曾祖父は生前、骨董品を集めていた。古銭と掛け軸が主で、現在、二本の掛け軸は床の間に飾り、それ以外は暗所で保管している。残された私たち家族は価値がわからない。なので業者に買取を求めたとしても提示された金額が妥当であるか判断するのが難しい。処分するぐらいの覚悟を持てない以上、下手な取引は避けたいし。
日曜日に開かれる東照宮の骨董市をたまに覗く。その辺については、多少なりとも私も曾祖父の影響を受けている、とは思う。本当にただ、歩き回るだけなので冷やかしもいいところだが、ブルーシートや棚に並べられた品々を手に取ったり、コインの入ったファイルを舐めるように眺めて吟味する人達にのまれて独特の雰囲気を楽しんでいる。骨董品に対しても興味はあるけれども冒頭で述べた通り、一切価値はわからないが、錆とか、そこかしこに黴が生えていると、熟成発酵の進んだチーズの趣さえ感じられて面白がれる。年代物というのは劣化さえ高級そうに見せてくれる。