わたしが思う、これからも受け継がれてほしい「仙台の冬景色」。

クリスマスが終わると、街中は休むことなくお正月仕様に様変わりする。店舗の門前に飾られた正月飾りを見たり、スーパーに玄関飾りや鏡餅が並ぶといよいよ今年も終わりか…とさみしく思うと同時に、久しぶりに会う家族・友人の顔が浮かんでワクワクする。今年はみんなでなにを食べよう。お鍋やおせち、お雑煮、その土地の郷土料理…。

全国各地には「伝統野菜」というご当地野菜が存在する。
「伝統野菜」とは、地域や文化に根付いて長い歴史を持ち、地域や文化に根付いた野菜のことを指す。有名どころでいえば京都府の京野菜、石川県の加賀野菜などだ。
仙台の冬の伝統野菜といえば、仙台市宮城野区岩切が発祥といわれる『仙台曲がりネギ』がある。
「曲がりネギ」といっても、最初から曲がっているわけではない。ある程度まっすぐに育った長ネギを一回抜いて傾斜を付けた土の上に寝かせると、長ネギは自発的に寝ている状態から太陽に向かってまっすぐ上に伸びていこうとする。これが「曲がりネギ」になる。ふつうのネギよりおいしくて値段が高いのは、ネギ自身がおいしくなろうと頑張るからだ!

今日もいい感じに曲がってくれてありがとう。

また、旬の食べモノは甘みや旨味が増しておいしいだけでなく、その季節の身体にいいといわれる。
たとえば「ネギ」には、風邪や感染症予防になる免疫力を高める「β-カロテン」、冷えた体を温めてくれる「硫化アリル」、乾燥した肌にうるおいを与える「ビタミンC」、腸内環境を整える「食物繊維」などが入っている。
「ネギ」を食べない理由はない。曲がりネギの入ったすき焼きなんて最高だ!滅多にお目にかからないけど。お鍋ならなんとかできるかな…。
あなたが普段の生活の中で「今晩のメニューはこの前SNSで見たレシピのアレにしよう~」と何気なく地元の野菜を購入するという行動は、実は地元の地域活性化に役立っている。住んでいる地域のモノが流通することは、住んでいる地域を守っていることになるのだ。


仙台のお正月の行事といえば、毎年恒例の「仙台初売り」。仙台市の中心部の商店街などで行われているが、これはもともと仙台藩の「賣初賣買」(うりそめ・ばいかい)という年始の伝統行事だったものだ。仙台の初売りは豪華な景品がつくことで全国的に有名で、景品目当てに年末からお目当ての店舗の前に並ぶ人もいたり、遠くからわざわざ仙台にくる人もいたりなど毎回にぎわっているが、この行事が始まった当初から、商品を買った人に景品がついていたことがわかっている。
しかし近年の初売りというと、時代の流れやコロナの影響もあり、福袋も事前に予約・抽選制が多くなり、昔ほどの勢いもなくなった。福袋の中身も、洋服や雑貨、家電だけではなく、干支にちなんだ体験型や、地元のプロスポーツとのコラボ企画などが多くなってきたけれど、仙台市民としては、形が変わってもこれからも続いてほしい光景だ。

また、仙台では数年前から「仙台門松」といわれる仙台の「伝統門松」の復元プロジェクトが活発になっている。
「仙台門松」(通称)とは、これまた江戸時代、仙台城はじめ旧仙台藩城下の全域で飾られていた門松だ。
「門松」と聞いて思い描くような縦型ではなく、「仙台門松」(通称)は横に長い。大きな松と笹竹を取り付けた2本の心柱を門のように造り上げ、根元には鬼打木(おにうちぎ)という割り木を添えて両側からしめ縄を巻きつけ、中央に「ゲンダイ」 と呼ばれるしめ飾りを取りつける …という独特な形をしている。

仙台本町三井ビルディング入口(東二番丁通)

古文書などから存在していたことはわかっていた仙台の伝統門松。しかし、資材調達の難しさなどの問題などから明治時代ごろにはほぼ姿を消していたため、今まで詳細がわからなかった。だが、東日本大震災後のあることがきっかけで門松の詳しい作り方がわかり復元に成功、2013年のお正月を皮切りに仙台市内の神社や公共施設などで展示するようになった。
今では、賛同する団体や企業も増えてきて、街中心部のオフィスビルや仙台近郊の商業施設の入り口、県内の歴史系施設などでも気軽に見ることができるので、今年のお正月にも意図せず門松を見て「コレはなんだ?」と思った人もいるだろう。また、年末に仙台市博物館などで門松を作るワークショップも開催していたり、当時、仙台城に材料となるマツやクリの木などを献上していた農家があった政宗公ゆかりの地・仙台市泉区の根白石地区では、今もお正月に同じ形の門松を飾っている家もあるとか。
※今期の展示は今日(14日)まででほとんど終了してしまったので、興味がある人は今年の冬をお楽しみに…。

★まだまだある仙台藩ゆかりの縁起もの★
・宮城県のお正月飾りの一つに、神棚や仏壇に飾るエビや昆布が描いてあるA4サイズの「玉紙」がある。これも江戸時代に旧仙台藩領だった地域で見られた独特な正月の飾りモノだ。(毎年なにも疑問に思わず飾っていたが、旧仙台藩領、つまり今は宮城県全域、岩手県と福島県の一部だけのモノだと知ったのはつい最近…)
・仙台のだるまといえば鮮やかな青色が特徴的な「松川だるま」。これは、疫病が流行していたときに仙台藩士・松川豊之進が作ったといわれることから「松川だるま」という。特徴的な青色は仙台の海と空を表していて、胴体には七福神の大黒さまや宝船などの縁起の良い絵が描かれている。大きく見開いた両目でにらみを利かせて厄や病を追い払うといわれるこのだるまのご利益は「無病息災」や「家内安全」。(一番小さいサイズから購入し、だんだん大きくしていくと良いといわれる)

鏡餅でおさえるのが基本スタイル。
今年も無事に過ごせますように。

「仙台曲がりネギ」も、仙台の正月の行事や正月飾りも、受け継がれてきた古くからの伝統文化。
地元の伝統文化をこれからも後世に伝えていくということは、今生きている私たち一人一人が、住んでいる地域に愛着を持ち、一度立ち止まって見渡してみる。たとえば地元のお祭りに参加するだけでも、見慣れた風景の中に、もしかしたら新しい発見があるかもしれない。それぞれ自分のできることをやりつつ、みんなで力を合わせて地元を盛り上げていけばいい。
…そして「松川だるま」と一緒に宮城県の「伝統こけし」もお忘れなく。←「こけ女」より

今年も、始まったばかり。どんな年になるかを決めるのは、自分の行動だ。

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パクチー

歴史、絵画・舞台鑑賞なんかが好きな、難病+障がい者の二刀流です。 興味があること、思っていることを書いてみようと思ってるので、 共感できるひと、気になったひと、ちょっと寄っていってください。

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