『野球のチーム (東北楽天ゴールデンイーグルス)4』

2019年

チームスローガンは、「RESTART! 日本一の東北へ」。

本拠地の楽天生命パーク宮城では、一・二軍の主催公式戦開催日に、場内の売店・チケットカウンターでの決済をこのシーズンから現金以外の手段に統一している(プロ野球球団の本拠地球場では世界初の「完全キャッシュレス化」)。

また、前年まで私設応援団が作曲していた応援歌に著作権上の問題が生じたことから、球団と私設応援団の間で応援歌の扱いを協議。

上記の問題が解決された応援歌に限って、前年からの継続使用が認められた。

補強面では、シーズン終了後に西武から国内FA権の行使を表明していた浅村栄斗(前年のパ・リーグ打点王)、右投手のアラン・ブセニッツ、右の長距離打者ジャバリ・ブラッシュを相次いで獲得した。

また、ヤクルトから戦力外通告を受けていた由規(仙台市・仙台育英高校出身)を育成選手として契約(7月28日付で支配下選手登録)。

由規とは高校での1年後輩に当たる橋本到が巨人との金銭トレード、広島の福井優也が菊池保則との交換トレードで入団した。

育成面では、三軍の創設を視野に、実戦経験を増やしながら若手選手の育成や故障者の復帰を促す環境を整備することをGMの石井が計画。

シーズン中の6月には、この年に支配下登録選手から育成選手に移行させた下妻貴寛捕手と野元浩輝投手を、1か月限定ながらBCリーグの武蔵球団へ派遣した。

春季キャンプでは、ルイス・ヒメネスが入団テストに参加。

テストへの合格後に育成選手契約を締結したうえで、3月のオープン戦期間中に支配下選手として登録した。

キャンプ終了後の3月上旬には、チームが台湾でLamigoモンキーズ(中華職業棒球大聯盟に加盟するプロ野球球団)との2連戦に臨んだ。

その一方で、この年から正式に捕手へ復帰した岡島が春季キャンプ中に左肩、球団との間で7年契約を結んだ則本昂が3月中旬に右肘の手術を受けた。

則本についてはレギュラーシーズン中の実戦復帰が難しい状況にあったため、DeNAから熊原健人(仙台大学出身)をシーズンの開幕直前に濱矢廣大との交換トレードで獲得した。

開幕投手には岸が移籍後初めて起用されたが、後に故障で長期離脱を余儀なくされている。 

一軍はレギュラーシーズンに入ってから、38歳の平石による指揮の下で開幕ダッシュに成功。

開幕11試合目に当たる4月29日の対西武戦(メットライフドーム)で、シーズン初の単独首位に立った。

公式戦の開幕から10試合以上経過した時点での単独首位は、チームとしては2017年8月14日以来2シーズン振り、NPB球団の30代監督としては1981年の武上四郎(ヤクルトスワローズ)以来38年振り、パ・リーグ球団の30代監督としては1976年の上田利治(阪急ブレーブス、いずれも当時39歳)以来43年振りであった。

さらに、4月20日の対オリックス戦(楽天生命パーク)で、一軍公式戦における球団通算900勝を達成した。

5月には、8日の対ソフトバンク戦で球団史上初めて、最大7点差からの逆転勝利を記録。

15日の対日本ハム戦(いずれも楽天生命パーク)でも、4回裏まで0 – 8のスコアで大差を付けられながら、延長11回の末に9 – 8のスコアで逆転サヨナラ勝利を収めた。

パ・リーグの公式戦において、同じ月に同じ球団が7点以上のビハインドからの逆転勝利を2度以上記録した事例は、この月の楽天が初めてである。

パ・リーグの首位で迎えたセ・パ交流戦では、6月15日の対広島戦(楽天生命パーク)で1試合7本塁打のチーム新記録を達成。

NPBの一軍公式戦では初めて、外野のスタメンを新人の3選手(辰己涼介・渡邊佳明・小郷裕哉)だけで賄うなどの積極的な采配も背景に、前年から一転して勝ち越し(10勝8敗)で終えた。

しかし、交流戦優勝のソフトバンクにリーグ首位の座を明け渡すと、交流戦の終盤からリーグ戦再開後の7月上旬まで10連敗を喫した。

リーグ戦の再開後は、右打ちの長距離打者をトレードで相次いで獲得。

下水流昂が三好匠との交換トレードで広島から、和田恋が古川との交換トレードで巨人から入団した。

7月9日の対オリックス戦(山形)では、則本昂大が先発投手としてシーズン初登板を果たすと、交流戦終盤からのチームの連敗を10で阻止した。

さらに、一軍は8月に「月間4度の5時間試合」というNPBのチーム記録を達成するほど熱戦を続けた末に、ロッテとの3位争いを僅差で制して2年ぶりにクライマックスシリーズへ進出。

二軍も、新監督の三木の下で、球団史上初めてのイースタン・リーグ優勝を果たした。

8月31日の同リーグ・対西武戦では、当時二軍で調整中だったオコエが(一軍を含めて)球団史上初の公式戦サイクルヒットを達成している。

一軍のレギュラーシーズンでは、則本昂大が後半戦だけで5勝を挙げたものの、入団1年目から続けていたシーズン2桁勝利が6年でストップ。

開幕投手の岸も故障が相次いだ影響で3勝にとどまったが、前年に一時育成契約を結んでいた入団4年目の石橋良太が先発陣へ定着すると、美馬と並んで8勝を記録した。

もっとも、チーム内で最も多く白星を稼いだ投手は、シーズンの大半で先発陣の一角を担った辛島航(9勝)であった。

救援陣では、クローザーへ返り咲いた松井裕がパ・リーグおよび自己最多の38セーブを記録。

また、シーズン中に右肩の手術を受けた福山に代わって、ブセニッツと森原がセットアッパーとして好成績を残した。

打撃陣では、ブラッシュがチームの外国人選手としては歴代最多のシーズン33本塁打を放ったほか、浅村も西武時代の前年に続いて本塁打を30本台(33本)に乗せた。

クライマックスシリーズ(CS)では、レギュラーシーズンを2位で終えていたソフトバンクとのファーストステージに先勝。

第2戦からの2連敗でファイナルステージへの進出には至らなかったものの、この試合からポストシーズン10連勝で日本シリーズ3連覇を成し遂げたソフトバンクに、ポストシーズン唯一の黒星を付けた。

もっとも、ソフトバンクに対しては、二軍もファーム日本選手権で後塵を拝している。

創設時より15シーズン連続で現場に携わっていた平石は、歴代の一軍監督で初めて正式就任1年目でレギュラーシーズンのチーム最終勝率を5割以上に乗せた。

しかし、球団は一軍がCSのファーストステージで敗退した直後に、二軍の三木監督が平石監督に代わって一軍監督へ就任することを発表した。

平石監督の退任は契約期間(1年)の満了に伴う決定でもあったが、発表に際しては、「決定に至った経緯や、今後のチームに求められるビジョンをまとめた文書をGMの石井が公開する」という異例の対応も為された。

また、小谷野・森山・佐藤・高須のコーチ契約を解除したほか、宮城県内の高校出身の選手(橋本・今野龍太・西巻賢二)などに自由契約を通告。

福山、燿飛、前年に開幕ローテーションの一角を担っていた池田隆英などが育成契約へ移行した。

球団では「二軍のGM」に相当する役職(二軍統括)を新設したうえで、同職の就任を平石監督に要請することも計画していたが、平石監督は自身の意向で退団した後に、ソフトバンクの一軍打撃兼野手総合コーチへ転身(2022年シーズンからは西武で一軍の打撃コーチを担当)。

平石を支えたコーチや、球団生え抜きの選手がチームを離れる事態も相次いだ。

現に、今江と同じく故障の影響で出場機会が減っていた嶋は、今野に続いてヤクルトへ移籍。

コーチ陣からは、森山がソフトバンク、小谷野がオリックス、二軍打撃コーチの栗原が中日のコーチに転じている。

ドラフト会議では、1巡目で最初に指名した佐々木朗希(岩手県立大船渡高校)の独占交渉権を4球団競合の末に逃したものの、再指名で小深田大翔(大阪ガス)の交渉権を獲得。

育成ドラフト会議での指名者を含めて、11人もの新人選手が入団した。

その一方で、今江、橋本、球団生え抜きの戸村健次・西宮悠介が現役を引退。今江は育成コーチ、戸村と西宮は打撃投手として球団に残った。

チームがこの年のレギュラーシーズンを3位で終えたことによって、楽天野球団では最終順位が3位以上の球団へ自動的に与えられる4年後(2023年)のレギュラーシーズン開幕カードの主催権を保有していたが、2021年のシーズン終了後にこの権利を日本ハムへ譲渡した。

日本ハムはこの年のレギュラーシーズンで5位だったものの、2018年の最終順位が3位だったことから、2022年シーズンの開幕カードを主催できる立場にあった。

しかし、2023年シーズンに本拠地を札幌ドームから新球場(エスコンフィールドHOKKAIDO)へ移すことが決まっているため、新球場で開幕カードを主催すべく楽天野球団と交渉。

1年にわたる交渉の末に「開幕戦では異例」とされる主催権の交換に至ったため、当球団では2022年の開幕をホームゲーム、翌2023年の開幕をビジターゲームとして臨むことになった。

☆三木監督時代

2020年

チームスローガンは「NOW or NEVER いまこそ 日本一の東北へ」

前年に二軍で三木を支えたコーチ陣から、野村克則・鉄平・小山・塩川が一軍へ異動。

与田の下で中日の一軍内野守備走塁コーチを務めていた奈良原浩を二軍監督、前年に現役を引退したばかりの館山昌平をヤクルトから二軍投手コーチ、地元・東北学院大学出身の星孝典を西武から二軍バッテリーコーチに招聘した。

また、開幕前からの故障でシーズンの中盤以降を棒に振ったチーム最年長選手の渡辺直人を球団史上初の選手兼任コーチ(内野手兼一軍打撃コーチ)へ起用。

永井と牧田が現役引退後初めて二軍のコーチとして現場に復帰したほか、前年までロッテ球団の特別職(スペシャルアシスタント)に就いていた同球団OBの大村三郎を二軍統括職に相当する役職(ファームディレクター)に迎えた。

補強面では、前年の11月中旬から1か月ほどの間にロッテから楽天へ3名、楽天からロッテへ4名の選手が交換トレードを介さずに移籍した。

楽天からは、美馬が国内FA権の行使によって移籍したことを皮切りに球団から育成契約への移行を打診されていた西巻と、外国人枠などとの兼ね合いで自由契約になっていたハーマンもロッテへ移った。

ロッテからは、FA権を行使することを表明していた鈴木大地を、金銭トレードで涌井秀章をそれぞれ獲得。

鈴木の獲得に伴う人的補償(プロテクト枠から外れた保有選手1名の譲渡)措置で小野郁が移籍する一方で、美馬のロッテ入団に伴う同措置で酒居知史が加入した。

楽天から人的補償措置で他球団へ移籍した選手は、小野が初めてである。

また、前年までクローザーを務めた松井が先発に復帰するチーム事情から、2018年までサンディエゴ・パドレスに所属していた牧田和久や、前年までロサンゼルス・ドジャースに所属していたジョン・トーマス・シャギワを獲得した。

春季キャンプ中の2月11日には、チームの第2代監督および名誉監督を務めた野村克也氏が虚血性心不全によって84歳でその生涯を閉じた。

球団では、翌12日から15日まで楽天生命パークに献花台を設けるなど、野村氏への弔意を示している。

また、キャンプ中にはオリックスを自由契約となっていたステフェン・ロメロが入団。

この年は春季キャンプの直前(1月下旬)から新型コロナウイルスへの感染が拡大している影響で、3月20日に予定されていたレギュラーシーズンの開幕が6月19日にまで延期された。

レギュラーシーズンに入ってからは、鈴木大地・ロメロ・小深田が加わった打線がチームの開幕ダッシュに大きく貢献。新人選手からは、小深田に加えて、慶應義塾大学から入団した津留﨑大成も、開幕から長らく一軍の救援陣に入っていた。

その一方で、チーム事情などから開幕一軍入りを逃していたウィーラーが6月25日に池田駿とのトレード、高梨が7月14日に高田萌生とのトレードによって巨人に相次いで移籍している。 

一軍はレギュラーシーズンの前半まで、ソフトバンク・ロッテとの三つ巴で首位争いを展開。

7月21日の対オリックス戦では、8回表の途中から試合を中断した末に、濃霧によるコールドゲームが成立した(NPBの一軍公式戦では20年ぶり5回目)。

さらに、9月10日の対ソフトバンク戦(18:00開始)は、雨天による2度の中断をはさんで23:38に終了。

中断時間の合計は1時間32分(1回目37分・2回目55分)で、パ・リーグの公式戦では史上8番目の長さ(1970年以降の公式戦では最長)だった[124]。

先発陣では松井と岸、救援陣ではシャギワが不振。

ブラッシュおよび、松井に代わるクローザーとして開幕から好投を続けていた森原は故障、開幕から涌井と共に先発陣を支えてきた則本昂大は試合中のアクシデント(転倒による右手の負傷)で戦線を離脱した(則本は9月から復帰)。

もっとも、8月下旬に3位へ転落してからは失速。

開幕からコーチ職に事実上専念していた渡辺直人が現役引退を表明した9月には、この年に広島へ入団したばかりのD.J.ジョンソン投手を金銭トレードで獲得したほか、福山を支配下登録選手に復帰させた。

ジョンソンが移籍後、福山が支配下復帰後初めて登板した同月22日の対ロッテ戦で、一軍公式戦における球団通算1000勝を達成[125]。

シーズン特例による新規契約期限の前日(9月29日)には、巨人から金銭トレードで田中貴也を獲得した。

シーズン終盤の10月以降は、松井を救援要員に戻す一方で、先発で6試合に登板した岸が5勝無敗という好成績で10・11月リーグ投手部門の月間MVPを受賞。

しかし、一軍では逆転負けが12球団最多の32試合に達した結果、シーズンを4位で終えた。

逆に、二軍は奈良原監督の下でイースタン・リーグ2連覇を達成。

球団史上初めてのファーム日本選手権制覇も成し遂げている。  

移籍組はおおむね好調で、鈴木大地が打率.295(パ・リーグの最終規定打席到達者としては5位)、ロメロが24本塁打、牧田和久が登板52試合(チーム最多およびリーグ3位の登板数)で防御率2.16を記録。

涌井はとりわけ好調で、シーズン初登板からの先発8連勝(プロ入り後自身最長)、2桁勝利(最初に入団した西武・移籍元のロッテ時代に続いて3球団目、パ・リーグ3球団のみでの達成は史上初)、千賀滉大・石川柊太(いずれもソフトバンク)と同じ11勝でリーグ最多勝利(西武時代にも2回・ロッテ時代にも1回達成、3球団での達成はNPB史上初)を相次いで記録した。

また、開幕から4番打者を任されてきた浅村が、32本塁打で本塁打王のタイトルを初めて獲得。

シーズン中盤から茂木に代わって正遊撃手に定着した小深田は、渡辺直人が保持してきた複数安打試合の球団新人最多記録を33試合に更新したほか、シーズンの最終規定打席へ到達するとともにパ・リーグ6位の打率.288を記録した。

レギュラーシーズン終盤の10月26日に開かれたドラフト会議の1巡目では、早稲田大学の早川隆久に対する独占交渉権を、GMの石井が他の3球団との指名重複の末に抽選で獲得(後に入団)。

最終盤の11月には、チーム最年長投手の久保裕也と楽天生え抜きの現役投手としては在籍年数が最も長かった青山が現役引退を表明した。

由規、熊原、耀飛、近藤弘樹、山下斐紹などに戦力外通告(近藤は通告後にヤクルト・山下は中日に育成選手として入団、由規は埼玉武蔵・耀飛は福島レッドホープスへ入団、熊原は現役を引退)。

一軍のコーチ陣から、伊藤智仁がヤクルトへ復帰、笘篠誠治が退団、野村克則が育成コーチへ異動した。

その一方で、球団ではGMの石井へ一軍監督との兼務を要請した末に、現場での指導歴のない石井との間で複数年契約を改めて締結。

レギュラーシーズン終了直後の11月12日には、石井がGMを続けながら2021年シーズンから一軍監督を兼務することや、三木が二軍監督に復帰することを発表した。

5続く・・・

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