超有名メタルバンド『メタリカ』と陰の立役者との内紛【後編】

前回で物語の中心となる人物の紹介をしたので、いよいよ物語の核心に迫って行こうと思う。

遭逢

公式動画より

初めてのバンド「パニック」を解散後、彼はリードギタリストを募集する広告を地元新聞「リサイクラー」に掲載していた「メタリカ」のオーディションを受けて、見事採用となりリードギタリスト兼メインソングライターとしてのバンド内の地位を勝ち取った。
しかし、同時にこの時彼は大きな問題を抱えていた。
彼自身も父親と同じようにアルコールに対する問題を抱えてしまっていたのだ。
そればかりか、ドラッグに関する問題も抱えていて、そのことでたびたび他のバンドメンバーと衝突を繰り返していた。
それとは対照的にバンドへの貢献度はとても高いものだった。
実際「キル・エム・オール」に収録された4曲を共作し、最終的に1984年のアルバム「ライド・ザ・ライトニング」に収録された2曲を共作している。
「ライド・ザ・ライトニング」は「メタリカ」の中でも名盤と名高い一枚だ。
しかし、やはり彼のアルコールとドラッグに関する問題は大きく、たった2年で「メタリカ」を解雇されてしまっている。
「メタリカ」はファースト・アルバムのレコーディングのためにニューヨークへ向かうが、現地に着くとメンバーはムステインに解雇を宣告。
強制的に荷物をまとめさせると、ロサンゼルス行きのバスに押し込んだ。バスの乗車中、ムステインは手形の裏にいくつかの叙情的なアイデアを走り書きし、それが後に 1988 年の「メガデス」の「アルバムソー・ファー・ソー・グッド…ソー・ホワット」収録曲「セット・ザ・ワールド・アファイア」となった。
この屈辱的なクビ宣言は後にムステインはこの解雇が親の死より辛い出来事であったと語っている。

再出発

失意の中ロサンゼルスに戻ったムステインは、「メタリカ」を見返すため彼らを越えるバンドを作ることを決意。
同じアパートの下の階に住んでいた”デイヴィッド・エレフソン”との出会いがきっかけとなり(エレフソンが夜中までベースを弾いていた事に腹を立てたムステインが、植物の鉢を窓から投げ捨ててエアコンを壊したことがファーストコンタクトだった)、1983年に「メガデス」を結成。
オーディションを重ねても適任者が見つからなかったため、自身がギターを弾きながらヴォーカルを担当することになった。

回帰

公式動画より

1985年に『キリング・イズ・マイ・ビジネス』でデビュー。翌年にはメジャー・レーベル「キャピトル・レコード」から「ピース・セルズ…バット・フーズ・バイイング?」を発表。
続く1987年には最初のワールド・ツアーを行うなど、徐々に成功の道を歩み始める。
1988年には超大御所バンドである「ディオ」、そして「アイアン・メイデン」のツアーで前座を務め、「アイアン・メイデン」「キッス」と共に「モンスターズ・オブ・ロック」への出演を果たした。その一方でアルバムを発表するごとにメンバーを解雇したり、薬物依存症治療施設への入所を繰り返したりするなど、周辺のトラブルに事欠かなかった。
「メガデス」の人気は1990年発表の4作目「ラスト・イン・ピース」で頂点に達し、リードギタリストに”マーティ・フリードマン”を加えたことでメンバーも固定化された。
1990年から1995年まで6年連続でグラミー賞の「ベスト・メタル・パフォーマンス」にノミネートされるなど、一流アーティストとしての地位を不動のものとした。私生活でも1991年に結婚、1994年には娘が産まれている。

受難とBIG・4という名の勲章

ところが、2002年に左手の橈骨神経を痛めたことを理由に「メガデス」からの脱退を発表し、突然音楽活動を休止した。ある医師からは二度とギターを弾けないとも言われるほどの怪我だったが、理学療法により回復。そして療養中にクリスチャンになった。
2004年より「メガデス」としての音楽活動を再開。2010年には「メタリカ」「スレイヤー」「アンスラックス」と共に“BIG4(スラッシュメタル四天王)″として共演を果たし、長年にわたって確執のあった「メタリカ」のメンバーとも和解した。(和解はしたがデイヴの後任として加入したカークハメットの事を悪く言ったり、過去に「メタリカ」にされた仕打ちをチクチク言っているようだ。「メタリカ」の方もデイヴが初期の「メタリカ」の功労者である事についてまったく言及しないので、どっこいどっこいだとは思うが…。)

後書き

いかがだっただろうか。
筆者である私も最初はこの話を美談として認識していたのだが、記事を作成する上で色々と調べている内に一言で美談と片づけて良い内容ではないのではないだろうかと感じてきてしまった。
しかし、デイヴが後にスラッシュメタルの金字塔と呼ばれる「メタリカ」をクビになり、そこから自分のバンドをBIG・4に肩を並べるまで育て上げたのは、まがいようもない事実だし、その執念や努力にはリスペクトを感じざるをえない。
読者も少しでもそう思ってくれたら嬉しい。
ただ、最後になって恐縮だが初めて聴くスラッシュメタルが「メガデス」というのはあまりお勧めしかねる。
そもそもスラッシュメタルというジャンルは万人受けしないジャンルであるうえに、デイヴの歌声が独特過ぎて衝撃を受けてしまうかもしれない。
個人的にお勧めのバンドはやはり、「メタリカ」でお勧めのアルバムは「Death Magnetic」である。
このアルバムはザ・スラッシュメタルという感じでそれでいてポップでキャッチーなので聴きやすく、スラッシュメタルの世界を知るためにはお勧めの一枚だ。

公式動画より

これを読んでくれた読者が少しでも、スラッシュメタルというジャンルに興味を持って頂けたら嬉しい。

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hru

狭く深くがモットー。実際のところは広く浅く。 音楽、プログラミング、その他諸々、できるだけ狭く深く語って行きたいです。

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