弔辞                

おばあが死んでから五年経ちました

わたしはおばあの葬式で手紙を読みました

正直な気持ちで手紙を書いたけどほかの参列者がいる中緊張のあまりただただ書いたことを棒読みするだけの弔辞でした

今ここに改めて心からの気持ちを読ませてください

おばあはわたしの人生におけるただ一人の理解者でした

いちばん幼いころの印象に残っている記憶は保育園の迎えに来てくれたときのことです

おばあちゃんが来るなんてはじめてだったからなんだかとても緊張しました

また照れくさくもありました

おばあは年より老けて見えたのでよくあの距離を歩いてきたなぁとも思いました

特になにかしゃべるわけでもなく二人並んで淡々と家路に向かうその光景がなんだかとっても可笑しくて今思い返しても微笑ましく映ります

おばあはよくわたしにお手玉やあやとりをして見せてくれました

三つ使って軽快にお手玉をしてくれたときは

おばあちゃんすごい!かっこいい!天才!

と子供ながらに絶賛しました

昔の風景の絵をチラシの裏に描いてくれました

その地域ならではのわらべうたを歌ってくれました

無邪気におばあちゃんと遊んでいた時期が過ぎ

小学校に上がり中学生になるとわたしは心が病みだんだんと荒れていきました

鬱屈とした毎日

社会に対する反骨心

目つきは暗く鋭くなり

表情は陰りはじめました

高校を卒業してもそれは続きました

あのおばあに暴言を吐いたり暴力を振るったりしました

あの頃のわたしよりずっと子供に戻って地団駄を踏みながら

おばあちゃん助けて!と叫んでいたんです

そんなさなかでも変わらずわたしを案じ辛抱強く静かに側で見守り寄り添い続けてくれました

やがてわたしは結婚し子供を産みました

ひ孫を抱っこさせてあげられたことが嬉しくてそのとき撮った写真をスヌーピーのかわいい写真立てに入れていつかのおばあの誕生日にプレゼントしました

今もなおわたしのベッドの横に飾ってあります

その後も何度か私の住む仙台に家事や育児の手伝いをしに来てくれました

何泊か滞在してもらってる間一緒にスーパーに買い物しに行ったとき着ぐるみのキャラクターがフォトサービスのイベントをしていました

そのとき撮ったポラロイド写真を保険証の裏に入れていつも大事に持ち歩いています

つらいことがあったとき

心が折れそうになったとき

おばあを思い返してはこっそり出して眺めています

わたしにとってのおばあは「無償の人」です

人は家族に対して無償の精神を持ちつつもどこかで見返りを求めているものです

でもおばあは違った

正真正銘「無償の人」でした

わたしはおばあがいなかったら間違いなく廃人になっていました

あなたは深く惜しみない愛情と生きる勇気をくれました

今のわたしが証明済みです

わたしが死んだらおばあが眠っているお墓に入ります

理由は単純です

またあの頃のように童心に戻っておばあと遊びたいから

祖母であり友であり恩人であり母体でした


ありがとう

再会を楽しみにしています

千穂

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chiho

自分の感性に従いエッセイ風になぞらえて気持ちを吐露します

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