THRILL SHOCK SUSPENSE #18
2024年7月 変わらない評価を受ける名作推理ADVを紹介 愛及屋烏
ゴーストトリック(2011-2023)
Continuation from last page. 18-2 https://no-value.jp/column/74033/
ゲームの特徴
シセルは一晩のうちに、様々な”死”と巡り合う事になる。
本作は、そんな死者たちの運命を”死者のチカラ”による過去改変能力によって死から救いつつ、シセルを取り巻く事件の真相を突き止めるのがゲームの主な目的となっている。
シセルの能力は主に4つ。
《トリツク》
物体に文字通り取り憑く事ができる。ただし、コアと呼ばれる光球の見える物体にしか取り憑く事ができない。
コアを持つ様々な物体を乗り継いで行く事が、本作での主な移動手段となる。 ただし、現在位置から一定の範囲内にある物体にしか移動する事はできない。
副次効果としてこの能力の使用中は時が止まる。
シセルは死んでいるので生きている人間と話すことは原則的にできないが、死の運命を改変された人物にはコアが出現し、人物のコアと接続する事で会話できるようになる。
実際は会話というよりも念話に近く、思考が相手に伝わってしまう。 結果として、互いの心が読める様になる(=互いに嘘がつけない)という特徴がある。
《アヤツル》
取り憑いた物体を文字通り操る事ができる。なお、効果は物体によって異なる。 現在取り憑いている物体に《アヤツル》を使うと、どのような効果が発動するかは上画面で確認する事ができる。
死者であるシセルが現世に直接介入する唯一の手段であり、死の運命を直接妨害する他にも、物体の配置を変えて《トリツク》を使う為の道を作ったりと、攻略上重要となるアクションである。
積極的に《アヤツル》事が突破口を開く事に繋がる。
《死の4分前》
死んで直ぐの亡骸に《トリツク》事で、その人物が死ぬ4分前に戻る事ができる。
戻ってから4分の間に別の人物が死亡した場合、その人物の亡骸に《トリツク》をする事で更なる過去に戻る事ができる。
《デンワ線》
電話に《トリツク》をする事で、遠く離れた場所にある他の電話に電話線を経由して移動する事ができる。
番号が分かっていればどこにでも移動できるが、《死の4分前》の世界に来ている場合は通話中の電話線しか使えない。
《死の4分前》の世界ではシセルの移動と同時に電話が切られてしまう為、事実上の一方通行になっている。
それまでのやり取りや表示される通話先の状況などを参考に、通話先へ移動するか留まるかを決めなければならない。迂闊に移動すると移動が封じられ、詰みの状態になってしまうので、やり直しとなる。
評価
《トリツク》と《アヤツル》を使った独特の操作感
このゲームは《アヤツル》でギミックを発動させ、移動手段を確保したり、死の運命を妨害する事が主な目的となる。
「リアルタイムで変化していく状況を観察し、特定のタイミングで特定の物体に《アヤツル》を使う」「まず仕掛けを動かし、その仕掛けによって移動していく物体にタイミングよく《トリツク》を使って一緒に移動する」等、チャンスが1回しかなく咄嗟の判断が求められる、というシーンも多く、リトライしながら試行錯誤する事が基本となる。
ステージに仕掛けられたギミックはどれも非常に個性的であり、クリアに関係なさそうな物でもついつい《アヤツル》を使ってみたくなるような不思議な魅力を発している。
単体では何の役にも立たないように見えるギミックでも、組み合わせる事によって状況を大きく変える事が可能。
物語が進むに従って難易度が上がる分、ギミックが上手く噛み合ってゴールに到達した際の快感は絶大である。
ミステリーとオカルトが融合したシナリオ。
謎が謎を呼び、話の展開に応じて増えていく、魅力的な登場人物を巻き込んで、どんどん展開されていくミステリー。 それが後半に入り一気に収束していく様はまさに圧巻。
予想しえない展開が立て続けに待っており、その質は高い。
終盤の展開については序盤から丁寧に伏線が張られており、2周目をプレイするとまた新たな発見がある。
テキストは、シナリオ担当である巧氏の魅力がいかんなく発揮されており、特に『逆転裁判』シリーズで氏のファンになった層からは好評。
所々で登場する、真面目な内容の筈なのに思わず吹き出してしまう、ユーモアに富んだ言い回しの数々は、何処となくポップなキャラデザと相まって、『死』の運命を改変するという、重くなってしまいがちなストーリーの雰囲気を全体的に明るくしている。
失敗パターンには、救うはずの相手をプレイヤー自ら死へと導いてしまったり、より酷い死に方をさせてしまう物もある。 文にすると、とんでもなく酷い展開だが、実際の内容はコメディ色溢れる展開で笑いを誘う物ばかりとなっており、本作の魅力に貢献している。
若干の不満点
操作がかなり独特な割に、ゲーム中に示されるヒントが不親切気味。
序盤は慣れないので苦労するが、総当たりで行けるので何度か繰り返せばクリア可能。 後半は慣れてくるがその分仕掛けの難易度も増し、初見殺しも多い。特に中盤の山場である第9章などはかなりの難関。
《アヤツル》後に出る吹き出しや死亡後のメッセージなど、失敗時にメッセージでヒントが与えられる事は多いが、その操作性により解り辛い事が多々ある。
また、移動方法に気付かないと身動きが取れない場面では、ヒントが無く、プレイヤー自身が気付くまで進められない事もある。
前述のようにリアルタイムで状況が変化する都合、気付いた時には既に手遅れということもしばしば。
Switch版及び、他機種への移植前はセーブファイルは1つで、常に上書きになる。
また、セーブできない時間が長い。ゲームの大半はテキストによるキャラクター同士の会話に費やされる為、プレイヤーがセーブするタイミングの判断を誤った場合、一度見たテキストをダラダラと見る事となる。
移植後の変更点
・グラフィック強化やUIの最適化
現行機にあわせてグラフィックの高解像度・高フレーム化が図られた。 ユーザーインターフェースも1画面で快適にプレイできるよう最適化されました。
Switch版にはタッチ操作の追加や実績要素の追加がされた。 しかし、高fps化を狙った弊害でムービーが高速化する現象等の不備も。
・イラストやBGMを楽しめるコレクション
ゲームを進める事でさまざまなイラストやBGMを集められる、コレクション機能が追加。集めたコレクションは、ゲーム内のメニューからいつでも視聴可能。
一部初公開の設定画が鑑賞できたり、名場面とともに音楽が聴けたり、ゴーストトリックの世界をより楽しめる仕掛けとなっています。
・パズルやチャレンジを追加
スマホ版で好評を博した「ゴーストパズル」が登場。 本作のワンシーンをスライドパズルで楽しめる。
更に、設定されたさまざまな条件を目指す「チャレンジ」も追加。 達成難易度の高いチャレンジもあり、やりこみ要素も十分。
後述
3DSの諸々が終了したので、DS系の名作の移植の流れは歓迎の一言。
逆転裁判の移植シリーズも今度の『逆転検事1・2』で完了し、関連作が全てSwitchで遊べるようになった。
移植に伴ってネタバレ防止の配信禁止も緩和され、プレイ実況される事も増え、再評価されている。
END.