その日は
地球ドラマチックを見ていた
ふだんは動物の内容以外は見ないんだけど
興味深い内容をやっていたから見入ってしまった
『イギリス ビッグベン大改装計画』
それは
イギリスの象徴である大時計ビッグベンを止めて
ビッグベンの壁・時計すべて改装するというものだった
イギリスにとって
この計画はふだん止まることなく時を刻んでいるビッグベンが長い期間止まってしまうというものなので
大事件なんだそう
止まる期間はなんと4年
4年間聞きなれたイギリスの自慢の鐘の音が聞けなくなるのはたしかに事件かもしれない
日本で言ったらなんだろう…
スカイツリーが4年間大改装して、タワー全体がすっぽりシートで覆われてしまうようなものなのだろうか
たしかにそれは寂しい
ビッグベン大改装計画は全イギリス中に報じられ
ついにこの大改装計画が始まった
時計は2017年に止められた
ということは次にビッグベンが動き出すのは2021年
2021年になるまで、イギリスに行ってもあの鐘の音は聞けないのか…
ビッグベンはもう長い間、4人の整備士によって守られてきた
彼らはビッグベンのことを我が子のようにかわいがってきた
なので、地球ドラマチックの記者が
「この(ビッグベンの内部の)機械に向かって「おはよう」っていったりするの?」と聞くと
彼はYesと答えた
彼らの技術はすごい
普通振り子は薄い針金の板をヒモのようにして
そこに振り子をぶら下げて動かしているのだが
ビッグベンも同じ構造の振り子が中に入っているのだそう
彼らは
振り子をぶら下げているその針金がひび割れていないか
そろそろ交換時なのではないかと毎日チェックしている
そして
私も内容を完全には覚えていないが
一回ビッグベンの心臓部の機械が大破したことがあったんだそう
原因はいつも内部で時計を動かしている重りをつるしている部分が切れて落下し、
そこからドミノ式に部品が壊れ、部品が部屋中に飛び散ったんだそう
その話を聞いて記者は言った
「ビッグベンは巨大な鐘を鳴らすほどの大きな力を持っていますが、逆に言ってしまえばその力が内部にいってしまえば、部屋中に部品を飛び散らすほどのパワーを持っているんですね」
もし人がいればケガ人が出る大事故になっていました
今回の4年間という長い期間ビッグベンを止める計画は
4人の整備士にとっても初めてのことなんだそう
この計画について語った彼らの言葉が私は心に響いた
「ずっとこの鐘の音を聞きながら作業してきましたからね、音が鳴らない方が不気味ですよ」
「みんなはビッグベンの機械や鐘の音が強烈な音だと言うけど、俺たちにとってはビッグベンの静けさこそが強烈な音だと思うよ」
”静けさこそが強烈な音”
確かにそうかもしれない。私も日常生活でそう思うことがたくさんある
私は音楽も聴かずただ電車の中でぼーっとしているとき
心配事や考え事が次から次へとあふれ出てくる
本当はこんなこと考えたくないのに、ぼーっとしたいのにできない
そんなことが多い。そんな時に思う。
静けさこそが最大の騒音じゃないかと。
そのときのことがこのビッグベンの言葉と重なる。
私の中でしばらくその言葉が心に響いていた。
ずっと面倒を見てきた
15分ごとにきちんと鐘を鳴らしてくれたビッグベンが4年間鳴らなくなってしまうのは
彼らもとても寂しいのだそう
それは4人の整備士だけではなく、ビッグベンのガイドさんもビッグベンを支えてきた人もすべてそう
ガイドさんの話によると
過去にはチャールズ皇太子、オバマ夫妻とその娘さんもいらしたのだそう
オバマ婦人と娘さんが一緒になってはしゃぎながら軽やかな足取りで階段をのぼって行ったときはとてもチャーミングで忘れらないとガイドさんは語る
ビッグベンを守り通してきた彼らは楽しそうに語る
鐘ができた当初
「鐘を突くハンマーは250㎏にしてください。そして鐘とハンマーの距離は10㎝にしてください。そうしないと鐘にひびが入ってしまいます」と規定を伝えたはずなのに
実際に届いたハンマーは500㎏、ハンマーと鐘の距離は15㎝になったのだそう
規定の倍。
そのおかげでビッグベンに鐘を設置して最初の年に
ビッグベンの大きな鐘にひびが入ってしまったんだそう
そうなってようやく
250㎏のハンマーが届き、鐘とハンマーの距離も10㎝になったのだそう
それ以来、鐘にひびが入ることはなくなったのだそう
整備士の彼は自慢げにこう話していた
「ほーれ、それ見たことかってね」
鐘を作った会社にいる彼も
鐘を「私が作った」と語る
記者が「あなたは当時いなかったのでは?」と聞くと
「この鐘はうちの会社が作ったんです。だから”私が作った”なんですよ」
と答えた
15分に一回って結構頻繁に鳴るんだね
その鐘の音は8キロ先まで聞こえるのだそう
ビッグベンができたのは高度経済成長期
それまでは、みな日の出とともに起きて仕事をし日暮れとともに眠りに入っていた
しかし、高度経済成長期に入ると彼らの生活は分刻みになっていった
そこで作られたのがビッグベンだった
今でも
ビッグベンは毎日24時間365日多くの人に囲まれて写真を撮られ
整備士の彼らもまた、腕時計をしていてもまずビッグベンを見上げるのだそう
私もここまで語られたらビッグベンを見に行きたくなる
再びビッグベンの鐘が響き渡る1年後
私はイギリスに行ってぜひともビッグベンにあいさつしに行きたいと思う
イギリスといえば、英語にはイギリス英語とアメリカ英語があるらしい
またこのことについてここに語りに来よう
では