さて今回は、皆様一度は目にしたことがあるであろう昆虫界の狩人、カマキリについて取り上げていこうと思います。なお、カマキリといっても様々な種類がいますので、今回は日本全土に生息しているオオカマキリについて解説していきます。なかなか長くなりますが、是非最後まで見ていたただけると幸いです。
オオカマキリは、その名がさすようにカマキリの中でも大柄な個体が多く、時には10cmにも迫るほどの巨体を誇る個体も存在します。総じて彼らは肉食性の昆虫であり、チョウやハチにバッタ、時には天敵であるカエルといった、本来食べられる側の生物さえ捕食してしまうほどのどう猛さを見せます。
そんなオオカマキリの生態について本格的に解説していきますが、やはり誕生したばかりの時は非常に非力です。彼らの幼虫は前年度の産卵を終えた、雌が産み落とした卵のうから春先に生まれますが、この時から試練が待っています。まず卵から生まれる前から寄生バチやカツオブシムシの仲間に卵の時点で食べられてしまうという危険があります。
さらに、一つの卵のうから産まれる幼虫の数は、何と100匹から200匹ほど生まれて来ます。ですが、この時点では非常に小さく動きも鈍いため、アリや小型の肉食昆虫の餌食になる個体が多いです。また幼虫同士での共食いも多く、一つの卵のうから成虫になれる個体は、僅か一匹から二匹ほどといわれています。そして、最初の試練である誕生した瞬間からの驚異をしのぎ切れた個体が、今度は自分を捕食してきた虫に自慢の鎌を用いて逆に捕食するようになります。そうして、十分に成長して、脱皮を繰り返すことにより、七月から八月ほどで成虫となります。成虫となったオオカマキリは、昆虫界の食物連鎖の中でも上位に君臨するハンターになります。しかし、カマキリの最大の強みは、真正面から獲物に襲い掛かるのではなく、周囲に溶け込む擬態能力と恐るべき瞬発力をいかした奇襲戦法が最大の武器です。その速さは、人間の肉眼でとらえるのは不可能といっても過言ではなく、時には最強のハチとも呼ばれることもあるスズメバチすら捕らえようとするほどです。（スズメバチ側も黙ってやられるわけではなく逆にカマキリを返り討ちにすることもあります。両者はライバルといってもいいでしょう）
そして十分に成熟した個体のオスは交尾相手のメスを探しますが、ある意味このメスとの接触が雄にとってはもっとも命がけといえるでしょう。それはなぜかというと、メスに餌と思われて食べられてしまうことがあるからです。カマキリは基本的に自分以外の動くものを餌とするので、当然同種の個体ですら捕食対象となります。では、どのタイミングで交尾をするのかというと、メスが食事をしている最中に交尾をします。食事中はさすがのカマキリといえども隙を晒すので、その間にオスは交尾を済ませて逃げていきます。もし、しくじってしまった場合はメスのご飯になるのでご臨終です。
そして、秋が深まるころにメスは冬場でもしっかり地面に根付いている植物の茎に、自分の卵とそれを守るための泡状の液体をかけて卵のうを形成して、冬をこさせる準備をします。複数の卵のうを作ったのちメスは体力を使い果たして絶命します。こうして、カマキリの生態のサイクルが作られており、大量に幼虫が生まれてもそれが非力だからこそ様々な生き物の餌となって数を減らし捕食者をたくさん増やさないように出来ています。
余談ですが、カマキリといえばハリガネムシという寄生虫に寄生されていることがあるということがありますが、寄生されているかされていないかを確認する方法があります。それは水につけることです。ハリガネムシは成長するとカマキリを洗脳して川などの水辺に誘導し、自分から飛び込ませます。その際に、カマキリの体から抜け出すのでそれを誘発させることで、寄生の有無を確認できるのです。もし、カマキリの飼育を考えているならば是非お試しください。ちなみに寄生されたカマキリの内臓は大変なことになるのでハリガネムシが出てきたらご臨終です。
そしてもう一つ。実はカマキリはとてもきれい好きで食事のあとは自慢のカマをペロペロなめて綺麗にします。やはり自分の道具の手入れは入念にしないといけませんね。
以上が、オオカマキリについての解説になります。カマキリはオガミムシとも言われることがあり、これは威嚇する姿が手を合わせて拝んでいるかのように見えるからです。人間とも昔から深くかかわりがあり害虫を食べてくれる益虫です。そんなカマキリの知らない一面を知ることができたのならば私は幸いです。最後まで閲覧いただきありがとうございました。
