア音楽の源流
トルコ、アラビア、イラン、イスラエルなどの西アジア音楽はペルシャの音楽理論から学んだりしながら国際的な民族交流のなかで発展していったということで、ペルシャ音楽は西アジア音楽の源流と考えられています。
「ウード」は、ヨーロッパのリュートからのちのギターに発展していったことで有名で、アラビアで発展したものですがもともとは、バルバットというペルシャの楽器が源流だということです。
ここで、ウードの演奏を聴いてみましょう。
Munir Bashir – Iraqi Maqams (Mesopotamia)
イラクのマカーム(旋法)の即興演奏だということです。
マカームについてはとても難しいので、また後ほど記事にさせていただければと思います。
・ペルシャ音楽の特徴
ペルシャの街角での、行商人の呼び声には特徴があるようです。
日本だと、「石焼き芋」だとか「さおだけ屋」とかの、ただの商品名を述べているだけのものが多いですし、西アジアでもトルコの行商人は「ゆで卵」とか、「くず屋」とか「ほうき屋」とかいった、簡単な商品名をただ怒鳴って歩くだけと言う場合が多いらしいのです。ところが、ペルシャの場合には、さくらんぼを売る場合でも、「このさくらんぼはどこどこの山の裏でとれた何と言うさくらんぼで、あの有名な花園に咲き匂っているバラの花よりも鮮やかである」などと実に詩的な文句でお客に呼びかけてペルシャ音楽の魅力である泉のように湧き出て自由に動く旋律で歌われるのだそうです。
ペルシャの歌を歌うときには、単に細かな節を歌うと言うだけでなく、旋律が持っているそこはかとないデリケートな振動を技巧的に表現するために、表声と裏声とを微妙に交差させる独特の喉の使い方が必要とされ、この技巧のことを「ウグイスの喉」とか「ウグイスの声」とか言うようです。なかなか難しい技巧で立派な先生が科学的に研究して丁寧に教えれば、ペルシア人以外の私たちでもあるいは習得することができるかもしれない。しかし、ペルシャの音楽学校では、ウグイスの技巧を懇切、丁寧に教える事はしないらしいのです。
「ウグイスの技巧のような、デリケートな旋律を歌う場合に不可欠な技巧は、とても教育や練習などで習得できるものではなく、神から授かった天賦の特質であり、1年や2年の練習で身に付けることができると言う安っぽいものではない。したがって、音楽学校では、2年の時に古典音楽を歌う試験があるが、その時にこのウグイスの技巧がうまくできない学生は落第ではなく放校になる。落第なら、次の年の試験に受かる可能性もあるのだが、ウグイスの技巧が1年かかって習得できなかったような学生は、どうせ才能がないのだから、そのために国民の税金を使ったり、偉大な芸術家の労力を取ろうに終わらせるような事は無駄である。それよりももっと才能のある音楽家を育てることに専心しなければならない。その学生には気の毒だが、音楽の専門家になるのは諦めてもらう」とペルシャの音楽の先生は言うのだそうです。
厳しい世界ですね。
このようにペルシャ音楽は詩と旋律が重要な音楽で、今日私たちに馴染みのある西洋音楽の仕組みでできているコード進行などの和声が重要な音楽とはまた趣が異なっています。
また、以前ご紹介した微分音もペルシャ音楽の特徴です。アラビアやペルシャやトルコなど西アジアの音楽は微分音の特徴から西洋音楽しか聴いたことがないとピッチが狂っているように感じてしまうかもしれませんが、慣れてくるとむしろ西洋音楽の12音だけの音楽に物足りなさを感じてくるようになる人もいるようです。
ここで、古代ペルシャ音楽の演奏を聴いてみてください。
プーリー・アナビアン「悠久のペルシャ 音と錦、雅なるサントゥール」
・まとめ
いかがでしたか?
とても美しい音楽でくせになると私は思います。
ペルシャ音楽の他にも西アジア地域の音楽があるのでまた今後ご紹介させて頂きたいと思います。
*参考文献
小泉文夫「民族音楽の世界」