THRILL SHOCK SUSPENSE #10
2024年1月 変わらない評価を受ける名作推理ADVを紹介 愛及屋烏
探偵 神宮寺三郎シリーズ
Continuation from last page. 10-6 https://no-value.jp/column/51832/
探偵 神宮寺三郎 プリズム・オブ・アイズ
概要
コマンド選択式の探偵物アドベンチャーゲーム『神宮寺シリーズ』の第18作目。 PS4/Switchでの初作品かつ、初めてのマルチプラットフォームとなる。
神宮寺、洋子、熊野それぞれが主役の作品が1本ずつと携帯アプリ版で評価の高い10作品のフルリメイク版が収録。傑作選+短編新作が3本と考えても良い。
謎の事件簿も新作が1作品、そして次回作『ダイダロス:ジ・アウェイクニング・オブ・ゴールデンジャズ』の体験版が収録されている。 なお、本作の収録エピソードはDL専用ソフトとしてそれぞれのストアで単品販売されている。
価格はリメイクと謎事件簿が各400円、新作が各600円(ともに税込)。 極端な話、新作+謎事件簿のみであれば2200円だけで済む。
前述の通り、シナリオは人気の高い作品が選ばれている事もありクオリティは安定している。
携帯アプリ版のリメイクはシナリオ自体はほぼベタ移植だが、グラフィックは全面的にリメイクされている。作品ごとに衣装が異なる洋子の衣装もしっかり描かれている。
新規シナリオは長さ自体はそこまでではないものの、本作では3本用意されているため総合的なボリュームは十分。
また過去作では『亡煙を捜せ!』などの複数主人公作品でしかメインを張る事がなかった洋子と熊野にもそれぞれ単独で新規シナリオが用意された。もちろんそれらの作品でも神宮寺は裏方として要所で活躍する。新作のシナリオのボリューム的には神宮寺のシナリオが一番短い。
新規シナリオのみキャラクター相関図がメモに存在する。 新規作だけでなく、アプリ版の作品もチャプター毎にプレイできるようになっている。
またどのシナリオでもカーソルを合わせた時に新規シナリオは主役の声優、それ以外の作品は神宮寺役の小杉氏によってあらすじが読み上げられる。
評価
僅かな欠点として移植に際し、表現規制で不自然になったシーンが存在する。
本作に収録されている『亡煙を探せ!』では、熊野が神宮寺の拘りについて語る場面があり、元は「マルボロ」と「カミュ」、「ミニクーパー」が言及されていたのだが、本作では商標の問題があったのか、「吸い応えのあるレギュラータバコ」「ブランデー」「コンパクトカー」となっている。
久々の据置機向け新作だが、良くも悪くも何時もの神宮寺といったクオリティ。
シリーズファンはやはり過去作でのアプリ作品のプレイ状況でボリュームは変わってくるものの、システムがシンプルなためとっつき易く、新規プレイヤーならば十分お勧めできる作品となっている。
収録作品
『時の過ぎゆくままに』『6枚の犯行』『亡煙を捜せ!』『アオイメノリュウ』 『イヌと呼ばれた男』『ふた色の少女』『託された指輪』 『椿のゆくえ』『果断の一手』『連鎖する呪い』
『魔鏡の真実』ー熊野主役の新作。 『死者に捧げる石』ー洋子主役の新作。 『虚飾の夜』ー神宮寺主役の新作。
『三郎と謎の秘宝』ー謎の事件簿。
『ダイダロス:ジ・アウェイクニング・オブ・ゴールデンジャズ』序章ー体験版。
あらすじ・1 魔鏡の真実
新宿の建設現場で発掘された古代遺跡。
その調査を行っていた考古学者が謎の失踪を遂げる。
神宮寺と共に彼を捜していた熊野は、やがて発掘された銅鏡にまつわる’’呪い’’を知るのだった。
そして、遺跡では次々と事件が起こる……。
あらすじ・2 死者に捧げる石
デザイナーの友人に頼まれて、新作ジュエリーのモデルをする事になった御苑。
時を同じくして、新宿では遺体に宝石を添えるという奇妙な連続殺人事件が起きていた。
やがて御苑は思いがけない形でその事件に遭遇する事になる。
あらすじ・3 虚飾の夜
白昼の新宿に突如、現れた暴走車。
その事故現場で神宮寺は、奇妙にも神宮寺の大学時代のボクシング部同期だった朝倉との再会を果たす。
その再会は神宮寺を謎と混乱に満ちた長い夜へと導くのだった。
あらすじ・4 三郎と謎の秘宝
数か月依頼が無く、暇な時間を過ごす神宮寺と御苑。
そんな中、「大富 豪」という超有名実業家が事務所に訪れる。
経営の危機に訪れた「大富 豪」の登場で、どんな事件に発展していくのか!?
ダイダロス:ジ・アウェイクニング・オブ・ゴールデンジャズ
DAEDALUS: The Awakening of Golden Jazz
――これは、神宮寺三郎が紡ぎ出す、”はじまりの物語”。
「辿り着けるさ、必ず。ダイダロスという存在に。」
それは、ひと月前のことだった。 ニューヨークで暮らしていた最愛の祖父・神宮寺京助が何者かに殺された。
神宮寺三郎は、京助の遺品と思い出の整理の為、ニューヨークへと降り立つ。
懐かしの街並み、旧友たちとの再会も束の間。
三郎は、京助が死の直前まで「ダイダロス」という言葉について調べていたことを知る。 ダイダロスとは何か? なぜ、京助は殺されたのか?
「三郎、思考の樹を育てろ。」
遠い記憶に残る京助の言葉、思考術の教え……。
まだ、何者でもなかった若き神宮寺三郎が、亡き祖父の為、
そして自分自身のために、ニューヨークに刻み込まれた哀しき事件へと挑む!
概要
新システム
本作ではシステムが一新され、360度ビューで辺りを探索し、相手の表情・感情を読み取り対話する「スタンスチェンジシステム」で情報を聞き取る。
探索や調査で情報を集めると、「思考の樹」が成長し果実を実らせることができれば解明フェイズへと移行するので、事件の発生から解明まで視覚的にわかりやすくなっている。
360度ビュー探索
探索は周囲360度を見渡す事ができ、まるで現場に立っているかの様なリアルな感覚に浸る事が出来る。主人公目線で気になる部分を探索し、隠されたヒントを見つけ出す。
さらに、重要な証拠品などはカーソルを合わせることで「文字」として浮かびあがってくる。
細部まで詳細に探索し、事件解明のヒントを集める。
思考の樹システム
三郎の思考を具現化した「思考の樹」は、探索や相手より引き出した証拠・証言などの情報を整理することができる。会話や探索で情報を得ると樹木は成長し、「思考の果実」が実る。
スタンスチェンジシステム
探索の中で登場人物との会話を深めていくと、「スタンスチェンジシステム」が発動する事がある。
「スタンスチェンジシステム」は会話中の態度(スタンス)を変更(チェンジ)することで、相手から情報を引き出すシステムとなっている。
あらすじ1・2・3
悲しみの街
3年ぶりにニューヨークへと降り立った三郎。出迎えたのは、旧友のベンとアビーだった。
祖父・京助が殺害された現場を訪れた三人は、ひとりの老人と出会う。
彼は祖父と旧知の知り合いのようだった。
「落ち着いたら、ゆっくり話でもしよう」と言い残し、老人は去って行く。
その後、夕食へと出掛けた三人はもうひとりの旧友・レオと再会する。
楽しいひと時。
やがて、話題は三郎と三人が初めて出会った“サマースクール”の話題へと移る。
全員の記憶に残る、ある出来事。サマースクールの先生だったエマが行方不明になった事件。
三郎は他の仲間達と共に調査に乗り出し、子供ながら驚きの推理力で調査を進めるのだが……。
予感
夕食を終え、祖父の事務所を訪れた三郎は、誰も居ない筈の事務所に明かりが点いている事に気付く。
まさか、祖父を殺害した犯人が?
謎の侵入者を確かめるべく祖父の事務所へと踏み込んだ三郎はそこで意外な出会いを果たす。
「今は知りたい。じいちゃんが愛した、この街を。じいちゃんが、見ていたものを。」
この街に息づく祖父の姿、声。
そんなことを肌で感じながら、祖父を知るさまざまな人物たちと出会っていく。
それらがいつしか、三郎の心に変化をもたらしていくのだった。
そんな中、事件の容疑者とされる人物について知ることとなった三郎は、
祖父の最期を知るその男と会うことを決意するのだった。
呪縛の街
祖父の足取りを追い、人々の声に耳を傾ける内に三郎は「呪縛の街」という謎めいた言葉に導かれていく。果たしてこの言葉が意味するものとは何か?祖父との関係性とは?
まだ、確信があるワケじゃない。
ただ、じいちゃんが教えてくれた思考の樹に一滴の水が滲み込んでいくのを……オレは、かすかに感じていた。
若き名探偵は、祖父から受け継いだその能力を徐々に開花させながら犯人へと迫ってゆく。
祖父を殺害した犯人。呪縛の街。そして「ダイダロス」。
幾重にも張り巡らされた悪意が若き三郎を深い闇へと引きずり込んでいく。
見え始めた真実は、祖父が愛したニューヨークの裏の顔を浮き彫りにしていくのだった。
評価
ほぼ同時期のプリズム・オブ・アイズが新規向けとして高評価なのに対し、ダイダロスの評価は既存・新規のどちらにとっても良くない評価に落ち着いている。
グラフィック良し、BGM良し、声優良しなのだが、シナリオや場面展開は微妙でADVゲームとしてのシステム周りは御粗末である。
2018年において、まさかの周に作れるセーブデータは1つだけ。 任意にセーブすることが出来ず、オートセーブを強制させられる。なので、選択肢を間違えてやり直したり、進行に合わせて複数のセーブデータを作っておく事が不可能。
そしてチャプターセレクトやスキップ機能の類は一切ない。 選択肢を間違い、真エンドに辿り着けなかった場合、スキップ無しでゲームの最初から。選択肢によっては一発ゲームオーバーになることもあるが、一応、この時だけはすぐに直前からやり直せる。
360度ビュー探索は2DのADVとしても新機軸だし、目新しい良システムだが、それに頼り過ぎて演出力が不足する場面も多い。 テーブルを囲んで食事をしているシーンや、車を運転しているシーンは臨場感があるのだが。新しい『神宮寺』を作ろうとする余り、ADVゲームとしての最低ラインすら割ってしまった印象。 そもそも毎度の制作陣(現・株式会社オレンジ)とは別なので当然、という声もある。
『夢の終わりに』の前日譚と銘打っているが、掠りもせず連続性でも矛盾している。
ダイダロス単発で発売されていたら、下手をするとシリーズに致命傷を与えるレベルのゲームである。
後述
ダイダロスの失態の所為か、過去の携帯アプリ版の様にスマホ版の新作が一作品だけリリースされて、神宮寺はストップしている状態だが、実は制作会社のオレンジは自社開発で新規作品を出している。
安価の乙女ゲー風の推理ADVが多いのだが、これが値段の割に面白い。
機会があればこちらの紹介もしたいところである。
END.