SUCCESS NET NOVEL #04
2025年1月 なろう等のネット小説で諸々成功した作品 愛及屋烏
スーパーカブ
Continuation from last page. 04-4 https://no-value.jp/column/98804/
炎上騒動の話
2021年4月に放送されたアニメ『スーパーカブ』では、主に2つの炎上騒動が発生している。
まず、前提として原作小説ではアウトローな部分が結構あり、例えば小熊の母親が別の男と一緒に蒸発したり、ナンパしてきた男に小熊が蹴りを入れたり、ある入院患者を階段から突き飛ばしたり、事故後にカブの補償を求めた際、保険屋の態度に掴みかかるなど、ヤンチャな事をしている公道バトル系作品以上の描写が多々ある。
しかし、アニメでは監督のこだわりから、そういった描写を消してしまった。 更に直近で爆発的なヒットをした『ゆるキャン△』をイメージした、ほのぼの系の表現にしてしまった結果、アニメから見た者が元々の作品の世界観を勘違いをしてしまった部分がある。
例えば、イニシャル某に順法精神を持ち出すのはナンセンス、という事だ。
特に小説では、きちんと説明されていた部分がアニメでは省略や改竄されているのも原因だろう。
二人乗り騒動
第六話・「私のカブ」の最後に小熊が礼子を後ろに乗せて湘南海岸を二人乗りのスーパーカブで疾走する姿について放送後騒動が発生した。
「自動二輪免許を取得して、1年も経ってない小熊が礼子を後ろに乗せて運転」について、現実であれば道路交通法71条の4第3項・第4項に違反しているが、放送直後に反応はフィクションという事でほぼスルーされていた。
しかし、1週間後。弁護士ドットコムがこれを取り上げた際に応対したKADOKAWAの回答が「フィクションだから」で済ませた事にSAOの原作者である川原礫が反応し「フィクションだからでいいわけではない」と主張。 言うて、お宅のキリト君も別に清廉潔白キャラじゃないだろ、というツッコミはあるだろうし、SFに片足突っ込んでいる安全圏から、純現代作品に文句言うのもアレだが。
更に原作者のトネ・コーケンがそのニュースを引用し「道交法や先生の言いつけを守るヒロインは書けない」との発言が開き直りと捉えられて炎上した。
そしてついに2021年6月6日放送のワイドナショーでこの件について取り上げられる事に。M氏やらF社やらに色々あった今となると、人様にツッコミを入れられる立場か?感はあるが。
そもそも、小説では礼子が二人乗りは違反じゃないか?ときちんと指摘しているが、アニメではその重要な部分が省略されている。その上で二人乗りを敢行しているのは元々のアウトロー性なので別として。
カゴ載せ騒動
二人乗り騒動が終息し、物語がクライマックスに向かっていた中。 第十一話「遠い春」で再び騒動が発生する。
その前の話の最後。 アレックス・モールトンに乗った恵庭椎が近道をしようと、工事用道路を通った際、沢に転落。家に着いた小熊が椎からの着信に気付いて電話に出ると、救助を求めるものであった。 小熊は、以前に椎が工事用道路を通るのを見ていた事から、そこに探しに行き、転落している椎を発見。
椎を救出した小熊だったが、何故か救急車を呼ばず、椎の目を覚まそうとビンタをし、椎を籠に乗せて小熊の家に向かったのである。
原作では、小熊は救急車を呼ぼうとしているが「親に心配かけたくないから」という椎の希望で家に運ぶ事になったが、アニメでは小熊の判断で救急車を呼ばなかった事になっている。もしこの部分がきちんと描写されていればここまで炎上はなかったと推測される。
そして、トネ・コーケン自身が第十一話の脚本に関わっていたこともあり批判が殺到。これに対しトネ・コーケンは原作通りの説明をすれば済む所だったのに、実際の地図を引用して「救急車を呼ぶより小熊がカブで運んだ方が早かった」等と支離滅裂な回答をした為、「フィクションじゃなかったのか」など突っ込まれて炎上した。
コンプラの話
特に炎上が拡大したのは、KADOKAWAが適当な回答の上、騒動の対応を原作のトネ・コーケンに投げてしまい、投げられたトネ・コーケンがまともに対応できなかった事である。 原作者のトネ・コーケンはTwitter(現:X)で以前からアウトローな部分をちらつかせたり、小熊役の声優である夜道雪に絡んだり、挙句小説には書かれていない「実はこういう設定だった」という追加設定を矢継ぎ早にツィートする等、内外でお騒がせな事をやっている。
この様な作者に投げたのも問題だが、そもそもクレーム対応はコンプライアンス遵守やカスタマーハラスメント対策等企業や団体全体が行なうべき部分が強い事から、アニメ制作サイド、または掲載元であるKADOKAWAが、責任を持って対応すべきだったという意見もある。
感想欄がサイトにある事の多い、ネット小説家はファンとのやりとりが特に身近になりやすく、そこで揉める事も多い。作品の出来とは別にそもそも素人の作り手にネットの諸々の捌き方を要求するのも違うだろう。
また、ハナから作品内の順法に対し、「フィクションである」というスタンスを取るのであれば、KADOKAWA、トネの双方がこうした指摘の対応をせず、黙殺したほうがよかったのではという見解もある。
なお、アニメ放送終了後1年足らずで小説の文庫版連載が終了し、「アニメの炎上が原因では」という声もあったが、その後もトネ・コーケンによるカクヨムでの掲載は続いており、また漫画のほうもコミックNewtypeで連載が行われている。
後述
ネット小説で文庫化、漫画化、アニメ化、となれば、ほぼ成功と言っていい。
だが、落とし穴が無い訳ではない。
スーパーカブも第四話までの覇権アニメの評価は一転2021年最大の炎上アニメという評価となってしまい、同じカクヨム産で同期アニメの『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』も内容で騒動が起きた事から、カクヨムそのもののイメージが悪化する結果となってしまった。
まぁ、あっちの作者はちゃんとしているので延焼はしなかったが。
成功に浮かれての自滅というのは身につまされる話である。
END.