Dancer in the Dark

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Dancer in the Dark

※注意※
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映倫:PG12

予告編

本編 – 4Kデジタルリマスター版

著名人コメント

今度は4Kで観てまた落ち込むか ― 石野卓球
https://natalie.mu/music/news/453863

不幸なのか幸せかなのか、ということを他人がおしはかれるものではない  ― ヒグチユウコ
https://note.com/synca_creations/n/n15a8298dad79

あらすじ

舞台は1964年のワシントン。チェコからの移民であるセルマ(ビョーク)は、一人息子のジーンとミュージカルを愛するシングルマザーだ。セルマは先天性の目の病気のため徐々に視力が失われていくのだが、息子もまたその遺伝により失明に向かっており、彼の目を治すためにセルマは自らの失明寸前まで昼夜を問わず身を粉にして工場で働いていた。そんなセルマの献身的な愛情と明るい歌声に惹かれるように周りの友人たちも彼女を支え穏やかに暮らしていたのだが、ある日、息子の手術のために貯めていたお金が盗まれており…。

Before

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を観ようと映画館へ行ったのは、2001年の1月だったと思う。「ビョークが主演する・歌う・踊る」ということだけで私はワクワクしていた。完全にビョーク目当てだった。

そして140分後、私は完全に放心状態だった。何も考えられなかった。ただただ、感情がもやもやしていた。ラストシーンに明確な答えはない。
あの絶望感をどう捉える?なぜこんなにも救いがないんだ?病気が遺伝することを解っていながら、なぜ息子を産んだ?母親の自己満足の罰なのか?親子愛が希望の光なのか?それとも、この世の中への問題提起なのか?私たちはそれを問われているのか?

あなたがこの映画を観るか観ないか、そしてどう思うかを私は強制したくない。なぜなら、私にとっては思い出すことも苦しいほどの衝撃で心が揺さぶられた映画だからだ。もう二度と観たくない…でもこれ以上の映画には出会わないだろう。一番好きな映画は?と聞かれたら『ダンサー・イン・ザ・ダーク』と答えてきた。そんな矛盾をずっと抱えていた。

でもあれから23年。最近、私は自己理解を深めるために、これまで自分自身でフタをしてきてしまった自分の感情や過去を思い起こそうとしている。そこでこの映画を思い出し、もう一度見てみようかなと少しだけ思っている。少しだけというのも、当時この映画を観た翌日、仕事が手につかないほど本当に苦しくなったからだ。過去を思い出す事でまた辛くなるかもしれない。今がそこそこ幸せならば思い出す必要もないかもしれない。でも私は自分を知りたい。自分を知り自分らしくどう生きるか考えるためにもう一度見たほうが良いのかもしれない。

After

23年という時間を要し、やっとのことで2回目の鑑賞をすることができた『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は、やっぱり「最悪で最高」だった。でも「救いようもない」という私の解釈がちょっと変化した。

セルマに想いをよせていた友人ジェフが問いかけるシーンがある。
ジェフ「なぜジーンを産んだ?遺伝するとわかっていながら」
セルマ「赤ちゃんを抱きたかったの…この腕に…」

誰が止められるだろうか。誰も止める権利はない。病気や障害が遺伝するとわかっていながら、それでも産みたかった抱きたかったわが子。それ以上望むものはないかのように、彼女は自らの命を、愛を、全てを息子へ捧げる。

でも、彼女は彼女自身の人生を生きたのだろうか?
視力を失い
踊ることを失い
仕事を失い
お金を失い
友人を失い
全てを失ったように見えた。

だけど、そうではなかったのかもしれないと、2回目を観て私は感じた。
歌を最期まで失わなかった
強く
優しく
美しく
母として
一人の女性として
歌いながら、彼女は自分の人生を生き切ったのかもしれない。


いや…ちがう…
この映画のラストの絶望のシーンに、こんな言葉が現れる

"They say it's the last song
 They don't know us, you see
 It's only the last song If we let it be"
“They say it’s the last song
They don’t know us, you see
It’s only the last song If we let it be”

「彼らは最後の歌だって言うけど
私たちのことわかってないのね
私たちが流れに身を任せるなら
最後の歌になるってだけのことよ」

 (*ラストシーン2:15:06-)


繰り返しになるが、この映画を初めて観たのは24年前だった。それは私がわたし自身の中にある障害を知るほんの少し前のことだ。
いま、セルマの人生についてやっと受け止めることができて、私自身のこの24年も少し救われた気がした。
わたしはいくつかの理由のために、母親になることをあきらめた。薬を飲んでいるし、私が持っている障害の遺伝の可能性も考えると、子どもを産んでもしあわせにする自信が無かった。経済的にも、精神的にも。でも彼女だって同じなのに、彼女は自分の愛情や命さえも…全てを息子に注いだ。なんて強い母なんだ。彼女のその愛情は、息子に必ず伝わっているはずだし、息子は彼女に母に本当に愛されてきたことを誇りに自信にして生きていけるはずだ。
だから、もう少し早くこの映画をもう一度観ておけば良かった…なんてちょっと思っている。これまで、観る勇気すら無かったのだ。歳をとって、ほんの少しだけれども前に進んだいまの私だから観ることができたのだろう。
無償の愛は時に美しく、時に残酷だ。この映画が最高で最悪だと思うのは、そういうことなのかもしれない。

それから数日たって・・・

美談になりそうなカケラを探して、それを自分自身(わたし)に納得させようとしていたかもしれない。感想文みたいにまとめてみたものの、そんなものは綺麗事なのだ。
やっぱり「なぜ産んだ」「なぜ生きて償わなかった」という問いは拭いきれない。彼女に対してというよりも、私自身の考え方として。息子のために彼女は命をかけてきたが、周りの人の優しさや悲しみに向き合ってきただろうか。最期の瞬間まで友人たちがそばにいてくれたということは、それだけ信頼関係があったのかもしれない。でも最終的に友人たちがトラウマのように一生抱えることになるであろうほど、傷つけてしまっていないだろうか。
そして、息子であるジーンは幸せなのか。セルマは息子のために命を捧げられたことが、ある意味幸せだったと言えるかもしれない。でもジーンはどうなのか。
ジーンという単語は英語で遺伝子という意味だ。私はそのことにも24年経って今さら気がついた。監督の意図はわからないが、これは無関係ではないのではないか?

私はこの24年で、
英語を勉強したこと
年を重ねて人生経験を積んだこと
子ども産むことや母親になるorならないことについて深く考える機会があったこと
正論や綺麗事では生きていけないと知ったこと
どんなに信頼していても裏切られたり見捨てられる可能性があるということ…つまり絶対ということは無いということ
自分の周りの人たちの人生や命や死に向き合う機会があり、幾度かそれらの残酷さを受け止めなければならなかったこと
受け止めたことを消化できていないけれど、それでも自分は生きてきたこと、これからも生きていくこと…

この映画に対して思うことに変化が起こったのは、こういった経験によるものなのかもしれない
セルマの人生を受け止めることはできたと思うが、共感できるかというと、まだわからない。
そもそも、正解とか答えはないのかもしれないね。

最後にあらためて言うが、この映画の深さ・重さを受け止める覚悟のない人にはおすすめしない。
だけど、人間として自分自身を深く見つめなおすキッカケを、私はこの映画から得られた。

あなたは、どう感じ、どう思いますか?

+++++

映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク4Kデジタルリマスター版』
2000年/デンマーク/英語・チェコ語/カラー/スコープ/140分/ドルビーデジタル

原題:Dancer in the Dark
日本語字幕:石田泰子 
配給:松竹
©ZENTROPA ENTERTAINMENTS4, TRUST FILM SVENSKA, LIBERATOR PRODUCTIONS,

PAIN UNLIMITED, FRANCE 3 CINÉMA & ARTE FRANCE CINÉMA

〇上映:2021年12月24日〜
〇劇場:Bunkamura ル・シネマ
〇監督:ラース・フォン・トリアー
〇主演:ビョーク

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KRN

■シンプルなモノ・コトが好きですが頭の中は複雑です。 ■アート・ファッション・音楽などクリエイティブな分野に興味があり魅力を感じます。 ■目標 // ”One Step At A Time”~”一歩一歩” // ”Self-acceptance”~”自己受容”

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